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4月6日 統合的腸内細菌叢研究(4月11日号 Cell 掲載論文)

2024年4月6日
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専門誌はともかく、Nature などの一般紙に掲載される細菌叢研究の数は減っているが、内容は現象論から、より因果性やメカニズムに迫る研究に移行している。例えば、3月27日に紹介した IgA 腎症と細菌叢の話は(https://aasj.jp/news/watch/24237)、ヒトでも確認が取れれば重要性は計り知れない。

今日紹介するハーバード大学からの研究は、心血管系のコホート研究で集められた便を、細菌叢、メタボライト、患者さんの血液マーカーの間に存在する相関を統合的に調べ、この代謝に関わるバクテリアの遺伝子の特定と健康への影響まで調べた驚くべき大作で、4月11日号 Cell に掲載された。タイトルは「Gut microbiome and metabolome profiling in Framingham heart study reveals cholesterol-metabolizing bacteria( Framingham 心臓コホート研究での腸内細菌叢とメタボロームプロファイリングは、コレステロール代謝細菌を明らかにした)」だ。

このハーバードのグループは以前にも取り上げたが(https://aasj.jp/news/watch/20882)、元々複雑な細菌叢データとメタボローム解析データの関係を、健康への因果性を明らかにしようと、大規模コホート研究と組み合わせるインフォーマティックスで世界のトップを走っている感がある。はっきり言って、示されたデータは詳細すぎて見ただけではほとんど理解できない。それでも研究の方向性はわかる。

この研究で調べられた因果関係は、心臓疾患と血中バイオマーカー(例えば LDL、HDL やトリグリセライド)、細菌叢、さらに便のメタボロームの間の膨大な関係だ。この中からまず心臓疾患のリスクマーカーと細菌叢の相関を調べると、LDL や TG など脂質代謝に悪い方に働くのが細菌叢の多様性欠如と、Clostridium bolteae などの細菌、逆によい方に働いているのが細菌叢の多様性と Alistipes および Oscillibacter の存在であることを発見する。

ここまでならほかにも多くの研究があるが、次に便中の代謝物を調べて、血液リスクマーカーとの相関を調べ、脂質代謝異常と関わる代謝物、およびそれを合成したり分解したりしている細菌種を特定している。こんなバクテリアを抱えておれば、健康に留意していても意味がない。改めて健康的な細菌叢と付き合うことの重要性がわかる。

脂質代謝に悪影響のある代謝物は脂質代謝に直接関わるものだけではない。例えば短鎖脂肪酸のように炎症を抑えて、脂質代謝によい影響を及ぼすものもあるし、逆にトリプタミンなど自然炎症を促進して脂質代謝や心臓病に関わるものもある。

このようなまさにビッグデータ解析から特に注目して抽出しようとしているのがコレステロール代謝で、中でも心臓疾患やリスクマーカーのリスクを低減させる Oscillibacter のコレステロール分解機能に焦点を当てている。

これまでも、コレステロール分解の最初の過程を媒介する IsmA 酵素を持つ細菌が血中コレステロールを下げる可能性が示唆されていたが、バクテリアの特定、発現遺伝子の機能アノテーション、便中の代謝物解析、さらに細菌培養にアイソトープラベルしたコレステロールを添加する実験を組み合わせて、Oscillibacter 種に様々なコレステロール分解に関わる分子が発現して、IsmA と強調して、腸管中のコレステロールを取り込み、それを分解し、ホストには吸収できない形に変化させている可能性を示している。また、こうしてできた代謝物は、ほかのコレステロールを好む細菌を増やすことでさらに腸管中のコレステロールを下げてくれていることも示している。

以上が結果で、心疾患、LDL や TG などの血中マーカーと、コレステロール分解バクテリアの関係は、動物実験などで確かめる必要があるが、脂質代謝異常を抑えてくれる細菌叢があり得ることは心強い限りだ。

しかしこのグループのインフォーマティックスは勉強になる。新しいところでは、Oacillibacter の遺伝子からコレステロール代謝に関わる分子を特定するのに、タンパク質構造ベースで機能を予測する言語モデルを使っている。もちろんアルファーフォールド2を使って確認もしており、この分野を目指す若い人には大変参考になると思う。

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