現在は監視カメラの数が増えたおかげで、目撃による犯人捜しの役割は減ってきたのではと想像する。というのも、目撃者がしばしば当てにならないことは明確で、実際それまで見たこともない顔を覚えることは簡単ではない。
今日紹介する英国バーミンガム大学を中心とする国際共同研究は、目撃者情報の確度を高める小さなトリックについて調べた研究で、10月2日米国アカデミー紀要に掲載された。タイトルは「Enabling witnesses to actively explore faces and reinstate study-test pose during a lineup increases discriminability(目撃者が写真を操作して顔の方向を変化させながら積極的に検証することで、個人特定の率を高めることが出来る)」だ。
刑事ドラマで目撃者に犯人を特定してもらうとき、取り調べの様子を他の部屋から見せるというシーンがよくあるが、この場合犯人へと誘導するバイアスがかかる心配がある。代わりに、何枚かの写真の中に犯人の写真を混ぜて提示し、その中から犯人を特定してもらうことが行われているようだ。
我が国の状況は知らないが、写真の提示方法についてはこれまでも様々な研究があるようで、一枚ずつ順番に提示するのではなく、同時に何枚かを提示して特定してもらうほうが正確なことがわかっているらしい。
この研究では、最近検討が始まった新しい方法、すなわち同時に提示された顔写真の画面を目撃者が自由に操作して顔の方向を変えたりしながら以前目撃した犯人を特定する方法を、これまで主に行われている前向き写真の表示による特定と比較した研究だ。
結果は、モニター上で見る方向を変えたり、自由に他の顔と比べることが出来る提示の方法を使った相互作用型が、前を向いた写真の中から選ぶ方法、あるいは画面に順番に顔写真が出てくる方法を凌駕していることが確認された。
結果はこれだけで、例えばアイトラッキングを組みあわせたり、あるいは脳の活動をモニターすると言った手法は全く取り入れられておらず、少しでも多くの情報を十分時間をかけて与えることが正確な目撃情報につながっていると結論している。
脳科学の裏付けがないとはいえ、犯罪捜査の心理学を科学的に前に進める努力が行われているのに感心した。