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4月19日:新しい神経薬理学的方法の開発(4月7日号Science掲載論文)

2017年4月19日
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    チャンネルロドプシンを用いて、光で目的の神経を興奮させる方法が開発され、動物の特定の神経を、生きたま刺激したり抑制したりすることが可能になり、神経生理学や行動科学は大きく進展した。21世紀初頭のビッグイノベーションを3つ挙げろと言われたら、iPS, CRISPR,そしてoptogeneticsが私の答えになる。重要なことは、optogeneticsがオリジナルな方法を超えて様々な新しい方法を生み出している点だ。すなわち、研究者の想像力の連鎖を引き起こす点だ。
   今日紹介するデューク大学からの論文は特定の細胞のシナプスにまず薬理活性のある物質を貯めたあとで、光でその物質を遊離させ、特定の神経を刺激する方法の開発で4月7日号のScienceに掲載された。タイトルは「Deconstructing behavioral neuropharmacology with cellular specificity(神経行動薬理学を細胞特異的に脱構築する)」だ。
   特定の神経だけを刺激する方法は現在数多くあるが、そのほとんどは刺激したい細胞本来の薬理学的特性を無視して刺激が行われる。一方、長年の薬理学的研究により特定の分子を刺激したり抑制したりする薬理物質のレパートリーは膨大なものがあり、この薬理学的手法をもちいて、もっと生理学的に特定の神経を刺激できると新しい分野が開けると予想できる。
   この課題をdrugs acutely restricted by tethering(DART)と彼らが呼ぶ方法で実現したのがこの研究で、実際にはHaloTagと呼ばれる小さな化合物に結合するバクテリア由来の分子を目的のシナプスに発現させたあと、HaloTagとスペーサーを介して結合した薬理活性物質を低い濃度で投与すると、細胞は刺激されないが薬理活性物質をHaloTag結合タンパクを介してシナプス膜上に貯めることができる。こうして特定のシナプス膜上に溜め込んだHaloTag-薬理活性物質に光を当てると、HaloTagが切れて、薬理活性物質によるシナプスの刺激が起こるというアイデアだ。
   脳のスライス培養を用いて特異性や、スペーサーの長さなどを至適にした後、この方法を線条体に存在する興奮性のD1ドーパミン受容体陽性細胞(D1細胞)と、抑制性のD2ドーパミン受容体陽性細胞(D2細胞)の機能を明らかにするために使っている。というのも、両者とも同じAMPA型グルタミン酸受容体を発現しているため、グルタミン酸刺激の効果を区別して解析することは難しかった。ただ、この問題を解決しない限り、ドーパミン刺激が低下したパーキンソン病患者さんの運動障害を解析し、運動能力を高める新しいリガンドの開発などは難しい。
   この研究では、黒質細胞を除去したパーキンソンモデルを用いて、AMPA型受容体抑制剤が運動機能を改善する効果のほとんどがD2細胞を介していることを明らかにしている。
   最後にD2細胞を詳しく分けて、ほんの一部しか存在しないコリン作動性の集団も細胞数は少ないものの抑制により運動機能が促進できることを示している。今後このポピュレーションを標的とした薬剤が開発できればパーキンソン病の患者さんも助かるだろう。   この研究では他の薬理活性物質も同じように使えることを証明しているが、紹介はいいだろう。著者らが期待した通りの効果が得られたという結果だ。読んでみると、今のままではこの方法が爆発的に他の方法に変わるのは難しいように感じる。しかし、今後脳内への投与ではなく、全身投与でリガンドが脳に到達し、リガンドを切り離す他の方法が開発できれば、これまでの薬理学の蓄積をすべて味方につけて、この方法はブレークするように感じた。
   我が国でも光遺伝学や遺伝子編集に大きなお金が投資されているらしいが、世界に伍していくための本当の戦略があるのか、これほど世界の進歩が激しいと、その成果は厳しく問われると思う。私も注視していきたい。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月18日:子宮ガンに対するガン免疫反応の解析(4月14日号Science掲載論文)

2017年4月18日
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    ガンに対する免疫反応は、現時点で根治が可能な切り札として大きな注目が集まっているが、患者さんがガンが発現するどの抗原に反応し、この時チェックポイントに関わるPD-1などの分子がどのように発現するのかなど詳しい解析を進めるのは難しい。というのも、ガン局所に浸潤するリンパ球を取り出して反応性を調べることはそう簡単ではない。
   今日紹介する米国国立衛生研究所からの論文は、転移性の子宮ガンの局所に浸潤したリンパ球を試験管内で増幅した後患者さんに戻すという免疫療法によりガンの完全退縮が観察された2例について詳しく免疫反応を調べた臨床研究で、4月14日号のScienceに掲載された。タイトルは「Landscape of immuneogenic tumor antigens in successful immuneotherapy of virally induced epithelial cancer(免疫療法が成功したパピローマウイルスにより誘導された上皮ガン抗原の包括的解析)」だ。
   最近のゲノム研究はほとんどの子宮ガンのゲノムに数多くのパピローマウイルスが入り込んで発がん遺伝子を活性化していることが明らかになっている。このことは、多くの子宮ガン細胞ではウイルス抗原が発現して、ガン特異的免疫を誘導している可能性が考えられる。しかし、パピローマウイルス抗原を用いたガンのワクチン療法はうまくいっていない。そこで、この研究ではガン免疫療法が成功した患者さんを選び、この時ガン抗原として働いた分子をT細胞の機能アッセイで詳しく調べている。
   結果は、ウイルス抗原に対しても、ガン細胞が発現する変異分子に対しても、T細胞が反応していたという結果だが、この結果よりも少ない症例を徹底的に調べ尽くしている点が最も高く評価できる。我が国でも、ガン特異的リンパ球の移入療法は行われているが、結局効いたか効かないかだけで評価されるだけで、将来へ向けてできるだけ多くのデータを集めようとした研究は少ない。
   この研究では、化学療法前にガン局所をIL-2と共に培養し、増殖するリンパ球を集めている。その間、患者さんにはガン増殖を抑えるだけでなく、リンパ球を完全に除去できる化学療法を行い、抑制性のT細胞の働きを抑えたところに、増殖させたリンパ球を注射する。このトライアルで9人の内3人が完全寛解に到達している。そのうち、2人は寛解が54ヶ月、46ヶ月と続いており、この確実に免疫療法が効いた患者さんについて、以下のことを調べている。
   まず、ガン浸潤T細胞(TIL)をパピローマウイルス(HPV)抗原とIL-2で増幅して得られるT細胞の反応を調べると、期待通りHPVに対する反応に加え、ガンの遺伝子解析から明らかになったガン抗原に反応するT細胞が含まれていることを確認する。
   次に、このT細胞の反応性を、個々の抗原ペプチドを用いて一つづつスクリーニングし、それぞれの患者さんが反応しているガン抗原を同定している。
   次に、パピローマウイルスに対するT細胞と、ガン抗原に対するT細胞の抗原受容体を、得られた受容体遺伝子を細胞に導入して再構成する実験で全て決定している。
   こうして得られたTILのT細胞受容体の遺伝子配列をもとに、今度は患者さんの末梢血に、ウイルス特異的、あるいはガン抗原特異的T細胞がどの程度存在するのかを調べ、子宮ガンではガン特異的抗原に対する反応が臨床経過に応じて増減していることを明らかにしている。
   この大変な実験から、2人の患者さんともパピローマウイルス抗原に対して反応しているが、それ以上にガン特異的抗原に対して反応していること、反応性の細胞は全てPD-1を発現していること、及びガンの増殖が抑えられている間はガン特異的T細胞が末梢血に存在すること、などが明らかになっている。
   この結果を基盤に、今度は全ての患者さんに効果を示す治療法の開発が行われるだろう。人間でガン免疫反応を調べるのは、治療を通してしかありえない。この千載一遇のチャンスをしっかり生かしたこの研究は、我が国の臨床研究者も見習うべき点が多いと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月17日:老化による慢性炎症への腸内細菌の貢献(4月12日号Cell Host Microbe掲載論文)

2017年4月17日
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    転写因子NFkBをハブにした炎症メカニズムは、実際には炎症だけでなく、というより炎症より前にシグナル依存的な形態形成のメカニズムとして発生してきている。おそらく使い勝手がいいので、外来の刺激への反応にもこのメカニズムが使いまわされたのだろう。その後新しい組織ができるときには常にこのシグナルが顔を出す。京大時代教室の重要テーマの一つだった骨髄、毛根、末梢リンパ組織は全てこの機構を使い回ししている。骨髄は両生類が陸に上がってから、毛根や末梢リンパ組織は哺乳類から発生する新しい組織で、すでにできている組織に何かを足すという形で進化したことを考えると、局所に入ってきた刺激に対する炎症のメカニズムはうってつけだ。
   これと並行して、加齢とともに起こってくる動脈硬化や糖尿病などもすべて炎症として捉えられるようになっている。症状がなくとも、高齢になると炎症の存在を示すサイトカインが上昇してくる。これは、様々なストレスが加わった結果と普通考えるが、最近この炎症も、腸内細菌の加齢変化によると考える人たちが出てきた。
   今日紹介するカナダ・マクマスター大学からの論文もその一つで4月12日号のCell Host Microbiome紙に掲載された。タイトルは「Age associated microbial dysbiosis promotes intestinal permeability, systemic inflammation and macrophage dysfunction(高齢に伴う細菌叢の失調により腸の透過性が上昇、全身炎症が高まり、マクロファージ機能異常が起こる)」だ。
   研究では、高齢(18ヶ月以降)のマウスのマクロファージの細菌貪食能が低下しており、これがマクロファージが慢性的に炎症のメディエーターTNFにさらされた結果であることを示している。
   次に、TNFやIL-6が高齢マウスで上昇している理由の一つが、腸内の細菌叢が生産される炎症刺激物質が腸上皮を通って循環に入るからではないかと、分子量3000程度の分子を用いて腸の透過性を調べ、確かに透過性が高まっていることを示している。
   この透過性が腸内細菌叢の変化によるなら、当然無菌マウスではこのような加齢変化は起こらないことになる。これを確かめるため、高齢無菌マウスを調べると、加齢変化が見られない。すなわち、腸内細菌叢が変化することで、加齢に伴う慢性炎症が起こっていることが確認される。
   この後、加齢が先か、細菌叢が先かという実験をいろいろ行っているが、細菌と相互作用する中で両方が変化してしまうというわかりにくい結論になっている。
   まとめると、何が細菌叢の変化を誘導するのかははっきりしないが、ホストと細菌叢が相互作用をする中で、細菌叢もホストの加齢に合わせて変化することで、腸の透過性が上がり、炎症物質が体内に入り、炎症が起こることになる。
   いずれにせよ、細菌叢への介入によりひょっとしたら炎症を抑えることができるかもしれない。実際、プロバイオでも、プレバイオでも高齢者に効果が高いことが報告されている。その意味で、IL-6やTNFは腸内細菌叢の変化を知るいいマーカーになるだろう。食品メーカーにとってはチャンスだ。しかしできれば、しっかりとした長期的テストで効果を確かめて効果がはっきりしたものだけ残るようにしてほしい。というのも、結局個人にとったら、効かなかったら後の祭りで、2度と確かめられない。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月16日:CRISPRは検査にも使える(Scienceオンライン版掲載論文)

2017年4月16日
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    何度も強調してきたが、大きなイノベーションはあらゆる分野に広がる。CRISPR/Cas研究を見ればそのことがよくわかる。すなわち効率の良いゲノムやRNA編集が可能になれば、生命情報をいくらでも操作できるということで、DNA,RNA情報に依存する生物を思い通り操作できるということだ。もちろん、中間の過程は理解できているわけではないが、その有効性は情報生物学とも言える分子生物学によって証明済みだ。これは生命を操作するという目的だが、情報操作であれば、人間に情報を伝える方法の開発にも使える。
   今日紹介するハーバード大学のFeng Zhang(CRISPR特許をめぐる法廷闘争で現在話題の研究者だが、光遺伝学を始め様々な技術を開発するアイデアマンだと思う)研究室からの論文はこのシステムを高感度の微生物診断に使える可能性を示した論文で、Scienceオンライン版に掲載された。タイトルは「Nucleic acid detection with CRISPR-Cas13a/C2C2(CRISPR-Cas13a/C2C2を用いた遺伝子検査)」だ。
   CRISPR/Casは特異的な核酸を検出するための最強のシステムと言え、このおかげで細菌は外来の核酸から身を守っているが、特異的核酸を認識してから行う酵素反応はまちまちだ。全く知らなかったがZhangのグループはCas13aが特異的に核酸を認識した後、周りに存在する核酸をランダムに分解する活性があることを報告している。直感的に、この方法を用いれば将来特異的に細胞をアポトーシスで殺してしまったりすることができるのではなどと思ったが、Zhangらはまずこの方法を感染性の病原体の検出に応用できるのではと着想して開発を進めている。
   原理は簡単で、目的のRNAやDNAがあればそれにCAS13aが結合し、これにより核酸分解活性がオンになる。この分解活性を使って、同じ反応系に加えておいた蛍光プローブと結合させたRNAが切断されることで誘導される蛍光を指標に、標的遺伝子を検出する方法だ。
   実際には37度で可能な遺伝子増幅を利用して標的核酸を増幅する方法を組み合わせているが、アトモル(10のマイナス18乗)レベルの感度で、特異的な検出が可能になっている。
  後は現在最も問題になっているデングウイルスとジカウイルスの検出を試み、驚くことに20個という少ないウイルス粒子の検出に成功している。また、実際のヒトの血液や尿を用いて同じ方法が利用できることを示している。
   驚くのは、同じシステムを紙に染み込ませた検査スティックを開発できることまで示して、将来誰でも調べることができる、安価な方法の開発が可能であることを示している点で、Zhangら医学のニーズを的確に捉えていることがよくわかる。
  他にも検出の特異性の検定、血液型検査並の簡便な遺伝子型検査方の開発まで書いているが、詳細はいいだろう。Zhangが稀代のバイオテクノロジー開発者として今後も活躍することがよくわかった。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月15日ALSのもう一つの治療標的Ataxin2(Natureオンライン版掲載論文)

2017年4月15日
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   4日前にC90RF72遺伝子の繰り返し配列の増幅変異によるALSを、ポリGPに対するアンチセンスRNAで治療する可能性を示す動物モデルを用いた前臨床実験を紹介したばかりだが、次の週のNatureにまた新たな治療標的 ataxin-2についてのスタンフォード大学の論文が発表されたので紹介する。タイトルは「Therapeutic reduction of ataxin-2 extends lifespan and reduces pathology in TDP-43 mice(TDP-43マウスモデルでataxin-2を治療的に低下させると病理変化を軽減し、生存期間が伸びる)」だ。これほど相次いで論文が出ると、紹介する方もうれしい悲鳴を上げることになる。
   ALSの治療標的を確かめるにはモデル動物が必要で、前回はC90RF72遺伝子内のGGGGCC繰り返し配列が何百倍にも増幅するタイプのALSモデルが用いられた。このタイプは原因遺伝子が明らかになっているALSのかなりの部分を占めているが、おそらく半分以上の患者さんには対応できない。同じようにALSモデルとしてSOD1と呼ばれる遺伝子の変異マウスが使われるが、この場合多くて5%程度の患者さんが対応できるだけだ。ただ、両モデルともアンチセンスRNAを用いて原因となる分子の発現を低下させると、生存期間が延長することが確認できている。
   従って、もっと多くの患者さんでの病気のメカニズムを突き止めて、治療標的を開発するための研究が進んでいる。今日紹介する論文では、TDP-43と呼ばれるRNA結合タンパクが、ほとんどのタイプのALSで細胞内のストレス顆粒に蓄積していることに着目して、この蓄積を抑える方法の開発にチャレンジしている。ただ、残念ながらTDP-43は細胞の生存に必須であるため、直接標的にすることは難しい。そこでこの研究では酵母とショウジョウバエで明らかになったTDP-43の蓄積にataxin-2が関わっているという発見をもとに、同じことをマウスのような高等動物で再現できるか調べている。
   研究ではまず正常ヒトTDP-43を脳細胞で過剰発現させたトランスジェニックマウスを用いて、ataxin-2ノックアウトと掛け合わせることで運動神経障害を抑制できるか調べている。これまでの研究でTDP-43を過剰発現させるだけでマウスは急速にALSを発症1ヶ月で死ぬことがわかっている。
   結果は予想通りで、ataxin-2遺伝子が完全欠損したマウスでは病気の発症は遅れ、生存期間も400日以上に伸びる。片方のataxin-2を欠損させるだけでも生存は40日程度に伸びる。すなわち、完全にataxin-2を欠損させ、早期に治療すれば病気の発症を抑制することが可能だ。
   次にヒト細胞を用いて試験管内でataxin-2の機能について調べ、ataxin-2がTDP-43ストレス顆粒と呼ばれる構造に連れてきて沈殿させることを確認し、ataxin-2に対するsiRNAでストレス顆粒の生成を抑えることを示している。また、ataxin-2遺伝子欠損マウスの脳内で、TMP-43がストレス顆粒に蓄積しないことを示している。
   これらの結果をもとに、TDP-43トランスジェニックマウスが病気を発症する直前に脳室内に一回だけアンチセンスRNAを投与する実験を行い、生存期間が平均で35%延長し、一部は120日以上生存することができることを示している。今後、もっと早い段階での治療や、繰り返し投与などさらに実験が行われることを期待する。
   このように、変異遺伝子を見つけて治療標的にしなくとも、タンパク質がストレス顆粒に蓄積するのを抑制することができれば、病気の進行を遅らせることができることを示した点でこの研究は重要だ。
   同じ号のNatureにユタ大学のグループがCAGリピートが増幅する脊髄小脳失調症の進行を同じataxin-2に対するアンチセンスRNAが有効であることが示されており、ALSのみならず他の神経変性疾患にも同じ戦略が利用できることを示す論文を発表している。まだ動物モデルの段階だが、かなり期待が持てる治療標的が見つかったと言える。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月14日:WGS遺伝学の時代がやってきた(4月13日号Nature掲載論文)

2017年4月14日
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    大きな研究室に長くいて、そのまま教授になれるのは限られた人で、多くは慣れ親しんだ研究室を離れて独立する。こじんまりとした研究室であまりコネもなく研究していた私も、30代で幸い独立することができたが、お金のないこの時が一番大変だった。当時様々な遺伝的形質を示す突然変異マウスの遺伝子を決めるトレンドに乗って、現在鳥取大学の教授をしている林さんらが大理石病マウスの遺伝子を決め、これでお金もなんとか来るようになった。ただ苦労は多いが、今振り返ると独立したばかりの時代が最も楽しかったのも確かだ。その意味で、若い人が一人でも独立して挑戦できる環境を整えることが我が国の科学力を高める最も重要な課題だと思い、京大再生研やCDBの設立に関わった。
   独立して以降の発生学を考えると、最初突然変異マウスの遺伝子特定から始まった遺伝学的手法の導入は、その後遺伝子ノックアウトから始めるreverse geneticsに変わっていった。そして、CRISPR-Casの登場は、reverse geneticsが違うレベルに拡大する予感を抱かせる。
   しかし、いったん人間に目を移せば、これとは別にWhole Genome Sequencing(WGS)遺伝学が始まっていることがわかる。昨年暮れ「第二段階に入った個人ゲノム」というタイトルで、米国ヘルスサービス会社Geisingerが行った50000人規模のエクソーム研究を紹介し、1200程度の遺伝子で、機能欠損型の突然変異を両方の染色体持つホモ接合体を特定できるという驚くべき研究を紹介した。1200遺伝子に突然変異の入ったマウスを作成するのは、CRISPRを用いても大変なことだ。
   この確信をさらに拡大させたのが今日紹介するペンシルバニア大学とブロード研究所からの論文で4月13日号のNatureに掲載された。タイトルは「Human knockouts and phenotypic analysis in a cohort with a high rate of consanguineity(血族間結婚の高いコホート集団での遺伝子ノックアウトと形質の解析)」だ。
   責任著者の二人の名前をみると、おそらくパキスタン出身だろう。元々イスラム圏は血族を大事にするせいでいとこ結婚が多いが、パキスタンは全結婚の3割近くに達しているようだ。従って、機能欠損遺伝子が両方の染色体で揃う確率が圧倒的に高いと期待される。この研究では、パキスタンで始まったコホート研究の参加者約1万人のエクソーム解析を行い、変異の中で遺伝子機能が失われた突然変異を特定し、その変異を両方の染色体で持つ人(ホモ接合体)を特定、発見した幾つかの遺伝子について形質との関係を調べてて報告している。
   研究の鍵になるのは、突然変異が分子機能の欠損につながるかどうかを決めることだが、この研究ではコンピュータだけでなく、人海戦術でアノテーションを行って、ほぼ9割が間違いなく機能欠損突然変異であることを確認している。
   結果は期待通りで、1万人調べただけで1317の機能欠損変異をホモで持つ人が特定できている。前回紹介した5万人規模の研究を超えており、確かにパキスタンでは血族間結婚が多いことがわかるとともに、特定の遺伝子欠損による効果を調べるとき、パキスタンは格好の国であることがわかる。
   実際、今回新たに発見された幾つかの遺伝子欠損について深堀をしているが、その中のAPOC3と呼ばれる血中から脂肪を除去する機構のブレーキ役の分子が欠損していた一人の家族を呼んで調べると、妻も同じ変異のホモ接合で、従って九人の子供も全てAPOC3欠損であることがわかった。すなわち、この遺伝子の機能を調べるための十分な数のポピュレーションがパキスタンでは簡単に集まることがわかる。調べてみると、親も子供も全て血中の脂肪の除去効率が高まっている。
   他にも幾つかの遺伝子の機能について明らかにしているが、製薬企業が喉から手が出るほど欲しい耐糖能の異常や脂肪代謝などに関わる遺伝子とともに、チトクロームP4502F1をコードする遺伝子の欠損がIL-8の上昇を示すなど、面白そうな話が満載に見える。
   この研究ではGeisingerの結果とは比較していないが、これまでのエクソーム研究で明らかにできなかったホモ接合体の変異をなんと734種類も発見している。しかし最も重要なのは、家族を調べることで、ホモ接合体やヘテロ接合体を数多く得ることができるという点だ。おそらく多くの製薬企業が殺到しているのではないだろうか。
   長くなるのでこれ以上の紹介はやめるが、70億という人口を抱える人間のゲノム研究がいかに重要かを示す研究だと思う。これまでWGSは遺伝病の解析に用いられてきた。今後、明確な症状がない人でのWGS遺伝学が進むと、生活習慣病や精神疾患に関する理解が深まると期待される。この周りに、iPSやCRISPRと動物モデルなどが集まり、私の現役時代にはほとんど考えられなかった、動物から人まで一直線に繋がった遺伝学が始まっていることを実感する。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月13日Thymosinαは嚢胞性線維症の特効薬になるか?(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2017年4月13日
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    嚢胞性線維症(CF)はCFTRと名付けられたクロライドチャンネルの突然変異により、上皮の粘液の分泌異常とともに、それに伴う慢性の炎症が起こる。一般的には呼吸器症状が中心だが、消化器の上皮にも異常が認められる。
   CFTR分子は巨大で、様々な場所の突然変異によりCFが起こるが、最も多い突然変異は508番目のフェニルアラニンが欠失するタイプだ。この突然変異は、分子自体の機能もある程度低下するが、タンパク質の折りたたみがうまくいかず、細胞膜への輸送が妨げられる。このことから、変異分子の機能をなんとか正常化させるIvacaftorという薬剤と、細胞膜への輸送を促進するlumacaftorという薬剤が現在治験中だ。
   今日紹介するイタリア・ペルージャ大学からの論文はこれまでのように直接CFTRを標的にするのではなく、Thymosinαと呼ばれる主に胸腺で作られる小さなペプチドで上皮細胞の炎症への抵抗性を与えることで、CFTRの細胞膜への輸送を高め、同時に炎症も沈めてしうことが可能であることを示す画期的な研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Thymosinα1 represents a potential potent single molecule-based therapy for cystic fibrosis(Thymosinα1は嚢胞性線維症の単一分子による強力な治療への可能性を持っている)」だ。
   この研究のハイライトは、ウイルス感染や、免疫不全、慢性呼吸器疾患に現在使われているThymosinα1が細胞内の様々な経路を変化させ、CFTR分子の輸送や機能にも良い影響を及ぼすのではないかと着想したことだ。
   この着想を確かめるため、CFの上皮細胞をThymosinα1で処理すると、上皮のTLR9シグナルを介してIDO1と呼ばれる炎症への抵抗性の鍵になる分子が誘導される。そして期待通り、IDO1が誘導されるとオートファジーが高まり、変異型CFTRの細胞膜への輸送が正常化することが明らかになった。細胞学的に調べると、Thymosinα1処理により確かに変異型CFTRの折りたたみが正常化するとともに、タンパクの再利用が進むことで、細胞膜への発現が高まることがわかった。この研究では、変異CFTRの細胞内でのプロセッシングについてさらに詳しく調べているが詳細は省いて良いだろう。重要なのは、モデルマウスでこの結果、上皮のクロライドチャンネルが正常化することだ。さらに、これまで開発された分子機能を高めるivacaftorとの協調作用も示されている。
   まとめると、Thymosinα1により上皮細胞の炎症への抵抗性が上昇することで、CFTRの輸送や再利用が高まり、遺伝子改変なしにも一定程度の治療が可能であることを示している。さらに、Thymosinα1はCFTR以外のクロライドチャンネルを誘導することで、臨床的にはCFTRの機能を高める以上の臨床的効果が期待できるという結果だ。Thymosinα1はすでにZadaxinという薬品として市販されている。もちろん、いくら体内で作られている薬剤だからといって長期間投与が可能かなど問題はあるが、気管内投与、気管内遺伝子投与、あるいは今回明らかになったThymosinα1により誘導される経路の分子を標的にした治療など、様々な可能性が新たに生まれたと思う。期待したい。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月12日:基礎と応用(4月7日 Science掲載論文)

2017年4月12日
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基礎研究が技術開発につながることが認識され、国が物理や数学などの基礎科学に公的助成を行うようになったのはそう昔のことではない。どの本で読んだか記憶が定かではないが(おそらくHelga Nowotnyらの書いたRethinking Scienceだったと思うが)、19世紀の終わりに英国政府が基礎研究に対する助成を決めた時、科学者会議は「研究とは個人の興味で行うもので、国から金をもらう筋合いはない」と、拒否したらしい。もちろんこれは長く続かず、直接、間接に公的助成が得られないと、研究ができない現状になっている。
   ただ公的助成の主目的は、個人の興味を満足させることでなく、成果が技術に還元され国民が豊かになる(あるいは体制が維持される)ことに尽きる。この結果、特に最近「出口を示す」ことが助成の条件になっている。
  これは決して我が国だけではない。ケンブリッジの幹細胞研究所のアドバイザーを勤めていたが、英国でもMRCは出口を示すことを強く要求をしていた。とはいえ、どの研究が出口に繋がっているのか決めるのは難しく、結局特許の申請数などを指標にするため、役に立たない特許までともかく申請して、報告書に乗せるという由々しい状況になっている。
   今日紹介するハーバードビジネススクールからの論文は、NIHが助成した研究と特許の関係を調べたビッグデータアナリシスで4月7日号のScienceに掲載された。タイトルは「The applied value of public investments in biomedical research(医学・生命科学の公的投資の応用的価値)」だ。
   この研究では1980年から2007年にNIHが助成した研究について、1)研究から直接特許が生まれたか、あるいはFDAの承認を得た医療が開発されたか。2)特許やFDA承認のための申請書に論文が引用されているか、の2点について調べている。
   結果だが、NIH助成による研究の場合8.4%が直接成果として特許に繋がっている。少ないように思えるが、次に研究成果が企業が特許を申請する時に引用されているかを調べると実に31%がその特許に貢献している。FDA承認の医療の実現については、直接開発に繋がって研究は1%に満たないが、FDA承認の医療の申請書で引用された研究は5%に達している。すなわち、直接特許申請に至ったかだけで助成の効果を算出することは間違っており、長期的視野で見ればかなりの研究が技術の開発を後押ししていると結論している。
   次に、グラントの申請書のアブストラクトの内容を検索し、Medical Subject Headingにリストされているキーワードが使われた場合は応用を目指していると判断し、それ以外を基礎研究と分類して、引用のされ方で特許への貢献を調べている。
   結果は明確で、特許やFDA承認医療で引用されたかという視点でみると、基礎も応用研究もほとんど貢献度に差がない。さらに、無脊椎動物を用いた研究も、マウスやヒトを用いた研究と同じぐらい技術の開発に貢献している。
   結論としては、基礎か応用かを簡単に判断できないことになる。もし直接成果としてあげられた特許がどれほど役に立ったかについて調べることができれば、もっと面白い結果になったかもしれない。要するに、しっかりお金をかけて科学全体の活動を維持しないと、技術開発も難しいと言って良いだろう。
   個人の興味の満足に研究費が出せなくなった世の中では、おそらく若い研究者は育たないだろう。今の政治家や役人は忘れていると思うが、私の卒業したバブル期は、日本は基礎研究に金をかけずに先進国の成果にただ乗りしているという「ただ乗り論」が叫ばれ、基礎研究への助成を増やせというのが政治家からも叫ばれていた。一方今の政治をみると、政府が役人に「記録はすべて破棄しました」と平気で語らせて恥じないことからわかるように、過去を忘れることで成立しているように思う。しかし、大学法人化も含め、もう一度過去の過程をしっかり思い出すことが日本の科学技術行政にとって重要ではないだろうか。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月11日:C9ORF72遺伝子変異によるALS治療のための分子マーカー(3月29日号Science Translational Medicine掲載論文)

2017年4月11日
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    運動神経が進行性に失われるALSは現在もなお治療法がない難病だが、一部の患者さんに病気の引き金になる遺伝子変異が見つかってきたおかげで、特殊なケースについては少しづつ治療戦略を構想することができるようになってきた。中でも最も期待されているのがC9ORF72遺伝子内のGGGGCCが繰り返す配列が、正常では30回以下で止まっているのに、何百、何千にも増えることで発症するALSだ。これは家族性に遺伝することもあるし、また遺伝性の認められない個発性のALSでも見られる変異で、順天堂大学の富山さんの論文によると、家族性ALSの21−57%、個発性の3−21%に達する。従って、早期診断と治療法が発見されると、かなりの数のALSの患者さんを救うことができる。
   今日紹介する米国メイヨークリニックを中心とするグループからの論文はこのタイプのALSの早期診断と遺伝子治療モニターのための分子マーカー開発についての共同研究で3月29日号のScience Translational Researchに掲載された。タイトルは「Poly(GP) proteins are useful pharmacodynamic marker for C90RF72-associated amyotrophic lateral scleraosis (ポリGPタンパク質はC9ORF72の関わるALSの薬理的分子マーカーとして有用)」だ。
   GGGGCCの繰り返し配列が何百何千もC9ORF72遺伝子に存在すると、小胞体輸送に関わると考えられているC9ORF72分子の機能が失われるとともに、異所的な翻訳開始点からグリシン・プロリン、アルギニン・グリシン、あるいはグリシン・アラニンの配列が繰り返すだけのタンパク質が合成される。このポリペプチドが、C9ORF72遺伝子から転写された長いRNAを核として集まることで、細胞内にペプチドが沈殿し、細胞を障害することが示唆されている。したがって、早期に診断してこのポリペプチドの合成を止めることで、発症や進行を抑制できる可能性がでてきた。
   この研究では、可能性のある3種類のポリペプチドのうち、患者さんの脳脊髄液中に存在するグリシン、プロリンが繰り返すポリペプチドが、患者さんを発病前から発見し、モニターする分子マーカーとして利用できることをまず示している。病気や、症状のタイプとは強い相関はないが、発病した患者さんでは安定的に上昇が見られるため、病気が進行していることをモニターするためにはうってつけの検査になる。
   次に細胞株や患者さん由来のiPSから作成した神経細胞を標的に、アンチセンスRNA処理を行うと、ポリGPが減少する。すなわち、アンチセンス治療の効果のモニターに使える可能性がある。最後に、マウスモデルで1回アンチセンスRNAを脳内に注射すると、脳脊髄液中のポリGPが減少し、脳内のタンパク沈殿が減少することを示している。
   この結果は、前臨床動物モデルで、病気を早期発見し、タンパク質の沈殿を防ぐことができ、その結果をポリGPでモニターできることを明らかにした。患者さんにとってはまだまだもどかしいとは思うが、少しずつ治療の光も見えてきた気がする。
カテゴリ:論文ウォッチ

4月10日:メチル基供給を目的としたサプリの胎児への影響(Molecular Psychiatry オンライン版掲載論文)

2017年4月10日
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   現役時代DNAメチル化の重要性を教えるための教材として、低濃度のダイオキシンにさらされた妊娠マウスから生まれた子供は、DNAメチル化による遺伝子抑制が外れて毛色が変化すること、この変化をメチルドナーと呼ばれるDNAメチル化反応の経路にメチル基を提供する餌を食べさせると予防することができるという論文を用いていた。
   妊娠中の食べ物は胎児ゲノムのメチル化パターンを変化させるこのような例は続々見つかってきており、妊娠中に葉酸やビタミンB12などのメチルドナーの摂取を進めている機関も存在する。しかしなんであれ「過ぎたるは及ばざるが如し」で、葉酸の取りすぎは発生異常や、子供のアトピーを増加させるという報告がある、従って妊婦さんには「なるべくサプリメントを用いず、バランスの良い食事でしっかり栄養をとり、低栄養でダイエットなど考えないよう」というのが基本だろう。
   これは母体の話だが、今日紹介するドイツ・ボンにある神経変性疾患研究所からの論文は、マウスモデルではあっても、お父さんがメチルドナーを取りすぎると生まれてきた子供の記憶力が低下しているという恐るべき報告で、Molecular Psychiatryオンライン版に掲載された。タイトルは「Paternal methyl-donor rich diet altered cognitive and neural functions in offspring mice(メチルドナーの多い食事を与えた父親からの子供は認知機能と神経機能が変化する)」だ。
   この研究は単純でメチルドナーを多く含む餌を6週間与えた雄マウスと掛け合わせた正常メスマウスからの子供の認知機能や記憶力を定番の方法で調べるとともに、脳の遺伝子発現やDNAメチル化状態を調べている。
    この時食べさせた餌には1kgあたり7.5gメチオニン、15gコリン、15gベタイン、15mg葉酸、1.5mgビタミンB12、150mg亜鉛が含まれている。このサプリメントのほとんどは、一般にもサプリとして出回っており、一部は妊婦さんにも効果があるとうたっている。特に葉酸や、ビタミンB12はメチル基を利用するために重要な代謝経路を回す働きがあり、ビタミンドリンクやエネルギードリンクにも含まれている。
   結果だが、マウスで使われる定番の認知機能検査、長期記憶検査の成績がこの餌を食べた雄マウスの子供は低下している。また、海馬の脳活動を調べた検査でも、記憶に関わるテータ波の低下がみられ、回路形成に問題があることを示している。
   次に脳の遺伝子発現を正常の子供と比べ、様々な遺伝子の発現が変化するとともに、カルシウムイオン濃度と膜電位に応じて開閉するカリウムチャンネル分子の発現が、メチル化により抑制されていることを突き止めている。
   最後に異常が誘導された子供マウスにこのチャンネル分子遺伝子を導入すると、異常が治ることまで示している。
   この研究だけでは精子形成変化から子供の海馬サーキットの異常まで連なるメカニズムは明らかでない。ただ、父親の精子形成過程で起こったエピジェネティックな変化が子供に伝わることはよく知られている事実で、メチルドナーの多い食事をとった父親の子供のDNAメチル化パターンに変化が誘導され、その中のカリウムチャンネル分子などの発現異常により子供の認知機能や記憶力が低下することは十分ありえると納得できる。
   では同じことが人間でも言えるだろうか?これには長い疫学調査が必要で、すぐには結論が出ないだろう。しかし、サプリが効くことを示すには十分な臨床治験が必要だが、サプリが危ないことについては、疑いがあれば避けるということが正しいだろう。
   我が国は、トクホ、トクホで、様々なサプリの効果をうたう宣伝が満ち溢れている。元気を取り戻す目的や様々な理由でサプリやエネルギードリンクを飲んでいるお父さんも多いだろう。しかしこの論文のように動物実験であっても、サプリやエネルギードリンクを飲んだ結果が子供に悪い影響を及ぼす可能性が少しでもあるなら、わざわざ金を払ってサプリやドリンクで栄養を補うことはやめたほうがいい。
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