Caspase Recruitment Domain containing protein (CARD9)は、マクロファージや樹状細胞で発現している分子で、BCL10, MALT1と呼ばれる分子とともに大きな重合体を形成して炎症を誘導する重要な調節因子だ。これが欠損すると、真菌に対する免疫が低下する。面白いのは、極めて希なCARD9遺伝子の変異がΔ11が一本の染色体に存在すると、真菌に対する抵抗性はあまり低下しないが、クローン病のリスクが強く抑えられる事がわかっている。
今日紹介するハーバード大学からの論文はCARD9の機能をΔ11型に調節してクローン病を治療する薬剤を開発する研究で1月16日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「Human genetics guides the discovery of CARD9 inhibitors with anti-inflammatory activity(ヒト遺伝学カラントを得た抗炎症効果を示すCARD9阻害剤)」だ。
ハーバード大学と書いたが、この研究もまたXavier研からで、1月13日に炎症性腸炎の線維化目かイズムについての研究を紹介したばかりだ(https://aasj.jp/news/watch/28136)。ただ、今日紹介する論文は、これまでのXavier研の領域が創薬領域まで大きく拡大したことを示す画期的な論文だと思う。
CARD9の機能は良く研究されており、おそらく阻害剤開発も行われていると思うが、Xavierさんたちはこの分子が大きな複合物形成のスキャフォールドになっていることから、これを阻害する化合物を最初から狙わず、まずCARD9 分子に潜り込んで結合する化合物を特定している。このような割り切りが最初から合ったのか、それとも阻害化合物を最初のスクリーニングで得るのが難しかったから戦略をかえたのかはわからないが、最初の化合物スクリーニングでCARD9に結合する化合物が特定された。
こうして得られた化合物1(C1)とCARD9との結合をX線結晶解析などを含む様々な方法で解析し、結合部位がCC-1と呼ばれるCARD9の機能部位であることを確認し、この化合物の結合を変化させる第二の化合物のスクリーニングを行っている。(第一、第二のスクリーニングともに新しい創薬方法を用いたプロの仕事で感心する)。
その結果、CARD9のC1-C2領域に結合し、C1と競合的ではないが、結合により分子構造を変化させてC1の結合を阻害する化合物6(C6)を特定している。生化学的、構造学的解析から、C6はCARD9と結合して、一種の糊のように働いて分子構造を安定化することで、リン酸化されてBCL10と結合して複合物のスキャフォールドとして働く機能が失われることを明らかにする。
あとは、試験管内の実験系でCARD9経路を活性化しても、この化合物が存在するとNFkBの活性化が見られず炎症性サイトカインが分泌できないこと、そしてわざわざヒト型のCARD9に変えたマウスモデルを作成して、カンジダを腹腔に注射したとき、C6が炎症を見事に抑えられる事を明らかにしている。
かなりすっ飛ばして短く解説したが、結果が素晴らしいと言うだけでなく、それに至る創薬過程は圧巻の力量を感じさせる。消化管免疫、細菌叢、さらに創薬にまで研究が広がっているのを見るとこれからも世界の消化管免疫をリードすることを確信する。今回開発された化合物は、さらに改良が加えられて、クローン病の特効薬として世に出るのではないだろうか。
