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4月17日 人工血小板はどこまで可能か?(4月10日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2024年4月17日
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血小板は損傷した血管からシグナルを受け取ると、自らも傷口のマトリックスに結合して、トロンビンなどを介する凝固反応を誘導する。また、傷口に形成されるフィブリンの中に潜り込んで凝固塊を収縮させ増強して出血を止める。このように、敏感でなおかつ様々な機能が小さな膜の中に込められているので、現在も長期保存が難しく、慢性的に不足する。

このような血小板が持つすべての機能を人工物で再現することは難しいが、止血に必要な一部の機能だけを再現して、血小板の機能を助け、止血を促進する可能性がある。今日紹介するノースカロライナ州立大学からの論文は、アクリルアミドゲルとフィブリンと結合するナノボディーを組み合わせて、傷口に形成されるフィブリンネットワークの機能を高めて止血を促進しようとする試みで、4月10日号 Science Translational Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Ultrasoft platelet-like particles stop bleeding in rodent and porcine models of trauma(超柔軟な血小板様の粒子は齧歯類と豚モデルで出血を止める)」だ。

血小板が活性化されると、極めて複雑な凝固カスケードが開始されるが、最終的に形成された酵素トロンビンによりフィブリノーゲンからフィブリンが合成され、フィブリンネットワークが形成される。このネットワークに血小板が固定され、凝固塊の強度を高めている。

この研究では形成され始めたフィブリンネットワークに潜り込んで強度を高めるという一点に絞ったナノ粒子を開発している。

材料はポリアクリルアミドだが、架橋を最低限に絞ることで柔軟度が極めて高い粒子を設計している。これによりフィブリンネットワークの中で自由に形を変化させ、フィブリン凝固塊の密度を高めることができる。ただ、このままでは傷口のフィブリンネットワークには結合できないので、この粒子に、H鎖だけでフィブリンに対する抗体活性をもつナノボディーと結合させることで、傷口に形成されるフィブリンネットワークに統合されるよう設計している。

論文では様々なナノボディーを比較し、最もフィブリン特異的結合力が高いナノボディーを選び、フィブリンネットワークの密度を期待通り高めてくれるか、試験管内で検討、これを結合させたポリアクリルアミドゲルの止血能を調べている。

結果だが、マウスの肝臓に切開を入れる出血モデルで、あるいは大腿動脈に穴を開けるモデルでは、期待通り出血を抑えることができる。また設計通り、傷口のフィブリンネットワークに入り込んでいることも確認している。

通常フィブリンは損傷部位のみに形成されるが、ハイドロゲルにより血管内に形成されると取り返しがつかない。そこで様々な濃度のハイドロゲルを投与後、全身の臓器を調べ副作用が起こっていないかも確認している。また基本的には、投与後速やかに体外へ排出される。驚くことに体外への排出は腎臓を通して行われる。すなわち、糸球体のフィルターを通り抜けるだけの柔軟性があることになる。

最後に豚の肝臓を切開して出血させる実験で、止血効果を確かめている。実際のデータを見ると、フィブリンに対する抗体をつけない場合も、柔らかいハイドロゲルは止血効果を持っているので、アクリルアミドの素材としての可能性を示している。

以上が結果で、傷口にフィブリンネットワークが形成できるという条件で、出血を抑えることはできそうだ。ただ、血小板と比べると、凝固カスケード誘導、凝集反応誘導能は全くなく、一種の絆創膏といえる。ただ、素材としては面白いので、今後様々な分子を加えてより血小板に近づける努力が行われると期待する。人工材料も捨てたものではない。

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