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4月17日:老化による慢性炎症への腸内細菌の貢献(4月12日号Cell Host Microbe掲載論文)

2017年4月17日
    転写因子NFkBをハブにした炎症メカニズムは、実際には炎症だけでなく、というより炎症より前にシグナル依存的な形態形成のメカニズムとして発生してきている。おそらく使い勝手がいいので、外来の刺激への反応にもこのメカニズムが使いまわされたのだろう。その後新しい組織ができるときには常にこのシグナルが顔を出す。京大時代教室の重要テーマの一つだった骨髄、毛根、末梢リンパ組織は全てこの機構を使い回ししている。骨髄は両生類が陸に上がってから、毛根や末梢リンパ組織は哺乳類から発生する新しい組織で、すでにできている組織に何かを足すという形で進化したことを考えると、局所に入ってきた刺激に対する炎症のメカニズムはうってつけだ。
   これと並行して、加齢とともに起こってくる動脈硬化や糖尿病などもすべて炎症として捉えられるようになっている。症状がなくとも、高齢になると炎症の存在を示すサイトカインが上昇してくる。これは、様々なストレスが加わった結果と普通考えるが、最近この炎症も、腸内細菌の加齢変化によると考える人たちが出てきた。
   今日紹介するカナダ・マクマスター大学からの論文もその一つで4月12日号のCell Host Microbiome紙に掲載された。タイトルは「Age associated microbial dysbiosis promotes intestinal permeability, systemic inflammation and macrophage dysfunction(高齢に伴う細菌叢の失調により腸の透過性が上昇、全身炎症が高まり、マクロファージ機能異常が起こる)」だ。
   研究では、高齢(18ヶ月以降)のマウスのマクロファージの細菌貪食能が低下しており、これがマクロファージが慢性的に炎症のメディエーターTNFにさらされた結果であることを示している。
   次に、TNFやIL-6が高齢マウスで上昇している理由の一つが、腸内の細菌叢が生産される炎症刺激物質が腸上皮を通って循環に入るからではないかと、分子量3000程度の分子を用いて腸の透過性を調べ、確かに透過性が高まっていることを示している。
   この透過性が腸内細菌叢の変化によるなら、当然無菌マウスではこのような加齢変化は起こらないことになる。これを確かめるため、高齢無菌マウスを調べると、加齢変化が見られない。すなわち、腸内細菌叢が変化することで、加齢に伴う慢性炎症が起こっていることが確認される。
   この後、加齢が先か、細菌叢が先かという実験をいろいろ行っているが、細菌と相互作用する中で両方が変化してしまうというわかりにくい結論になっている。
   まとめると、何が細菌叢の変化を誘導するのかははっきりしないが、ホストと細菌叢が相互作用をする中で、細菌叢もホストの加齢に合わせて変化することで、腸の透過性が上がり、炎症物質が体内に入り、炎症が起こることになる。
   いずれにせよ、細菌叢への介入によりひょっとしたら炎症を抑えることができるかもしれない。実際、プロバイオでも、プレバイオでも高齢者に効果が高いことが報告されている。その意味で、IL-6やTNFは腸内細菌叢の変化を知るいいマーカーになるだろう。食品メーカーにとってはチャンスだ。しかしできれば、しっかりとした長期的テストで効果を確かめて効果がはっきりしたものだけ残るようにしてほしい。というのも、結局個人にとったら、効かなかったら後の祭りで、2度と確かめられない。
カテゴリ:論文ウォッチ
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