3年ほど前から Swatch から Apple Watch に変えて、時計に支配される感覚を心地よく感じて、夫婦共々離せなくなってしまった。今使っているタイプは心電図が測れる。30秒間測って、しっかり心電図パターンは得られるのだが、結局診断されるのは洞調律で、不整脈がないという程度だ。せっかくパターンが取れるのだから、AI を用いてより高度な診断も可能ではないかと思うのだが、アップルとしては間違った診断で問題が起こることを恐れてこの程度でとどめているのだろう。ただ、医者の立場から言えば自宅でプレスクリーニングができればいうことはない。
今日紹介する米国メイヨークリニックからの論文は、Apple Watch の心電図検査を、iPhone を用いてメイヨークリニックのコンピューターに送って、駆出率の異常と左心室収縮異常を発見しようと試みた一種の治験で、11月14日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Prospective evaluation of smartwatchenabled detection of left ventricular dysfunction(スマートウォッチによる左室収縮不全の発見の前向き評価研究)」だ。
研究では、まずアップルウォッチの心電図検査をメイヨークリニックに送り、それを AI 診断するアプリを作成し、呼びかけに応じた約2500人に、6ヶ月の間を区切って少なくとも一回は心電図パターンをアップロードしてもらっている。その後、30日以内にエコー心電図検査を受けてもらって、アップルウォッチによる診断の正確度を確認している。エコーまで受けたのが、最終的に420人余りになっている。
参加したボランティアは平均で54歳、おそらく自分でも心配と思っている人が多く、37%が高血圧と診断されている。そのためか、参加者は平均月2.5回、心電計検査をおこなっている。
さて結果だが、一回のエコーで診断される確率とほぼ同じ確率で、アップルウォッチでも左室駆出力
の異常(40%以下)を検出できている。
結果は以上で、おそらく期待以上の検出率で、アップルウォッチを左室駆出力不全の様な重要な心疾患の早期検出に使える可能性を示している。自分で見ても、心電図としてのパターンはしっかりしているので、数を増やしたり、より安定な方法を推奨したりして、診断率を上げることができる様に思う。
うかうかすると、アップル一人勝ちになるかもしれない。