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6月1日:難治性てんかんに対するカンナビジオール治験(5月25日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2017年6月1日
    大麻がガンや多発性硬化症の痛みや、難治性てんかんの発作を抑える効果があることは医学的に確認され、現在医療用の大麻使用を認める国は多い。しかし、私が元医者だったからかもしれないが、難治性てんかん患者さんの多くを占める子供のことを考えると、大麻そのものより、大麻から抽出した有効成分のほうがずっと使いやすいと思う。事実何十種類も存在する大麻のカンナビノイドの中で比較的構成比率の高いカンナビジオールをキーワードにアメリカ政府治験登録サイトを調べてみるとなんと123種類のトライアルが進んでいることがわかり、大麻を医療現場に使いやすくするための試みが進んでるのがよくわかる。
   今日紹介するニューヨーク大学を中心とする研究グループの論文はこのカンナビジオールをてんかんの中でも最も難治性で有名なDravet症候群の発作抑制に使えるかどうか調べた治験研究で5月25日号のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Trial of Cannabidiol for drug-resistant seizures in the Dravet synderome(Dravet症候群の薬剤耐性てんかん発作に対するカンナビジオール治験)」だ。
Dravet症候群とはナトリウムチャンネル分子SCN1Aの変異が原因で、痙攣を繰り返すとともに、精神運動発達障害が進行する病気で、てんかん発作は現在利用できる薬剤を組み合わせても治療が難しい。この治験では214人のDravet症候群患者さんをリクルートし、まず4週間の観察を行う。その後、無作為化して半分はカンナビジオール、残りは偽薬を投与するが、その間これまで行ってきたてんかん発作に対する治療は続ける。1日2回の経口投与を2週間続け、その後徐々に投与量を減らして10日目に投与を止め他後、長期の観察を行っている。
   結果の評価だが、4週間の観察期間と比べ、カンナビジオール投与で発作が減ったかどうか、および介護をしている人の印象を数値化した指標で行っている。
   全体で12人が治験を終了することができなかったが、投与群でも85%が終了できている。結果は期待通りで、観察期間の発作数が1月平均12.4回だったのが、なんと5.9回と半分以下に減少し、全く発作がなくなった患者さんも3人いた。偽薬群では発作が14.9から14.1回に減っただけで、もちろん発作が消えた患者さんはいない。また、介護をしている人の62%が症状がよくなったという印象を持っている。
   最後に副作用だが、93%の患者さんで何らかの副作用が見られている。症状は、嘔吐、倦怠感、発熱、上気道感染、食欲減退など様々だが、その結果8人が治験を途中でやめている。深刻な症状の中でも多いのが、睡眠傾向だが、投与量を減らすことで対応できる。
   結果は以上で、発作を減らすという点で期待どおりカンナビジオールが有効であることが確認されたが、副作用も覚悟する必要があり、今後他の薬剤との組み合わせを含め、長期かつ安全に効果を得るための投与法開発が必要という結論だ。様々な遺伝性神経疾患のうちてんかん発作が一番家族を困らせる症状であることを考えると、早期にプロトコルを完成させてほしい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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