我々ホモサピエンスと、ネアンデルタール/デニソーワ系統は65万年前後に分岐し、ネアンデルタール系統はユーラシアに展開し、ホモサピエンスは10万年ぐらい前まで、現代のイスラエルを中心に北アフリカに分布したと考えられている。即ち、共通祖先が生まれた後、北アフリカで進化したのがホモサピエンス、共通祖先がユーラシア、おそらくスペインあたりで進化したのがネアンデルタールだと考えられている。特に、モロッコから30万年前のホモサピエンスの骨が見つかり、この考え方が強く支持されている。
今日紹介するフランスのコレージュフランスからの論文は、やはりモロッコから発見された77万年前の骨が、ホモサピエンスとネアンデルタールの分岐点に近い特徴を有していることを示した研究で、1月7日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Early hominins from Morocco basal to the Homo sapiens lineage(モロッコで発見された初期ヒト属の骨はホモサピエンス系統の基部にあたる)」だ。
責任著者の一人 Hublin はモロッコで最古のホモサピエンスの骨を発見した研究者で、このホモサピエンスにつながる先祖の骨を探していたところ、250kmほどはなれた Thomas Quarry I から発掘されていたヒト属の下顎、歯、脊椎の骨に着目した。
発掘される石器からこのヒト属 (TQI) はアシューリアン文化、即ち直立原人の仲間に属しており、また石器の磁気の配向から Matsuyama-Brunhes 反転時期に近いことが明らかになり、75万年前、即ちネアンデルタール系統とホモサピエンス系統が分岐した時点に近いヒト属の骨であることがわかった。
そこで、下顎、そして最も異なるヒト属の特徴を反映する歯について、数量形態学を用いて様々なヒト属と比較し、期待通り TQI がネアンデルタール系統とホモサピエンス系統から少し離れたしかしエレクトスなどの直立原人からは離れた特徴を持つまさに両者の共通祖先と行っても良い形態をとっていることを発見する。
比較に用いた指標から、ネアンデルタールに近かったり、ホモサピエンスに近かったりしているが、スペインで発見されたホモ・アンテッサーと比べると、ネアンデルタールとは少し離れていることから、よりホモサピエンス系統の先祖に近いホモエレクトスから進化してきたヒト属の系統だと結論している。これまで、アシューリアン文化を持つヒト属はユーラシアだけでなく、アフリカでも発見されるようになっているが、北アフリカでは TQI が最初に見つかったヒト属のようだ。
以上が結果で、Hublin が発見していた最古のホモサピエンスの近くで、ユーラシアのホモ・アンテッサーに近いヒト属の骨が見つかったことから、ホモサピエンス系統とヒト属の共通祖先に近いと考えられ、ネアンデルタールとホモサピエンスの進化過程を調べる上で、モロッコとジブラルタル海峡を挟んだスペインの重要性を示す重要な貢献だと思う。今年も人類進化を探る論文を紹介する機会が多いと思うが、さてどんな驚きが待っているのか楽しみだ。
