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9月12日 ウイルス感染後の重傷の肺線維症モデルを作成する(9月4日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月12日
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Covid-19に感染後、ウイルスは消失しても様々な症状が続くケースは post-acute sequelae of SARS-CoV-2 (PASC) 、あるいは long covid とよばれ、感染者の10%−30%に見られるという報告がある。様々な PASC の中でも、2%ぐらいの患者さんで発症する、重度の肺炎・肺線維症は死に至る最も重要な状態で、治療法の開発が待たれる。

今日紹介するバージニア大学からの論文は、ウイルス感染後の肺繊維化をマウスモデルで再現し、治療の可能性を示した研究で、疾患も出る研究の重要性を示す論文だ。タイトルは「An aberrant immune–epithelial progenitor niche drives viral lung sequelae(免疫細胞と上皮の異常なニッチがウイルス感染後の後遺症を誘導する)」で、9月4日 Nature にオンライン掲載された。

Covid-19 後、ウイルス治療は成功しても、肺炎が持続、肺線維症に至ると肺移植しか治療方法がなくなる。調べてみると米国で行われる肺移植の10%は Covid-19 感染後の患者さんで行われている(https://humanmedicine.msu.edu/news/2024-lung-transplants-covid-patients.html)。この研究では肺移植を受けた患者さんから切除した肺を詳しく調べ、CD8T細胞とマクロファージがケラチン8(KRT8)を強く発現している異常上皮の周りにクラスターを作り、そこに繊維化が起こっている像が特徴的であることを発見する。

次に、マウスにウイルスを感染させ、同じような病変を誘導できるモデルマウスの作成に取りかかる。最初はCoV-2に感染できるようにしたマウスを用いて同じ病変ができないかいろいろ試しているが、肺炎、肺損傷が起こっても、同じような病変を再現することはできなかった。

そこで、自然感染可能なインフルエンザにスイッチして、トライアンドエラーを繰り返し、最終的に B5系統の老化マウスに感染させたときに、人間の肺で見られたのと同じ、CD8 /マクロファージ / KRT8 上皮を核とした肺病変を誘導できることを確認する。

こうして疾患モデルができると、次はメカニズムに基づく治療法開発に進む。この研究では、病変の核となっているCD8T細胞を除去することで、肺病変を抑えられるか調べている。末梢血の T細胞が低下するぐらいの抗CD8抗体では影響がないが、肺のCD8T細胞も除去できる濃度の抗体を用いると、炎症から繊維化を止めることができる。

そこで、CD8T細胞とその周りのマクロファージが分泌するサイトカインを調べ、TFN と γインターフェロンが T細胞から、IL-1β がマクロファージから分泌され、これが上皮をKRT8発現型へと変化させ、正常の修復を不可能にしていることを明らかにする。

そこで、感染後に TNF 及び γインターフェロンに対する抗体、あるいは IL-1β に対する抗体を用いて感染マウスを処理すると、KRT8上皮誘導を抑え、修復を促進できることを示している。

結果は以上で、モデルマウスを作成することで様々な治療可能性が示される典型的な研究だ。IL-1β は老化とともに上昇する典型的なサイトカインで、受容体抑制抗体は治験が行われているし、もちろん他のサイトカインに対する抗体も存在するので、タイミングを選べば肺線維症への発展を抑える治療になると期待される。さらに、インターフェロンの産生を抑える JAK 阻害剤バリシチニブが重症 Covid-19 の予後を改善することも知られていることから、是非標準治療プロトコルを確立してほしい。

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