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11月20日 リボザイムを用いて大きな遺伝子も分割して細胞導入できる(11月15日 Science 掲載論文)

2024年11月20日
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遺伝子治療にはアデノ随伴ウイルス (AAV) などのベクターが必要なため、詰め込める遺伝子サイズに限界がある。例えば筋ジストロフィー治療に必要な Dystrophin 遺伝子などは大きすぎてベクターが使えない。今日紹介する米国・ロチェスター大学からの論文は、詰め込む遺伝子の方を分断して細胞に導入し、細胞の中で転写された RNA を再結合して大きな遺伝子の導入を可能にする方法の開発で、11月15日号 Science に掲載された。タイトルは「Ribozyme-activated mRNA trans-ligation enables large gene delivery to treat muscular dystrophies(リボザイムにより離れた mRNA の結合を活性化することで大きな遺伝子を導入して筋ジストロフィーを治療できる)」だ。

この研究が目指したのは、大きな遺伝子を半分に分けて別々に RNA に転写させたあと、一本の RNA がスプライシングされるように RNA を再結合させる方法の開発だ。ただ、スプライシングとは異なり別々に転写された RNA を結合する必要がある。

この研究では、一部の特殊な RNA のスプライシングに関わる RtcB 酵素の働きを利用して別々に転写された RNA を一本の RNA にまとめたあと、それぞれに組み込んだスプライス標識を使ってスプライシングさせ、完全なmRNAに仕上げることが可能かにチャレンジした。

そのために、まず別々に転写されたRNAを、スプライスドナー、スプライスアクセプターの二つの標識配列が露出した2本の RNA として並べる必要がある。この目的に、発現させたい遺伝子に転写が起こると自らを切断するリボザイム( RNA でできた酵素)を組み込み、RtcB で切断部位をまとめたあとスプライシングさせ、完全長な mRNA ができるようにしている。

RtcB が発現している細胞なら、全てこの方法で1つの遺伝子を半分に分け、細胞に導入してから細胞の中で一本の完全 mRNA になることを確認し、またこの過程でスプライシングを受けなかった異常タンパク質がほとんどできないこと(リボザイムで切断されると、融合できないと自然に分解される)を確認したあと、大きな遺伝子の代表、DysferlinとDystrophin を AAV ベクターを用いて筋肉に発現させる治療が可能か、マウスで検討している。

いずれの遺伝子の場合も、2つに分けた遺伝子をそれぞれ AAV ベクターに詰めて腹腔注射することで、遺伝子がノックアウトされ病気を発症したマウス筋肉がこのような大きな遺伝子を正確に発現し、機能が回復することを示している。

以上が結果で、大きな遺伝子に限る話だが、一つの遺伝子を2つに分けても、最初から完全な遺伝子を導入した場合と比べ8割程度の効率で遺伝子発現が誘導できているので期待が持てる。Dystrophin 遺伝子の場合は2つに分けても大きすぎるので、機能が確認されるより短いフォームの Dystrophin 遺伝子を用いて治療実験を行っている。しかしひょっとしたらスプライシングのように、数個の部分をつなぎ合わせることもリボザイムを用いると可能になり、導入できる遺伝子の大きさの制限はなくなるかもしれない。

また、この研究ではもう一つの利用法としてこれまで AAVベクターでは導入が難しかった次世代型遺伝子編集技術 Prime-Editor も AAV ベクターで利用でき、作用時間を制限した遺伝子編集が可能になることも示している。このように、ベクターの制限を超える必要のある場合は数多く存在する。

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