5月18日 細胞が電気を感じるメカニズム(5月12日 Cell オンライン掲載論文)
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5月18日 細胞が電気を感じるメカニズム(5月12日 Cell オンライン掲載論文)

2026年5月18日
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あまり気にしたことはなかったが、我々の白血球は様々な物質勾配に沿った移動、ケモタクシスを行うが、電場に対しても反応することが知られていたようだ。電流をビリビリと感じるのは感覚神経の voltage gated channel によると思うが、同じメカニズムは白血球には存在しないだろうし、また反応の時間スケールも全く異なる。

今日紹介するコロラド大学とワシントン大学からの論文は。これまで TMEM154 として知られていた細胞膜分子が、細胞表面で電場を感じてケモタクシスの方向性を決めていることを示した研究で、5月13日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Galvanin (TMEM154) is an electric-field sensor for directed cell migration(Galvanin ( TMEM154 は電場のセンサーとして移動の方向性を決める) )だ。

この研究ではヒト白血球株が弱い電場を書けたときにフィルターを通って細胞が移動する培養系で、CRISPR/CAS ノックアウトスクリーニングを行い、この過程に関わる分子を探索している。もちろん細胞の動きは多くの分子で維持されているので、多くの分子の欠損は移動を抑えるが、電場に最も反応していると考えられた細胞膜タンパク質 TMEM154 を、電場のセンサー候補として取り上げている。

この分子にGFPを結合させて細胞局在をビデオで調べると、電場をかけた2分ぐらいから細胞の陽極側に局在するようになる。そして、この分子が欠損すると、細胞の陰極側への移動が強く抑制されることがわかった。この結果から電気を感じるという意味で Galvanin と名前を付けている。Galvanin は白血球だけでなく、T細胞にも発現しており、T細胞の電場に沿った移動にも関わること、更にはゼブラフィッシュ胚の基底上皮の電場に沿った移動にも関わることを示している。そして、この分子を発現していない細胞株に遺伝子導入するだけで MDCK の様な上皮細胞も電場に沿った移動が出来ることを示している。即ち、どの細胞でも電場センサーとして働いている。

メカニズムだが、Galvanin の細胞外ドメインにはマイナスチャージの糖鎖で強く修飾されており、糖鎖修飾がなくなると電場の感知が消失する。また、細胞外ドメインを他のマイナスチャージ分子に置き換えても、電場に反応する様になる。以上の結果から、細胞膜上での電場に沿った分子移動が起こり、これが細胞の極性を電場に会わせて形成し、移動方向を決めている。

細胞内ドメインを除去した分子を発現させ電場を書けると、Galvanin 自体の陽極側への移動は起こるが、陰極への細胞の移動は起こらなくなる。以上のことから、Galvanin は強くマイナスにチャージしていることから、電場により細胞膜上で電気泳動が起こって陽極側に引き寄せられる。その結果、細胞内ドメインと相互作用していた分子も一緒に引き寄せられ、極性のある細胞骨格調節が起こる結果、電場に沿った移動が起こるというシナリオになる。

普通ならこの分子をノックアウトするのに全く触れられていないので気になって調べると、マウスでは発生や生存には影響がないようだが、ほとんど研究が行われていない。一方で、ヒツジの肺炎に関わるウイルスの受容体として機能することから、研究が行われている。従って、新しい目でこの分子の生体内の機能を調べていく必要があるだろう。これにより初めて電場のセンサーを我々がどれほど必要としているのかもわかると思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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