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4月30日 ビタミンDがガン免疫を促進する意外なメカニズム(4月26日号 Science 掲載論文)

2024年4月30日
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ビタミンDが免疫を高めるという話はよく耳にするが、ビタミンD (VitD) は核内受容体に結合して様々な分子の転写を誘導することを考えると、別に不思議はないと思っていた。しかし、本当はもっと複雑なメカニズムが介在しているようだ。

今日紹介する英国フランシス・クリック研究所とCancer Research UKからの論文は、VitD は確かにガン免疫を増強するが、これは腸内上皮に対する作用の結果、Bacterioides fragilis と呼ばれる細菌が腸内で増える結果、ガン免疫が増強されるという、大変複雑なメカニズムを示した研究で、4月26日号Science に掲載された。タイトルは「Vitamin D regulates microbiome-dependent cancer immunity(ビタミンDは細菌叢依存性のガン免疫を調節する)」だ。

VitD は血中で Group Specific Component(Gc) と呼ばれるタンパク質と結合し、各組織に運ばれるが、この分子が欠損してもマウスの骨形成は維持されるため、主に VitD が直接細胞に吸収されないよう、バッファーの働きを持っていると考えられている。また他にも、死細胞から放出されたアクチンを処理する機能もあると考えられてきた。

この研究では Gc のガン免疫機能への役割が調べられ、ノックアウトマウスにガンを移植すると、正常マウスと比べ強くガンの増殖が抑えられることを発見する。また、これらの抑制が CD8 キラー細胞の増強によるもので、PD-1 や CTLA4 に対する抗体治療を高めることも明らかにしている。

この研究のハイライトは、Gcノックアウトマウスと正常マウスを同じケージで飼育すると、Gcノックアウトマウスのガン抑制機能が移行することで、便移植でもガン免疫増強作用を移行させられることから、Gc欠損が腸内細菌叢を変化させ、これがガン免疫機能を増強していることを明らかにする。

次にこの現象に VitD は関与しているのか、ノックアウトマウスを VitD 欠乏食で飼育して調べると、ガン抑制効果が失われ、また正常マウスでも高い濃度の VitD を摂取させることでガン抑制作用が上昇することから、VitD がこの現象に関与していること、そして Gc がないと VitD がバッファーされずに直接組織に吸収されるため、結果として高濃度の VitD 摂取と同じ効果があることが明らかになる。

以上から、最終的な VitD の効果は細菌叢を介することから、おそらく細菌叢に近い腸管上皮にまず働きかけ、それが細菌叢の変化を誘導するのではと考え、腸上皮特異的に VitD 受容体をノックアウトしたマウスを作成して調べている。期待通り上にに対する VitD の作用が失われると、高濃度の VitD を摂取させても、ガン免疫は増強されない。

次に、VitD で上皮が刺激されることで起こる細菌叢の変化を様々なフィルターをかけて調べていくと、最終的に Bacterioides fragilis のみ腸内で増加していることを発見する。そして、この菌を正常食で飼育した正常マウスに移植すると、ガン抑制効果が誘導され、この効果は VitD 欠損食で失われることを明らかにしている。

以上、Gc 欠損マウスから始まって、VitD が上皮に働くと腸内環境が変化し、Bacterioides fragilis の増加が可能になり、それが免疫系に働いてガン免疫を増強するという話だ。重要なのは正常マウスに Bacterioides fragilis を感染させてもガン免疫が増強することで、人間でも確認されると面白い。人間のデータベースから VitD 受容体の高い患者さんはガンでの生存確率が高いことや、VitD の低い人のガン発生率の上昇などを示しているが、マウスの結果を反映したものではなく、臨床研究が必要だろう。いずれにせよ、血中カルシウム濃度を上昇させない程度の VitD 摂取は発ガン抑制には効きそうだ。

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