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10月16日 アストロサイトは長鎖脂肪酸を介して神経細胞のLipoapoptosisを誘導する(10月6日号 Nature オンライン掲載論文)

2021年10月16日
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非アルコール性脂肪肝で肝細胞死を誘導する要因として研究されてきたメカニズムの一つがLipoapoptosisで、飽和脂肪酸により細胞内のERストレスが発生し、それにより細胞死が誘導されるメカニズムだ。このメカニズムによる細胞死は、様々な細胞へ拡大しているが、私の理解では血中の脂肪酸により誘導される過程で、ある細胞が他の細胞を殺すときに使うという可能性は考えたことがなかった。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、このメカニズムをアストロサイトが神経細胞死を誘導するために積極的に利用しているという面白い研究で10月6日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Neurotoxic reactive astrocytes induce cell death via saturated lipids(神経毒性を持つ活性化アストロサイトは飽和脂肪酸を介して細胞死を誘導する)」だ。

元々このグループは、脳損傷などで活性化されたアストロサイトが神経やオリゴデンドロサイトの細胞死を誘導する仕組みを研究し、ミクログリア由来のIL1a、TNF、そして補体成分などがアストロサイトを活性化し、何らかのタンパク成分を分泌させ、神経細胞死を誘導することを示してきている。

この研究では、活性化されたアストロサイトの培養上清に含まれる神経細胞死誘導分子を生化学的に検討し、これまで疑われていた補体成分やlipocalin-2などのタンパク質成分ではなく、APOEなどのリポプロテインと結合する脂肪酸、特に飽和長鎖脂肪酸およびvery long chain fatty acid(VLCPC)が細胞死を誘導していることを突き止める。

すなわちLipoapoptosisが起こっている可能性が示唆されたので、次に上記の脂肪鎖で処理した神経細胞で、確かにERストレスを介する細胞死経路が活性化されていること、そしてERストレスを媒介するPUMAやCHOPがノックアウトされた細胞ではアストロサイトによる神経死が防がれることを確認している。

そして最後に、本当にアストロサイトが積極的にこのような脂肪酸を合成分泌して神経細胞を殺すのか確認するため、このような脂肪酸を合成する酵素の一つEVOLV1をノックアウトしたアストロサイトを作成し、活性化による細胞死誘導が完全ではないが、かなり低下することを確認している。

結果は以上で、積極的に長鎖脂肪酸を分泌して近接する神経細胞を殺すという、キラーT細胞にも匹敵する能力がアストロサイトにあることを示した重要な貢献で、今後アルツハイマー病をはじめとする神経細胞死研究に新しい道を開くのではと期待する。特にAPOEとアルツハイマー病との関係はこの観点から見てみると面白い気がする。

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