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10月21日 幹細胞動態研究1:腸管幹細胞でのHes1発現の振動(10月15日号 Science 掲載論文)

2026年10月21日
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昔から幹細胞研究では、細胞動態と呼ばれる幹細胞から分化細胞までの詳細な細胞種を特定し、時間経過とともに起こる各細胞腫の変化を記述し、その背景にある分子メカニズムの研究が最重要分野として研究されてきた。幸い、Science と Nature に幹細胞動態に関するおもしろい研究が相次いで発表されたので、今日・明日と紹介することにした。

最初はオランダ ユトレヒトの Hubrecht 研究所からの論文で、腸管幹細胞のオルガノイド培養を用いてHes1転写因子発現の振動周期の差によって細胞運命決定が変わる事を明らかにした研究で、10月15日号の Sicence に掲載された。タイトルは「Frequency encoding regulates cell type composition in the small intestine(周期的コード発現が小腸での細胞種の構成を決める)」だ。

慶応大学の佐藤さんたちが開発した腸管のオルガノイド培養は、腸上皮細胞の分化を再現するモデルとして幹細胞動態の研究に用いられてきた。とは言え、絨毛やクリプトに存在する様々な細胞種のバランスがどう決定されるかわかっていないことが多い。ただ、Notchシグナルを刺激すると吸収に関わるエンテロサイトが増え、抑えるとPaneth細胞が増えることが知られている。

Notchシグナルの下流で働く転写因子の一つがHes1なので、この研究ではHes1発現を蛍光で追跡できるようにして、腸のオルガノイドで発現をリアルタイムに観察している。リアルタイムが重要なのはHes1やHes7の発現が振動を示すことが知られているからだ。最初の発見はフランスの Pourquie らがニワトリの中胚葉でHes1に相当する遺伝子が後ろから前へ波のように発現することで体節が形成されることを明らかにした。その後体節細胞にとどまらず、様々な細胞でHes1が周期的に発現することを京大の影山さんたちが明らかにした。

これらの研究の上に、Hes1発現周期が腸管上皮細胞の運命決定に関わるのではと考えたのがこの研究だ。最初オルガノイドでHes1発現を調べると、期待通りNotch依存的に発現し、クリプトの増殖細胞で発現している。ただ、体節で見られるような同期した発現の波は見られず、それぞれの細胞が異なる発現周期を示すことがわかる。

最初は3次元オルガノイドを用いていたが、よりモニタリングが容易な2次元培養で同じような周期性が見られるか確認した上で、周期長さがパネット細胞からの距離を反映することを発見する。パネット細胞はNotchリガンドを発現していることから、Notch刺激実験を行っている。Notch 刺激を培養に加えると、Hes1の発現が上昇するけでなく、周期が短くなる。逆にNotchシグナルを抑えると周期が長くなる。ただNotchだけでなく、肝細胞増殖に必要なWntシグナルも、強いと周期を短くすることも示している。

次に実際の周期が細胞運命を決定することを示すため、Notchシグナルを調節できるマイクロ培養系を作成し、90分、130分、170分周期のHes1発現が全ての細胞で見られる条件を構築している。この実験が研究のハイライトで、これにより幹細胞維持には短い周期のHes1発現が必要なこと、分化細胞に関してはエンテロサイトやパネット細胞は長い周期が適しており、ゴブレット細胞は短い周期の方が増えることを示している。

実際の組織ではパネット細胞由来のNotchリガンドがHe1の発現と周期を決めており、パネット細胞から近いクリプト部位では短い周期が維持され、増殖システム即ちパネット細胞と増殖細胞を維持するが、パネット細胞から離れていくと周期が延びて、分化細胞が増えるという構造になっている。

以上が結果で、幹細胞動態の分子メカニズムを試験管培養で調べる典型的な研究と言っていいだろう。明日は、生体内での幹細胞動態の研究を紹介する。

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