神経細胞は身体の隅々にまで張り巡らされており、筋肉や腱に投射する神経は身体の動きを脳に伝える深部感覚として、触覚や痛覚とともに重要な体性感覚を形作っている。
今日紹介するジョンズホプキンス大学からの論文は、体性感覚を構成する後根感覚神経の中には直接骨に投射している神経があり、骨の痛覚や機械刺激感覚に関わるとともに骨の再生に重要な役割を演じていることを示した研究で、1月8日号 Science に掲載された。タイトルは「Mapping somatosensory afferent circuitry to bone identifies neurotrophic signals required for fracture healing(求心性体性感覚回路の骨への投射を特定することで、骨折後の治癒に関わる神経シグナルが特定された)」だ。
この研究ではまず骨に投射している神経を逆行的にラベルする方法を用いて、後根神経の一部が骨に直接投射することを確認した後、ラベルされた感覚神経を single cell 遺伝子発現解析を行い、骨に投射する神経を特定するとともに、特徴的な遺伝子発現セットを明らかにしている。
遺伝子発現から、カルシトニン関連ペプチドを発現し、低閾値の機械受容体を備えたミエリンでシールドされないCファイバー型神経であると特定できる。面白いのは、このような感覚神経の特徴だけでなく、FGF、Wnt、BMPといった増殖分化に関わる遺伝子を発現していることで、このパターンから神経や骨の修復にも関わるのではと着想している。
そこで、マウスの大腿骨に投射している神経をラベルしたあと骨折させ、その後の神経内での転写を調べている。大変美しい結果で、骨折後1日目、14日目、56日目とそれぞれの段階で誘導される遺伝子を特定することに成功している。例えば炎症と相関する分子は骨折後すぐに神経でも誘導される。一方、再生に関わるような Shh や FGF 等は14日目に強く発現している。即ち、骨折後の治癒過程に合わせて神経細胞も変化している。
そこで骨に投射する神経を外科的に切断して骨折させると、骨折部位に出来るカルス内の細胞の増殖が抑制され、修復過程が強く抑制される。この時にカルスを形成している間質細胞と神経細胞の相互作用に関わる分子を探索し、最終的に神経から分泌される FGF9 が修復に関わる可能性を突き止めている。
最後に、後根神経にアデノ随伴ウイルスベクターを注射する系で神経細胞のFGF9をノックアウトする実験を行い、神経切除を行ったのと同じように、骨の修復が抑制されることを確認している。
結果は以上で、ノックアウト実験も量的な変化にとどまりはするが、骨にまで神経が張り巡らされており、組織の修復に関わっていることがわかる。イモリの四肢再生での神経系の役割はよく研究されているが、我々でも同じような機能が違った形で備わっていることは面白い。
