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 10月14日 コレステロールを下げる腸内細菌(10月7日 Nature オンライン掲載論文)

2026年10月14日
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炭素の数が奇数の脂肪酸、例えば15個のペンタデカン (PA) は、酸化される際、最終的に炭素が3つ含まれるプロピオニルCoAが残ることから、奇数鎖脂肪酸として、アセチルCoAだけを合成する偶数鎖脂肪酸と区別して扱われている。我々はPAを合成することはないが、従来から牛乳やチーズなどの乳製品に多く含まれ、最近では血中PAレベルの高い人は動脈硬化や糖尿病が少ないことが疫学的に示され、注目を浴びている。

PAは基本的に食事から摂取すると考えられてきたが、今日紹介する中国・中山大学からの論文は、腸内細菌の一つ Bacterioides にはPA合成能を有する系統が存在し、少なくともマウスモデルで動脈硬化を防ぐことを示した研究で、10月7日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「A gut microbial odd-chain fatty acid alleviates atherosclerosis in mice(腸内細菌叢由来の奇数鎖脂肪酸はマウスの動脈硬化を防ぐ)」だ。

これまで腸内細菌叢と動脈硬化の相関を調べた研究から、細菌叢の Bacterioides の数が多いと動脈硬化が防がれることは知られており、例えば短鎖脂肪酸合成などと関連付けて説明されてきた。この研究では動脈硬化の患者さんの細菌叢を正常と比べ、Bacterioides、特に Bacterioides uniformis が健康人で多いことを確認している。そして ApoE を欠損させた動脈硬化マウスの動脈硬化を抑えることを発見する。同じ効果を持つスタチンと比べると、LDL を下げる効果はほぼ同等だが、HDL を上げる効果はほとんどない。この結果、脂肪代謝が正常化し、動脈硬化が防がれる。

おそらくこれまでも同じような現象は記載されてきたのだと思うが、この研究では肝臓の転写を調べることで、この効果がコレステロール代謝の核、SREBP2-LDLR の発現調節に媒介されており、LDLRノックアウトマウスでは効果が Bacterioides の効果が全くないことを発見する。即ち、従来のように自然炎症を介するのではなく、LDL合成抑制を介して脂肪代謝自体に直接作用して動脈硬化を防いでいることを発見する。

次に LDL の肝臓細胞株への取り込みを指標として、Bacterioides 培養上清を精製し、最終的にPAが Bacteropodes uniformis 由来の分子であることを突き止める。その作用機序を調べていくと、驚くことにスタチンと同じ標的 HMG-CoA reductase と結合して酵素活性を抑制することで、コレステロール合成を抑えていることを明らかにしている。構造学的にスタチンと比較されていないのでわからないが、化合物としてはアフィニティーも低いので、スタチンに変わる薬剤として開発することはないと思う。ただ、血中の持続はいいので、善玉バクテリアとして共存して、コレステロールを下げるというのが最も理にかなった使い方になる。

そこで、この研究では Bacteriodes を腸内に定着させる動脈硬化予防を視野に、まず Bacterioides に全てのPA合成経路が存在し、バクテリアを経口投与することで動脈硬化を予防することが出来ること、さらにPA合成酵経路の酵素が欠損したバクテリアでは、予防効果が低下すること、そして、動脈硬化の患者さんでは、血中だけでなく便中のPA濃度が低下していることを示している。ただ酵素を欠損させた動物実験では、完全に Bacterioides の活性を抑えていないので、バクテリア内での合成についてはさらに検討が必要だと思う。

以上、腸内細菌の健康効果を調べる研究の中では、最も明確なメカニズムを提示した研究の一つだろう。Bacteriodes は一般的な細菌なので、メタボ予防細菌プロバイオとして発展してほしい。そのためにはPAとスタチンの相互作用などもう少し研究が必要だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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