10月8日 アメリカ大陸でのマンモス進化(10月2日Science掲載論文)
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10月8日 アメリカ大陸でのマンモス進化(10月2日Science掲載論文)

2025年10月8日
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以前紹介したことがあるが(https://aasj.jp/news/watch/15022)、マンモスには大きく分けて、我々が一般的にマンモスと呼んでいるケナガマンモス(40万年前から1万年)、ユーラシア草原地帯で120万年から20万年まで生息した ステップマンモス、そしてケナガマンモスがアメリカ大陸に移動して温暖な草原に適応したコロンビアマンモス(40万年から1万年)に分かれる。GPTに絵を描いて貰うとイカのようになる(左からケナガマンモス、ステップマンモス、そしてコロンビアマンモス)。

Screenshot

以前紹介したのが100万年前のステップマンモスゲノム解析で、このおかげでコロンビアマンモスがケナガマンモスとステップマンモスのハイブリッドであることが明らかになった。

今日紹介するメキシコ国立自治大学からの論文は2009年から2022年までメキシコ出土したマンモスの大臼歯を集め、ミトコンドリアゲノムを解読し、コロンビアマンモスのアメリカ大陸での進化過程を検討した研究で10月2日Scienceに掲載された。タイトルは「Columbian mammoth mitogenomes from Mexico uncover the species’ complex evolutionary history(メキシコのコロンビアマンモスのミトコンドリアゲノムは種の複雑な形成過程を示している)」だ。

これまでコロンビアマンモスはほとんど北米大陸で出土したゲノムが解読されてきた。すなわち、この研究の目的はメキシコのコロンビアマンモスもこれまで北米で見つかったのとどこまで同じか明らかにすることだ。そのために、同時代に生きていたケナガマンモス、コロンビアマンモスのミトコンドリアゲノムを比較している。

研究はそれだけなのだが、コロンビアマンモスがケナガとステップマンモスのハイブリッドであることは間違いないが、それぞれ大きく異なっており、ケナガマンモスと比べると、北米の種は北米に移動してきたケナガマンモスと近い。一方、メキシコ出土のコロンビアマンモスは、シベリアに生息しているケナガマンモスに近いことがわかった。

即ち、ステップマンモスと交雑する前のケナガマンモスの多様性がそのままコロンビアマンモスに反映している。しかも交雑してコロンビアマンモスが形成されるのはほぼ同時代と考えられ、アメリカ大陸の温暖な気候への適応として、シベリアで形成されたケナガマンモスの多様性が、アメリカ各地の気候に合わせて選択されていったことになる。

ただ、ミトコンドリアだけでは限界があるので、今後は通常のゲノムを調べて適応要因を明らかにする必要がある。幸い、コロンビアマンモスは氷河期の終わり1万年前まで生きており、ゲノム解析も夢ではない。

カテゴリ:論文ウォッチ
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