今日紹介する米国メイヨークリニックを中心とするグループからの論文はこのタイプのALSの早期診断と遺伝子治療モニターのための分子マーカー開発についての共同研究で3月29日号のScience Translational Researchに掲載された。タイトルは「Poly(GP) proteins are useful pharmacodynamic marker for C90RF72-associated amyotrophic lateral scleraosis (ポリGPタンパク質はC9ORF72の関わるALSの薬理的分子マーカーとして有用)」だ。
GGGGCCの繰り返し配列が何百何千もC9ORF72遺伝子に存在すると、小胞体輸送に関わると考えられているC9ORF72分子の機能が失われるとともに、異所的な翻訳開始点からグリシン・プロリン、アルギニン・グリシン、あるいはグリシン・アラニンの配列が繰り返すだけのタンパク質が合成される。このポリペプチドが、C9ORF72遺伝子から転写された長いRNAを核として集まることで、細胞内にペプチドが沈殿し、細胞を障害することが示唆されている。したがって、早期に診断してこのポリペプチドの合成を止めることで、発症や進行を抑制できる可能性がでてきた。
この研究では、可能性のある3種類のポリペプチドのうち、患者さんの脳脊髄液中に存在するグリシン、プロリンが繰り返すポリペプチドが、患者さんを発病前から発見し、モニターする分子マーカーとして利用できることをまず示している。病気や、症状のタイプとは強い相関はないが、発病した患者さんでは安定的に上昇が見られるため、病気が進行していることをモニターするためにはうってつけの検査になる。
次に細胞株や患者さん由来のiPSから作成した神経細胞を標的に、アンチセンスRNA処理を行うと、ポリGPが減少する。すなわち、アンチセンス治療の効果のモニターに使える可能性がある。最後に、マウスモデルで1回アンチセンスRNAを脳内に注射すると、脳脊髄液中のポリGPが減少し、脳内のタンパク沈殿が減少することを示している。
この結果は、前臨床動物モデルで、病気を早期発見し、タンパク質の沈殿を防ぐことができ、その結果をポリGPでモニターできることを明らかにした。患者さんにとってはまだまだもどかしいとは思うが、少しずつ治療の光も見えてきた気がする。
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