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6月20日:子供の社会性の欠如がロイテリ菌で治る?(6月16日Cell掲載論文)

2016年6月20日
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    ヨーグルトやプロバイオを手がける企業に限らず、最近腸内細菌叢に対する我が国の関心は高まっており、私も相談を受けることが増えた。そんな時いつも「腸内細菌叢が重要なのは、取り替え可能なもう一人の自分だから」と答えている。すなわち、腸内細菌叢は様々なルートを介して私たちの体の恒常性維持に関わっていることがわかってきた。しかも、自分自身の体と異なり、ある程度取り替えることすら可能だ。このため、人工甘味料のように自分の体は代謝できなくとも、腸内細菌叢が処理して様々な物質に転換するため、糖質を抑えるために利用した人工甘味料が、逆にもう一人の自分によって糖尿病体質を誘導することもありうる(http://aasj.jp/news/watch/2190)。
   今日紹介するベーラー医学校からの論文はなんと自閉症スペクトラム様症状が腸内細菌叢の中に存在する乳酸菌ロイテリ菌現象に起因することを示した研究で6月16日号のCellに掲載された。タイトルは「Microbial reconstitution reverses maternall diet-induced sociall and synaptic deficit in offspring (母親の腸内細菌叢を再構成すると子供の社会性の欠如とシナプス形成異常を正常化する)」だ。
マウスモデルで、肥満の母親から生まれた子供に社会行動異常が出ることが知られていた。この研究はこの原因を明らかにし、治療法を開発することを目的に行われている。実際の結果を見ると驚くが、肥満の母親の子供を7週齢で他のマウスに対して興味を示すかを指標とした社会性テストを行うと、自閉症スペクトラムの子供に似て、他のマウスに興味を示さず、また新しいことに興味を持たない。これほどはっきりと差が出ると、妊婦さんの体重管理は重要だと実感する。
   肥満で母親の腸内細菌叢が変化することは知られているので、次に肥満マウスの子供の腸内細菌叢の変化が社会性欠如の原因ではないかと狙いを定め、社会性欠如を示す肥満マウスに正常マウスの細菌叢を移植すると、行動が正常化することを発見した。
   さらに驚くことに、細菌叢が全く存在しない無菌マウスの行動を調べると社会性が欠如しており、この異常を正常マウスの細菌叢移植で正常化できる。このことから、何か特定の菌の欠損が社会性欠如の原因ではないかと考え、もともと夜泣きなどに効果があるとされプロバイオに利用されているロイテリ菌に狙いを定め調べると、確かに肥満マウスの子供ではロイテリ菌が著明に減少しており、ロイテリ菌を飲み水から服用させると社会性の欠如を治療できることを発見している。
  詳細を省いて結論を急ぐと、
1) 母親の肥満は子供の細菌叢発達に影響を与え、結果ロイテリ菌の減少が起こる。
2) ロイテリ菌は脳内オキシトシンの発現レベルを誘導し、これにより中脳辺縁系のドーパミン性褒神経回路を維持している。
3) このため、ロイテリ菌の現象は自閉症様症状発生につながり、ロイテリ菌によるプロバイオで治すことができる。
4) 同じ症状は、オキシトシン投与で治すことができる。
になる。    この研究が正しければ、ここで扱われる自閉症スペクトラムは、遺伝性の全くない、誰でも示す可能性がある自閉症スペクトラムである点だ。ヒトでも同じ様に肥満の母親からの子供でロイテリ菌減少が起こっているか調べる必要がある。しかし、自閉症スペクトラムの多くは遺伝的変異を持っており、この図式は当てはまらないことが多いだろう。   しかし一方、オキシトシンがほとんどの自閉症スペクトラムに良い影響があることが確実なら、ロイテリ菌プロバイオは、自閉症一般の治療として、オキシトシンの代わりに使うことは可能だ。    あまりに綺麗な仕事で、そのまま信じがたいが、間違いなく自閉症スペクトラムをこの視点から再検討することは重要だと実感した。
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