今日紹介するエール大学からの論文は、この引き金が細菌に発現するRNA結合タンパク質Ro60ではないかと検討した研究で、3月28日にScience Translational Medicineにオンライン掲載された。タイトルは「Commensal orthologs of the human autoantigen R060 as triggers of autoimmuneity in lupus(人間のRo60に対応する常在細菌の相同分子はSLEの自己免疫の引き金になる)」だ。
Ro60はRNA結合タンパク質で、病原体やトランスポゾン由来を始めとするノンコーディングRNAの検出に何らかの役割を果たしているのではと考えられている。このタンパク質に対する自己抗体が、SLEの半数、亜急性SLEの90%、シェーグレン病の80%に見られることから、Ro60は病気の引き金として疑われてきた。
Ro60はほとんどの生物に保存されていることから、この研究では常在細菌のRo60が免疫の引き金になっていると着想し、3種類の細菌のRo60がヒトのRo60抗原ペプチドとほぼ同じペプチドを持っていること、SLEの患者さんではこの3種類のうちいずれかが、常在菌として存在していることを見出している。
あとは患者さんの血中の自己のRo60反応性のT細胞が細菌由来のRo60と反応すること、また自己抗体も細菌のRo60と反応することを示した後、無菌マウスにこれらの細菌を移植することで、自己反応性のT,B細胞が誘導されることを示している。
以上から、著者らはRo60が引き金になる可能性を強調しているが、因果性という点ではまだまだはっきりしない。というのも、自己免疫病が誘導された免疫システムを移植し直して、病気が起こるかどうかを調べないと100点の答案にはならない。実際、Ro60 ノックアウトマウスでは自己免疫病が起こるが、これはRo60の作用が失われ、異常RNAが自然免疫を刺激して、炎症が起こるからだと考えられている。とすると、Ro60に対する抗体は、一種の2次産物と言え、引き金ではない。その意味で、不完全という印象が否めない論文だが、根治のためには、このような地道な研究の繰り返しが重要だと思う。
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