これまで田舎から都会までフィンランドには全部で4回ぐらい行ったと思うが、真面目な人が多い印象を持った。事実学童の学力国際比較で常にトップの座にあるのは、教育システムだけでなく、フィンランド国民の真面目な性格も寄与しているのではないだろうか、今日紹介するフィンランド・スウェーデン合同チームからの論文はこれまで言われて来た認知症対策を全て真面目にこなせば、認知症が予防できるか確かめた研究で、3月12日号のアメリカ医師会雑誌に掲載された。タイトルは「A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people(FINGER) (食事、運動、認知トレーニング、血管リスク検査を組み合わせた複数の要因を介入することで高齢者の認知機能低下を防げるか(FINGERプロジェクト))だ。研究では2009年から2011までの2年間、すでに行われていたフィンランドの調査研究に参加して認知症の指標が少し高いと診断された60歳から77歳までの1260人が集められ、生活改善プログラムを指導に基づいて2年続けるグループと、看護師さんから様々な情報をもらうが、後は自宅で自由に努力するだけのグループについて、様々な認知機能テストの成績を比べている。どこにでもあるような研究だが、このプログラムに基づく指導が半端ではない。まず介入群に選ばれると、グループセッションで生活習慣を変えることの重要性の講義を受け、国の定めた詳細な食事指導要領に基づき体重の5−10%低下を目標とする食生活を続けることになる。次に運動だが、1−3回/週のジムによるトレーナーの指導、個人、及びグループのエアロビックスセッションが提供される。実際、副作用の記述で目を引いたのが筋肉痛で、半端なプログラムではないことがわかる。そして家に帰ると、コンピュータによる脳トレーニングが待っている。さらに、定期的にグループセッションが行われ、社会との接触を高めるよう促している。最後に、年に3回、BMIや血管系の検査受け、健康指導を続けている。驚くのは、このプログラムに参加した631人のうち、544人が対象として残ったことだ。本当にフィンランドの人たちは真面目だと思う。ここまでして、効果がなかったとは言えるはずはない。結果は期待通りで、実行力や問題を処理するスピードの低下は確実に防げている。ただ、記憶については大きな差はなく、ある程度年のせいと諦めたほうがいいかもしれない。私の経験で言えば、記憶自体はモバイルやパソコンでいくらでも埋め合わせが聞く。全般的には、上出来の結果と言っていいだろう。ただ読み終わって考えると、このプログラムだと、それを毎日こなすこと自体が大変な仕事になるように思える。健康になることを仕事としてこなす発想の転換が重要であることを示した結果だと思う。これも真面目なフィンランドの人だからこそできるのかもしれない。さらに、年金や福祉がしっかりしていないとこんなことは不可能だ。実際我が国でも可能か調べてみたいところだ。いずれにせよ、健康な生活を心がければ、認知症も防げる可能性があることは確かだ。
3月19日:頑張れば効果はすぐ出る(3月12日号アメリカ医師会雑誌掲載論文)
2015年3月19日
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