4月21日 気になった臨床研究(3月Nature Medicine オンライン掲載論文他)
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4月21日 気になった臨床研究(3月Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2025年4月21日
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気になった臨床研究を3報紹介する。最初の2報はこれまでほとんど疑うことがなかった概念に対するチャレンジで、残りは最近進んでいる新しい糖尿病薬のアルツハイマー病(AD)予防効果に関する論文になる。

まず最初は、オランダ Radboud大学を中心とするグループから3月30日 Nature Medicine にオンライン掲載された論文で、慢性心不全の患者さんは水分制限をすべきかどうかについての観察研究だ。

慢性心不全患者さんの場合、循環血液量が高まると心臓に負担になると単純に考えて水分摂取を制限する。特に利尿剤を処方する場合は薬剤の効果が減じるとされている。ただ、水分制限が腎機能の悪化を招く可能性もあり、本当に水分摂取制限が必要か最近疑問が提出され始めている。

この研究では障害度をそろえた500人の慢性心不全の患者さんをリクルートし、片方は従来通り水摂取を1500ml以下に制限、もう片方は自由に摂取させて3ヶ月後のKCCQ-OSSと呼ばれる生活の質評価を行っている。

結果は、両者に差はなく3ヶ月という短い期間ではあるが、慢性心不全の場合はわざわざ水摂取制限をする必要はないという結論になった。ただ、より高度な心不全の場合は全く別であることは申し添えておく。

次は高齢者の心臓血管障害での死亡率に日々の活動状況はあまり影響ないという論文で、フィンランド ユヴァスキュラ大学のグループが Medicine & Science in Sports and Exercise の4月号に掲載されている。

黄色でマークしたように、この研究はフィンランドで続いている双生児のコホートを使って、遺伝的に一致した条件で、様々な生活環境が様々な死因と関係するかを調べている。17年以上に及ぶ経過をフォローするうち、1195人の参加者が死亡し、そのうち389人の死亡が心臓血管障害による死亡と診断されている。これらの中から、同じ双生児ペアでも、運動など毎日の活動性に差がある人を比べてみると(コホート参加後の調査で、若いときの活動生は含まれない)、高齢になったあとでの身体的活動性はあまり死亡率に影響がなく、遺伝的な要因と、若いときの身体状況でほとんどが決まるという結果だ。高齢になっても適度な運動を私も推薦しているので、気になる結果だ。ただこれはあくまでも死亡率で、筋肉維持や生活の質向上にはやはり適度な運動は重要だと今も思って実践している。

最後は JAMA Neurology に4月7日オンライン発表されたフロリダ大学からの論文で、GLP-1受容体アゴニストやSGLT2阻害剤など、最近糖尿病薬として利用されるようになった薬剤がアルツハイマー病(AD) を予防するという最近の結果を再確認するために行われた研究だ。

この研究では OneFlorida+DataTrust に登録されている1700万人の中から50歳以上の2型糖尿病で治療を受けている人たち51960人を投与薬剤で分別したあと8年間追跡、ADを発症したかどうかを調べている。

結果はこれまでの研究と同じで、GLP-1受容体アゴニスト、SGLIT2阻害剤ともに服用者は、他の薬剤(例えばメトフォルミンなど)の服用者と比べると、ADになるリスクが3−4割低下する。

ただ、さらに服用年齢を65歳以上に絞ってみると、効果は低下し、逆転する場合もある。高齢者の場合ADリスクは痩せていると高まることが知られているので、体重を低下させるこのような治療は高齢者では慎重に行うべしというこれまでの結果を支持している。

いずれにせよ、これらの薬剤がなぜADリスクを減じるのか、正確なメカニズムオ解明が待たれる。

カテゴリ:論文ウォッチ
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