6月28日 CAR-Tの標的をLLMに相談する:Cellにふさわしい?(6月25日号 Cell 掲載論文)
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6月28日 CAR-Tの標的をLLMに相談する:Cellにふさわしい?(6月25日号 Cell 掲載論文)

2026年6月28日
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これまで生物学や医学でのLLM応用について何度も紹介してきたが、DNA情報と自然言語や物理法則との統合、あるいは脳回路と生成AIとの関係についての論文に主な焦点を当ててきた。YouTube でも話しているように、17世紀以来分離して考えるようになった心と身体の統合理解に役に立つと思っている。

このような個人的ポリシーから見たとき、今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、これまでの医学データの解析が使えるかどうか、一般のビジネスマンと同じようにLLMに相談するという研究で、このような論文を Cell に採択してもいいのか気になったので紹介することにした。タイトルは「AI-driven discovery of GPNMB CAR T cells as a multi-cancer therapy(AIによりGPNMBを標的にするCAR-T細胞が様々なガンに対する治療に使えることがわかった)」で、6月25日号 Cell に掲載された。

ペンシルバニア大学は CAR-T 研究のメッカと言える。多くの研究者が新しい標的を求めて研究を行っているに違いない。この研究の目的は、メラノーマなどの皮膚に発生するガンの CAR-T 治療に使える細胞表面抗原を探すことで、特に皮膚の様々なガンの single cell RNA sequencing データから、ガン細胞で高発現で、正常細胞で低発現分子を探す。次に、データベースから標的候補のアノテーションを行い、これに良い抗体が得られるなど臨床開発しやすいかを調べる。

この過程は CAR-T 設計時に行われるルーチンと言えるだろう。特に、現在では single cell データが得られるため、ガンや正常細胞の遺伝子発現の多様性についてもデータが得られる。最初タイトルを見たとき、データベースから候補を探し出すLLMを構築したのかと思っていた。ところが全く期待は裏切られた。

実際にLLMを導入したのは、従来の方法で候補を絞った後、例えば「この100種類の候補から CAR-T 標的として有望なものを10個に絞れませんか?その理由もお願いします」と頼むのだ。これは医学に限らず、世界中で今多くの人が行っているインプットと何ら変わりはない。ご丁寧に、GPT、Claude、Gemini に同じように評価させ、データベースによる reasoning の検索を行っている。

この作業を様々なプロンプトで1000回程度繰り返し、LLMから出てくる答えが安定する分子を探索している。こうして3種類のLLMが最終的に推薦してくる20種類の分子の中から、この研究ではメラノーマで発現していることが知られている、GPNMB を選択し、CAR-T を用いて、白血病、メラノーマ、大腸ガンを移植したマウスモデルでガン抑制活性を調べている。結果はパーフェクトで、固形ガンであるにもかかわらず3種類全てのガンの増殖を抑えることに成功している。

結果は以上で、現在データベースを用いて行われている候補分子選びの結果を、一度LLMにインプットして検証すれば、いい分子を選べる可能性が高まるという話になる。

しかし納得がいかない。と言うのもこの分子は既にガン特異抗原として様々な治験が行われている。そしてあろうことかこの候補の安全性を、既に行われた治験を元に議論している点だ。抗ガン剤を結びつけたADC両方では、効果がはっきりせず第2相で終わったが、安全性は確認されている。更には、同じ標的を用いたCAR-T治療の一例報告もあるようで、これでも正常細胞への副作用は少ないと議論している。Cell に掲載するからには、やはりこれまで考えてこなかった標的が発見できることを示すべきではないだろうか。

一方で汎用のLLMが、自分の結論を評価させるという点ではかなり高いレベルになっている点で、それを気づかせてくれた点で、今回の論文は意味があるのかもしれない。

カテゴリ:論文ウォッチ
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