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2月29日 卵子が蛋白質のゴミを処理する特殊な戦略(2月20日 Cell オンライン掲載論文)

2024年2月29日
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細胞の中で蛋白質の新陳代謝は重要な問題で、そのためにユビキチン化・プロテアゾームやオートファジーと、ノーベル賞に輝いた重要な機構が不断に働いている。しかし、これらの機構は我々のゴミ処理と同様、膨大なエネルギーが必要で、受精前の未熟卵では低いことが知られている。

今日紹介するバルセロナ科学技術研究所からの論文は、未熟卵から受精、卵割が進む間の蛋白質のゴミの特殊な処理方法を明らかにした研究で、2月20日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Mouse oocytes sequester aggregated proteins in degradative super-organelles(マウス卵子は凝集した蛋白質を、分解するためのスーパー細胞小器官に隔離する)」だ。

「卵子形成過程で蛋白質のゴミは出るはずだが、排卵されるまで長期間ゴミを分解できずに生きていく必要がある卵子は、ゴミ問題をどう処理しているのか?」と問うたことがこの研究の全てと言える。

実際凝集した蛋白質を卵子で染めると、受精前には数十個の大きな塊に集められ卵子内に散在するが、受精後速やかに分解されることを発見する。そしてこの塊内の蛋白質は既にユビキチン化を受け分解前の状態で存在するだけでなく、塊には壊れたエンドゾームや小胞体などの小胞のかけらが多く集まっていることを明らかにする。すなわち、凝集蛋白質がゴミ処理のための細胞内小器官のかけらとともにひとまとまりに集められている。

面白いことに、このゴミの塊は、卵子が成熟とともに、アクチン依存的、すなわちアクティブに細胞膜直下に集められ、その後消滅する。すなわち、ゴミはカーゴとして組織化され、このカーゴがアクチン依存的に膜直下に運ばれる。このELAVと名付けたカーゴを卵から取り出し、その形成の分子基盤を調べると、RUFY-1と呼ばれる細胞内マトリックスがゴミ融合させて塊にする分子であることを明らかにする。すなわち、カーゴ内には様々な小器官のかけらが蛋白質のゴミとともに集まっているが、カーゴ自体は小器官を形成せず、RUFY-1に絡められた塊になっていることを明らかにする。

そして、受精による卵子の活性化でプロテアゾームやオートファジーに必要な分子が膜直下に供給されると、集められた小器官のかけらが再活性化され、集まった蛋白質のゴミは分解される。すなわちこのカーゴは、ゴミ処理器官として再活性化し、蛋白質のゴミを分解する役割も担っていることを明らかにしている。

以上が結果で、ライブイメージングを含む卵子のイメージングを駆使した細胞学で、カーゴの形成、融合、再活性化を可視化したわかりやすい研究だ。蛋白質のゴミの処理には膨大なエネルギーが必要になる。これは排卵まで何年もの長い期間静止して過ごさなければならない卵にとっては大きな負担になる。このために、まずゴミを処理器官ごと集めて静かに寝かせておき、卵の活性化とともにまずゴミを燃やして発生という大事業に備える戦略はよく出来ている。

この卵子の戦略を勉強しながら、結局核のゴミを処理できずに後回しにしている我が国では、次の成長など望めない気がした。

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