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2月17日:古生態ゲノム学(2月13日号米国アカデミー紀要掲載論文)

2018年2月17日
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生態学にゲノムテクノロジーが導入され、大きな進展を見せている。例えば、川の水を調べればどんな魚や昆虫、あるいは藻類がどの程度生息しているのか推定できるようになった。このブログで何度も紹介している腸内細菌叢も、考えてみれば一種の生態学と言える。

この生態学で最近最も用いられている方法がメタバーコーディングと言われる方法で、DNAをユニバーサルプライマーで増幅した後、次世代シークエンサーで配列決定し、特定のバーコードを指標に存在している生物の個体数を推定する方法だ。

今日紹介するオーストラリア・アデレード大学を中心とする国際チームの論文はこのメタバーコーディングを鳥の糞が集まった糞石の解析に応用して、絶滅したモアの生態を調べようとする面白い研究で2月13日号の米国アカデミー紀要に掲載された。タイトルは「Coprolites reveal ecological interactions lost with the extinction of New Zealand birds(糞石は絶滅したニュージーランド固有種とともに失われた生態系の相互作用を明らかにする)」だ。

ニュージーランドには現在も飛ばないキウイが存在するが、かっては体重250Kg、体高3mの大きな鳥モアが生息していた。しかし入植が進んだ後、13世紀より急速に個体数が減り、絶滅している。ただ骨は採集されており、最近ゲノム解析も報告されている。

この研究の目的は、モアの食生活、さらには腸に住む寄生虫などを調べ、いつか絶滅の原因を明らかすることだが、このために著者らが注目したのがモアが残した糞が化石化した糞石だ。この目的で、ニュージーランドの様々な場所から、ジャイアントモア、little bush moa, upland moa,heavy footed moa, kakpoなどが生息していた地域から糞石を集め、糞石からDNAを抽出してメタバーコーディングで糞の中に見られる植物、きのこ、寄生虫を特定している。

最も重要な結論は、糞石から様々なことがわかり、今後「古生態ゲノム学」の材料として役に立つことが明らかになったことだろう。

あとは、モアの種によって食生活がかなり多様化していたこと、またキノコ類は生息地域により食べたり食べなかったりだということがわかった。他にも、様々なことが推察されているが、モアが絶滅した理由を食生活の観点から明らかにするには至っていない。

寄生虫については、種による差より、地域差が大きいようで、同じ川の水を飲むことで感染したことなどが推定されている。このことは、川の近くでは様々なモアが共存していたことを意味しており、古生態ゲノム学の有用性を示している。また、ホストが絶滅すると同時に寄生虫も絶滅する場合は、寄生虫側でのホストに合わせた適応に関わるゲノム背景を調べることもできるかもしれない。

要するに、残されたものにDNAが残っておれば、過去を知るための最も重要な材料となること、そして私たちの大便も生態を「代弁」してくれていることがわかった。

アデレード大学には、古代のDNAを調べる施設があり、人類学分野で優れた論文を発表しているが、」生態学、古生態学、そして古生態ゲノム学、など楽しい学問を、オーストラリアではしっかり支えていることがよくわかった。
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