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4月8日:SLEは常在細菌刺激により始まるのか?(3月28日Science Translational Medicineオンライン掲載論文)

2018年4月8日
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SLEは全身性の自己免疫病で、私が医学部を卒業して以来、病気を管理するという点では一貫して改善してきていると思う。しかし、残念ながら多くの自己免疫疾患と同じで、根本的な治療についてははっきり言ってまだ先が見えないと言ってもいい。一つの原因は、なぜこのような全身性の自己免疫性の炎症が誘導されてしまうのか、未だにはっきりした答えがない点にある。ただ、かなり前から、ウイルスや細菌に対する免疫反応が病気の引き金になる可能性が議論されてきた。

今日紹介するエール大学からの論文は、この引き金が細菌に発現するRNA結合タンパク質Ro60ではないかと検討した研究で、3月28日にScience Translational Medicineにオンライン掲載された。タイトルは「Commensal orthologs of the human autoantigen R060 as triggers of autoimmuneity in lupus(人間のRo60に対応する常在細菌の相同分子はSLEの自己免疫の引き金になる)」だ。

Ro60はRNA結合タンパク質で、病原体やトランスポゾン由来を始めとするノンコーディングRNAの検出に何らかの役割を果たしているのではと考えられている。このタンパク質に対する自己抗体が、SLEの半数、亜急性SLEの90%、シェーグレン病の80%に見られることから、Ro60は病気の引き金として疑われてきた。

Ro60はほとんどの生物に保存されていることから、この研究では常在細菌のRo60が免疫の引き金になっていると着想し、3種類の細菌のRo60がヒトのRo60抗原ペプチドとほぼ同じペプチドを持っていること、SLEの患者さんではこの3種類のうちいずれかが、常在菌として存在していることを見出している。

あとは患者さんの血中の自己のRo60反応性のT細胞が細菌由来のRo60と反応すること、また自己抗体も細菌のRo60と反応することを示した後、無菌マウスにこれらの細菌を移植することで、自己反応性のT,B細胞が誘導されることを示している。

以上から、著者らはRo60が引き金になる可能性を強調しているが、因果性という点ではまだまだはっきりしない。というのも、自己免疫病が誘導された免疫システムを移植し直して、病気が起こるかどうかを調べないと100点の答案にはならない。実際、Ro60 ノックアウトマウスでは自己免疫病が起こるが、これはRo60の作用が失われ、異常RNAが自然免疫を刺激して、炎症が起こるからだと考えられている。とすると、Ro60に対する抗体は、一種の2次産物と言え、引き金ではない。その意味で、不完全という印象が否めない論文だが、根治のためには、このような地道な研究の繰り返しが重要だと思う。
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