2019年3月14日
ついにわが国でもCD19陽性の白血病に対するCAR-T治療が認可された。日本へ導入される過程で、不思議な縁があったため、感慨も深い。また、川真田センター長が見事に運営している神戸先端医療財団のCell Processing Centerが日本でのCAR-T供給基地になったことを聞いて、現役の頃神戸市と準備に奔走したことも思い出され、さらに感慨が深まっている。もちろん、CAR-Tの治療効果を示した治験論文が出た時の驚きがこれらすべての思い出の中心にある。
CAR-Tの魅力は、がんに対する免疫の最初から最後まで、極めて単純な戦略で全てカバーできている点だ。CD19を発現しておれば全てのガンはもれなく殺すことができる。逆に、この治療の最大の問題点は、CD19がガン細胞だけでなく正常B細胞にも発現しているため、ガンとともに正常B細胞も体から消えてしまう点だ。個人的には、この副作用を見て、この治療がガンを根治させることを実感したぐらいだ。
今日紹介するテネシー大学微生物教室からの論文は、ガン治療では副作用と考えられるCD19陽性B細胞除去能力を、なんと全身性の自己免疫病SLEの治療に使えないかしらべた全臨床研究で、なるほど同じ治療が最も論理的なSLE治療につながる可能性がよくわかった。タイトルは「Sustained B cell depletion by CD19-targeted CAR T cells is a highly effective treatment for murine lupus(CD19を標的とするCAR-T細胞による持続的B細胞除去はマウスSLEモデルの治療に極めて有効)」だ。
現在、CD20に対する抗体治療が一部の白血病と自己免疫病の治療に使われているが、SLEには効果が出にくいことが知られていた。そこで研究は、SLEのモデルとしてNZWマウス、あるいはMRLマウスを用い、抗体の代わりに、CD19を標的とするCAR-TでこのマウスのCD19細胞を除去して病気が治るかを調べた前臨床研究だ。白血病治療に大成功を収めているのだから、すぐに臨床研究に行っても良さそうだが、CAR-Tでは自己のT細胞を用いることから、SLEのような慢性疾患のT細胞が本当に機能するかどうかを確かめることが、この研究の最初の目的になる。
案ずるより産むが易しで、NZBマウスもMRLマウスも、CAR-T注入で見事にB細胞は完全に消失する。これに合わせて、抗DNAは11週からほぼ完璧に抑えることができる。ただ、面白いのは血清中の免疫グロブリン濃度は確かに低下しているが、それでもCAR-T治療18週目でも残存している。
そして何よりも、マウスの生存曲線を見ると、どちらのモデルでも大体6−7割のマウスが長期生存することが可能になっている。また、症状面でも尿にタンパク質は全く検出されなくなり、脾臓肥大が治り、腎臓や皮膚の病理像が大幅に改善する。すなわち、自己免疫が起こっているマウスのT細胞でもCAR-Tとして使うことができ、SLEの症状を長期間抑えることができることが明らかになった。
この研究では、B 細胞を除去できたのになぜ`免疫グロブリンが残存するのか調べる目的で、CAR―T投与による他の細胞や分子マーカーへの影響を調べている。すると、どの組織でもB細胞はほとんど検出できないのに、不思議なことに記憶T細胞の割合が大きく上昇していることを見出している。ただ残念ながら、なぜこれが起こるのかは説明されていないように思う。
話は以上で、自己免疫疾患なら、免疫系を潰せば病気は治せるという、極めて当たり前のことを粛々とやって見せたのが全てだ。このデータを見れば、おそらく人間でもすぐに治験に入れると思う。とはいえ、効果が分かっているとはいえ、B細胞は骨髄中で作り続けられ、そのB細胞をCAR-Tが殺し続けるというサイクルが体に組み込まれてもいいと踏ん切るのは簡単ではないような気がするが、それは病気の苦しみがわかっていない人間のたわごとかもしれない。
2019年3月13日
神経細胞は大人になると全く増殖しないと考えらていた。しかし、試験管内で細胞を増殖させるための知識が集まり、神経細胞を培養してみると、成人の脳にも増殖能のある神経幹細胞が存在することは広く認められるようになった。その後、スウェーデンのJonas Frissenらのグループが、人間の細胞の増殖の痕跡を脳内に取り込まれた原爆実験時に発生したアイソトープを使って調べるという、驚くべき方法で調べ、正常状態で成人になっても神経幹細胞が増殖しているという証拠を提出した。とはいえ、幹細胞の増殖は老化とともに低下し、脳が傷ついてもそれを修復するだけの細胞を生産できないこともわかっていた。
今日紹介するドイツ・ハイデルベルグ・ドイツガンセンターからの論文は、マウスとはいえ、なぜ老化マウスの幹細胞がうまく働かないのかを明らかにした論文で3月7日号のCellに掲載された。タイトルは「Quiescence Modulates Stem Cell Maintenance and Regenerative Capacity in the Aging Brain(静止状態が老化した脳の幹細胞の維持と再生能力を変化させている)」だ。
この研究では、若いマウスと、老化マウスの脳内の幹細胞の増殖動態を調べ、老化マウスの幹細胞も増殖能は持っているものの、静止期から抜け出すのに時間がかかるため、結局必要な細胞数を産生出来ないことを確認する。そして、神経幹細胞を試験管内で培養すると、若いマウス由来の幹細胞も、老化マウス由来の幹細胞も同じように増殖できることを確認している。そこで、昨日も紹介したsingle cell trascriptome方法を用いて両者の遺伝子発現を比べ、個々の細胞の発現遺伝子は増殖に関わるものも含めて、年齢でほとんど差がないことを明らかにする。
次に、老化マウスの幹細胞が静止期から抜け出しにくい理由を調べる目的で、幹細胞のニッチを作っているsubventicular zoneに存在する細胞の遺伝子発現プロファイルを調べ、インターフェロンにより誘導される炎症反応に関わる遺伝子が幹細胞のニッチで上昇していることを発見する。事実幹細胞をインターフェロンαとβで処理すると、増殖が抑えられる。そして、インターフェロン遺伝子がノックアウトされたマウスでは幹細胞の数が上昇していることを見出している。さらに、インターフェロンにより誘導されるケモカインCXCL10に対する中和抗体を脳内にミニポンプで投与し、幹細胞の増殖を調べると増殖細胞が上昇し、静止期の細胞数が低下することがわかり、インターフェロンやケモカインがニッチによる静止期細胞の維持に重要な働きをしている事を明らかにしている。
最後に、コンピュータによりニッチに関わる分子を探索して、Wntシグナル阻害分子FRP5を発見している。神経幹細胞のみならず、多くの幹細胞の増殖に必須の分子であることがわかっているWntによって誘発されるシグナルはcanonical とnon-canonical 経路に分けることができるが、canonical経路は老化マウスの幹細胞の方が上昇していることがわかった。このことから、著者らはFRP5がWntのnon-canonical 経路を抑制して幹細胞を静止期に留めており、この結果canonical経路が代償的に高まっていると考えている。そこで、同じようにFRP5に対する抗体をポンプで脳に投与し、静止期の幹細胞数が大幅に減少し、強い増殖が見られることを確認している。
話は以上で、老化マウスでは搦め手からのWnt抑制因子と、炎症により幹細胞の増殖が止められているという結論になる。幹細胞増殖シグナルおよびニッチによる静止期の維持についてはこれまでも多くの論文が発表されてきた。この研究は老化に絞って、幹細胞の静止期誘導を扱ったという意味では独特で、今回示された方法が、例えば卒中など細胞の急性障害が起こった時などに効果が認められれば、重要な貢献になるだろう。とはいえ、人でも同じことが起こっていると考えるためには、まだまだ研究が必要だろう。
2019年3月12日
バーコード技術を用いた単一細胞レベルの遺伝子発現検出方法の開発は、発生学や癌研究分野を中心に、大きな変革の力になっていることを繰り返し、繰り返し紹介してきた。実際、昨年の雑誌サイエンスが選んだ今年のブレークスルーの中でも、この技術は最も大きくとりあげられていた(Science 362:1344, 2018)。この技術では組織の中に統合されていた細胞をバラバラに分離して、各細胞の性質を明確にし、組織レベル、集団レベルの知識と対応できるようにした点が大きく、いわば社会に属する個人を精査して、社会の構造を理解することに似ている。したがって、いかに正常の性質を保ったまま細胞をバラバラに分離できるかが重要なポイントになる。
この意味で、単一細胞の分離が簡単な白血病では研究が進んでいるのではと思うが、実際にはそうではない。というのも、白血病の場合、慢性骨髄性白血病のようなケースは別にして、白血病のマーカーとして使うCD34細胞を純化して調べたとしても、正常細胞と白血病細胞が混在してしまっており、調べている細胞が100%白血病であることを確信することが難しかった。
今日紹介するハーバード大学からの論文は、single cell transcriptome検査に加えて、ゲノム遺伝子の変異を同じバーコードをつけた同じRNAから特定する方法を開発して、白血病細胞のゲノム遺伝子変異と遺伝子発現を単一細胞レベルで調べられるようにした点が売りになっている。具体的には、今回対象にした患者さん16人のゲノム変異から起こりうる変異に対応するmRNAを網羅的に集めて、一般的なshort readだけでなく、ナノポアシステムを使ったlong readも組み合わせ、個々の細胞のゲノム遺伝子変異をできるだけ詳しく調べられるようにしている。これにより、白血病細胞特異的に遺伝子発現を調べることができるだけでなく、ゲノムの突然変異と遺伝子発現との相関を調べることができる。
さて結果だが、個人的に面白いと思った点をまとめてみた。
- まず正常骨髄のCD34陽性細胞のsingle cell transcriptomeを行なって、血液幹細胞からそれぞれの系列への分化の道筋をsingle cellのプロファイルから再構成している。こうして示された経路を見ると、赤血球、B細胞、白血球が骨髄中の幹細胞に直接連結しているように見える一方、T細胞やNK細胞が全く独立した系列として見える点で、ここでもT細胞とB細胞になるリンパ性の幹細胞の存在はあまり支持できないようだ。
- こうして得られるデータセットを用いて機械学習を行わせることで、白血病と正常細胞を区別することができるようになった。
- 正常骨髄のプロファイルと、白血病細胞のプロファイルをオーバーラップさせてみると、それぞれのAML患者さんの白血病細胞は未分化から分化細胞まで極めて多様性に富む。また、患者さん同士でもプロファイルは大きく異なる。
- この違いの多くは、ゲノムの変異の違いで説明することができる。7種類のサブタイプを定義できるが、それぞれでゲノム変化と、遺伝子発現の変化は一致している。
- AMLの中に、未分化細胞と、分化細胞が同時に増殖する症例があるが、この2種類のサブタイプの違いがFLT3遺伝子の変異の種類が違うことに起因していることがわかった。この症例の場合、FLT3-A680V変異にFLT3-ITD(internal tandem duplication)を持つ細胞は未分化なまま増殖し、FLT3-N841K変異を持つと分化した細胞が増殖している。すなわち、FLT3はただ細胞の増殖を支えるだけでなく、白血病細胞の分化にも大きな影響がある。
- 白血病になると、正常では完全に分離していたプログラム、例えば未熟幹細胞と、顆粒球マクロファージ前駆細胞のプログラムの両方が同じ細胞に発現されるようになる。
- 未熟幹細胞と同じ遺伝子を発現している白血病ほど予後が悪い。
- そして何よりも面白かったのは、分化したタイプの細胞が増殖するAMLでは、分化した単球が発現するサイトカインによってエフェクターT細胞が強く抑制されている。AMLも免疫から逃れるシステムを独自で開発している。
などだ。改めて、single cell transcriptomeの力を認識した。比較的近い未来に、これが普通の検査になる日もくるのではないかと思えてきた。
2019年3月11日
今我が国では外国で麻疹に感染した患者さんが、帰国した後、発病までに多くの人と接触し、新たな患者を発生させていることが社会問題になっている。今年大阪、三重を中心にすでに250人をこす患者さんの発生が確認されており、この10年で最も多かった2014年全体で462人だったことを考えると、これを上回ることは間違いない。麻疹は感染力が強く、当然と言ってしまえばそれまでなのだが、麻疹感染を国内だけで考えられなくなり、グローバルなレベルで対策を練る必要があるのは間違いない。
麻疹に関しては外国で感染するという問題だけでなく、先進国で今最大の問題は麻疹に対する免疫を持たない集団の増加で、この最大の理由は子供のワクチン接種数が低下していることだ。ワクチンは、個人を感染症から守るだけではなく、集団や弱者を守る公衆衛生上の意義も大きい。麻疹ワクチンについては長い歴史があり、その間改良も重ねられ、その効果は医学的に何度も確認されている。先週にも、デンマークから麻疹、おたふく風邪、風疹の3種混合ワクチンと自閉症に関する500万人という大規模調査が行われ、自閉症の発症率はワクチン接種を受けていない人たちのほうが多いことが示された(Annals of internal Medicine: doi:10.7326/M18-2101)。にもかかわらずワクチンを拒否する人の数が増えているのは、感染の脅威が減ったこともあるが、反ワクチンキャンペーンを支持する人が増えたからだと思う。
これまでも、ワクチン拒否の理由について多くの調査が行われてきた。ただ、特定の政治的ポジションと、ワクチン拒否との相関を調べた研究はなかった。今日紹介するロンドン・クイーンメリー大学からの論文は、現在ヨーロッパで拡大しつつあるポピュリズムの運動と、ワクチン拒否の間に何か共通のメンタリティーがあるのではないかと着想し、ヨーロッパ各国でこの可能性を調べた論文で、European Journal of Public Health のオンライン版に掲載された。タイトルは「Populist politics and vaccine hesitancy in Western Europe: an
analysis of national-level data(西ヨーロッパで見られるポピュリズム政治とワクチン摂取の躊躇)」だ。
研究では各国でポピュリズム として位置づけられている政党をまず選んでいる。ポピュリズムとはイデオロギー的立場ではなく、資本、国家、市民のあり方について先進国共通に確立してきた体制にNoを突きつけた、反エスタブリッシュメントと呼べる立場だ。例えばドイツでは、左派党とドイツのための選択肢の左右両党が対象に選ばれており、反エスタブリッシュメントが右左関係なく選んでいる。有名なところでは、イタリアの五つ星運動、フランスの国民連合、英国のイギリス独立党などだ。
次に西ヨーロッパ各国で男女500人づつ無作為に選び、ポピュリズム政党に投票するかどうか、そしてワクチンについての考えを聞いて、今回の統計に用いている。ワクチンについては、1)ワクチンは重要だと思うか、2)ワクチンは有効だと思うか、そして3)ワクチンは安全だと思うか、の3つの質問を聞いている。そして、Noと答えた割合と、ポピュリズム政党に投票すると答えた割合をプロットして図示している。
結果だが、ワクチンは安全でないとする意見は、国によって大きくばらつく傾向にあるがいずれの質問でもワクチンに対して反対の意思表明をした人と、ポピュリズム政党に投票すると答えた人の割合は、ほとんど完璧な相関を示すことがわかった。
以上の結果は、ポピュリズムと反ワクチンには共通のメンタリティーが存在していることを示唆している。ここで選ばれた政党は政治的には左派、中道、右派と様々なので、結局何かの政治信条と言うより、ポピュリズムの一つの背景になっている反エスタブリッシュメントと反ワクチンとに何らかの共通性があることを示唆している。
ただ難しいのは両者の関係が成立する理由が簡単に決められない点だ。例えば、麻疹ワクチンが自閉症の原因であると言う世紀の捏造論文をThe Lancetに発表したWakefieldは、現在米国の反ワクチン運動のシンボルとして担がれており、トランプと会見して支持を表明している。当然大統領選挙では、反ワクチンの人たちはトランプに投票する。同じように、5つ星運動も麻疹ワクチンと自閉症の関係に対する懸念を公に表明している。当然反ワクチンの人たちはこの政党を支持するだろう。
また西ヨーロッパではワクチンを義務化している国も多く、フランスの国民連合はワクチンの安全性に懸念を表明し、義務化に対して反対している。ギリシャでは、左派のポピュリズム政党が同じ立場を公に表明している。したがって、ポピュリズムに反科学という思想的共通性があると簡単に決めつけるのはまだまだ早計で、さらに詳しくこの共通性の背景を研究したほうがいいだろう。
ただこの論文のデータを見て、私が最も感心したのは、国民皆保険で、公衆衛生大国と考えられるデンマークで、ポピュリズムが必ずしも反ワクチンに繋がっていない点で、同じ傾向が英国や、フィンランドにも見られる点だ。すなわち、ワクチン拒否という反科学的な考えも、教育と政府の努力でかなり抑えることができることを意味している。
翻って、我が国を考えてみると、政治状況が大きく違うことがわかる。もちろんわが国にもポピュリズムや反エスタブリッシュメントを支持する人は多いが、具体的にそれが政党として現れておらず、同じ調査をするのは難しいと思う。ただ、貧富の差が拡大し、外国人の受け入れが広がることで、いつかわが国でも同じような反エスタブリッシュメントの政党は生まれるような気がする。その時、反エスタブリッシュメントとは直接関係ない、反ワクチン運動や、反科学運動がこの動きとどう連動するのか、調べてみることは、エスタブリッシュメントの一つのセクターを代表する科学界に課せられた責務であるような気がする。
2019年3月10日
消化器ガンに限らず、肝臓は転移が起こりやすい臓器だが、血管が豊富で、大きな臓器なので当然のことだと思っていた。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、この当たり前の背景には、ガンには原発巣に止まって増殖してい時期でも、すでに肝臓に転移できる場所を用意する能力を持っており、うまく原発巣から遊離できて血管に侵入できると、こうして用意した肝臓の環境を使って転移癌として増殖するという研究だ。タイトルは「Hepatocytes direct the formation of a pro-metastatic niche in the liver(肝臓細胞が転移しやすいニッチを肝臓に用意する立役者)」で、Natureオンライン版に掲載された。
著者らは最初から、ガンが原発巣から肝臓に働きかけ、肝臓を転移に適した環境に作り変えていると考えて研究を行っている。研究では遺伝子を操作してすい臓ガンが発生しやすくしたマウスを用意し、癌が膵臓にできた時期と、まだ膵管の小さな変化に止まっている時期に蛍光標識したがん細胞を静脈注射し、肝臓で増殖するかを調べると、すでにガンが膵臓に発生している時期には、まだ転移は起こっていなくても、肝臓に転移しやすくなっていることがわかった。実際、膵臓にガンが発生した時点で肝臓の組織を調べると、白血球が集まり、コラーゲンやフィブロネクチンなどが分泌されたガンの増殖に適した炎症像が見つかることがわかった。
そこで、膵臓にガンができたマウスの肝臓で発現している遺伝子を調べると、急逝炎症のメディエーターである血清アミロイドタンパク質(SAA)、およびIL-6によって誘導される炎症遺伝子群の発現が高まっていることを発見する。
そこでまず、ガンが発生してガン局所でIL-6が高まり、それが肝臓細胞に働いて、SAA産生などを促し、ガン増殖に適した環境を作っているという仮説をたてて、これを検証している。
まず、IL-6ノックアウトマウスを用いてすい臓がんによる肝臓の転移環境誘導にIL-6が必要であるかを調べると、IL-6のシグナルを伝えるSTAT3のリン酸化、白血球の浸潤が肝臓で誘導されないことが確認された。また、腫瘍を膵臓に注射して局所でのIL-6の産生を調べると、IL-6はガン局所で誘導され、それが肝臓に働くことがわかる。そして、STAT3シグナルを介して、SAAなど炎症物質が肝臓で誘導され、がん細胞の増殖環境を作る可能性が示された。
そこで、最後にSAAがこの過程の主役かどうか調べるため、SAAをノックアウトしたマウスを用いて肝臓でのガンの増殖を調べると、SAAが欠損したマウスでは、白血球の浸潤が低下し、静脈注射したすい臓がんの増殖も抑えられていた。
結果は以上で、最初からシナリオありきの研究なので、話はわかりやすい。また、実際の患者さんでもSAAがさまざまなガンで上昇していることを突き止めているので、ある程度人間でも同じことが起こっている可能性はあると思う。いずれにせよ、これが正しいとすると、ガンの転移を防ぐためのさまざまな方法があるということで、例えば阪大の岸本先生が開発したIL-6に対する抗体なども転移を抑える目的で使えるのかもしれない。ただ、局所の炎症は一方で免疫成立にも重要なので、ガン治療という観点からは、転移と他のファクターを天秤にかけたより慎重な検討が必要だと思う。
2019年3月9日
これまでなんども自閉症スペクトラム(ASD)の脳の構造をMRIで調べた研究については紹介してきた。このような研究の基本には、なるべく早期に発見出来る客観的指標を探し、早期治療を可能にしたいという思いがある。また、加齢に伴う変化を調べることで、ASDと脳の可塑性を調べることも重要になる。しかしASDがスペクトラムとして理解されているように、一つのグループの研究結果がそのままコンセンサスとして認められると言うまでにはなかなか至らず、実際論文間の結論の違いも多く認められた。
今日紹介するロッシュイノベーティブセンターを中心とするヨーロッパ各国が参加する研究チームの論文は、MRI検査についてのコンセンサスを確立すると言うことを目的に行われた研究で2月27日号のScience Translational Medicineに掲載されている。タイトルは「Patients with autism spectrum disorders display reproducible functional connectivity alterations (ASDの患者さんでは再現性のある脳の機能的結合性の変化が認められる)」だ。
繰り返すが、この研究は発見的研究というより、これまでの研究を見直してASDのMRI画像に関して皆が一致できる変化を特定することにある。これを実現するため、ヨーロッパで進んでいる2-300人規模でASDと一般人を追跡するコホート研究のうち、まず3コホートをMRI変化を特定するための探索に用い、またこれらとは独立して進んでいる3コホートを、探索により特定された変化を確認する目的で使っている。また、画像も安静時の各領域の機能的結合性を調べる方法に固定して、変化を探索している。要するに、ASDのMRI画像のAI研究と言っていいが、わざわざ流行りの言葉を使わないところにこだわりすら感じる。
結果はもちろんこれまでの研究と同じで、ASDの人たちでは、一般人と比べてMRI画像上の変化を特定することができ、この結果を他のコホート研究で確認するとともに、多くの人数を比べることで違いを効果量(effect size)として定量することができることを示している。
今回特定された変化についてまとめると、以下のようになる。
1)ASDの多くの人で、機能的結合が亢進している領域と、低下している領域が特定できる。そして、これらの変化の効果量は、ASDの程度と相関する。
2)機能的結合が低下しているのは感覚領域と運動領域との結合が中心で、亢進しているのは前頭皮質と頭頂皮質をハブとする結合で、基本的には皮質間の結合に限られている。
3)これまでの研究で示されていた、皮質と小脳や脳幹との結合性の変化は確認できず、ほとんど一般人と変化がなかった。
4)感覚野と運動野の結合性の低下は、この2領域間内での結合の低下と同時に、この2領域と他の脳領域との結合が低下することで起こっており、個人的な意見だが、ASDの人たちが示す外界の刺激に対する閾値の低さに関わるような気がする。
5)前頭葉、頭頂葉は、自発的に何かを実行するときに重要な機能を果たしている領域で、計画を立てたり、果敢に決断したりすることに関わる。実際、この領域の結合亢進と相関する症状を調べると、コミュニケーションや日常生活での困難が上がってくる。
6)ただ、これらの変化が原因か結果かは明確でない。実際、これらの変化の効果量は年齢が高いほどはっきりする。このことは、同じ変化が長期間維持されることを示すと同時に、この変化を強めていくモーメントが働いていることを示している。
他にも多くの重要な点が指摘されていると思うが、以上6点が私にとっては最も印象的だった。この領域ではかなり重要な研究だと思う。
2019年3月8日
癌の進行度を測る最も信頼おける方法がTMN分類で、T(umor)は腫瘍自体の大きさや浸潤、N(ode)はlymph nodeすなわちリンパ節転移の数、そしてM(etastasis)は他の臓器への転移の有無をしめし、これらを組み合わせて癌の進行度を決めている。このようにリンパ節転移は現在も重要な指標と考えられており、手術時にできるだけ取り除いてしまうというのが現在も一般的な考え方だと思う。
ただ、リンパ節は免疫反応の重要な場所であり、それを取り除くことで癌に対する免疫反応が低下する心配がある。また、手術時、リンパ節郭清と呼ばれるだけあり、できるだけ取り除こうとするため、手術時間が長くなり患者さんへの負担が高まることは間違いなかった。また、腫瘍の場所によって、リンパ管が働かなくなり、四肢の浮腫で著しく生活の質が低下することも懸念されている。
このような状況から、リンパ節郭清が本当に必要かどうか検討しようとする動きもあるが、間違いなくガン細胞が存在するリンパ節を残していいのかという素朴な疑問でなかなか検討が進んでいないのが現状だ。ところが今日紹介するドイツ・中部エッセン病院を中心に多くの国が協力して発表した論文では、腹腔内にとどまっているが進行性の卵巣癌の中で、転移巣も含めて手術可能な症例について、厳密にリンパ節郭清をするグループと、全く郭清しないグループに無作為的に振り分け、その後の予後を比べた研究が行われ、2月28日号のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「A Randomized Trial of Lymphadenectomy in Patients with Advanced Ovarian Neoplasms (進行性の卵巣癌患者さんでのリンパ節郭清の効果を調べる無作為化試験)」だ。
この研究ではステージIIBからIVの卵巣癌の患者さんを約300人づつリクルートし、手術中にリンパ節郭清を行う群と、行わない群に分けている。転移巣含めて完全切除が可能と判断した症例が選ばれ、後は各病院に手術は任せている。ただ、リンパ節郭清については極めて厳密で、どんなに大きなリンパ節転移があっても、郭清をしない群ではそのまま切除せず残すことを義務ずけている。また、術後ほとんどの患者さんは、抗がん剤の全身治療を行なっている。外科医にとってはおそらく抵抗感の強い治験だと思う。
リンパ節郭清群では平均で57個のリンパ節が切除されており、このうち55.7%のリンパ節で転移が見つかっている。郭清しないグループも、概ね同じように転移があったと考えていいだろう。
さて結果だが、ガンの進行が見られなかった期間は両群で全く差がなく、25.5ヶ月、生存期間は郭清群で65.5ヶ月、非郭清群で69.5ヶ月とほとんど差がなかったという結果だ。一方術後の様々な副作用では、感染、発熱、リンパ浮腫などでは明らかに郭清群のほうが頻度が高かった。
以上の結果から、少なくとも進行してはいても切除可能な卵巣癌の場合、リンパ節郭清は全く必要がないという結論になる。では、単純にリンパ節郭清はやめてしまえるかというと、リンパ節の中に転移があるとわかっている以上、おそらく医者の立場では踏ん切りがつかないような気がする。おそらく、この結果を正直に話して、患者さんに選んでもらうしかないだろう。あるいは、免疫療法が可能になれば、リンパ節を保全する方向で治療が行われるようになる可能性があるので、チェックポイント療法などが卵巣癌にも使われるようになる時でもこないと、抵抗する外科医は多いように思う。
2019年3月7日
神経系は筋肉とほぼ同じ時期におそらく共通の細胞から進化しており、最初は運動に関わる興奮性の細胞に過ぎなかった。そこに感覚神経が進化し、外界のシグナルをほぼリアルタイムで細胞から細胞へとシグナルを伝えることができるようになった。しかし、運動神経や感覚神経ができたとしても、それぞれが情報を伝えている段階では、神経の存在しない細胞システムと特に大きな質的な変化はなかった。しかし、神経ネットワークが生まれ、外界を神経回路の中でrepresentation(もう一度存在させる:表象)できるようになることで、個体と外界の関係に一大変革をもたらせた。外界で起こる現象が脳内に表象できるようになる。この結果、時間が経ってその現象が存在しなくなっても、表象のレベルでは記憶としてもう一度再現することができる。
こう考えると、記憶の研究こそ、神経ネットワークでの表象とは何かを知るために最も重要な分野だと言える。すなわち、脳内の各所にしまい込んだ表象をもう一度思い出す過程を理解することは、表象自体の理解についても重要だ。今日紹介する米国国立衛生研究所からの論文は、記憶をもう一度思い出す時の過程を人間で調べた論文で3月1日号のScienceに掲載された。タイトルは「Coupled ripple
oscillations between the medial temporal lobe and neocortex retrieve human
memory(内側側頭葉と新皮質の間でリンクした波形の振動により人間の記憶が引き出される)」だ。
これまでの研究で内側側頭葉(MTL)が脳の様々な場所から表象を集め記憶として呼び起こすオーガナイザーの役割を果たしていること、そして記憶を呼び起こそうとするときMTLにさざ波のように小さな波形の振動(ripple)が脳波に現れることが知られていた。そして、記憶の表象がしまわれている場所とこのrippleをリンクさせることが記憶呼び起こしに必須の過程であると考えられてきた。
この研究の最大の売りは、人間の脳の広い範囲に、てんかんの診断のために留置した脳細胞の活動を直接記録できるクラスター電極を用いて、脳内でのこのようなrippleの共有について調べた点で、これによりかなり正確にMTLとリンクしている領域を特定することができる。
最初MTLの80-120Hzの波と同期して活動している場所を調べ、期待通り50msほど遅れて側頭葉のrippleがMTLでのrippleに同期していることを確認する。
次に、たとえば「指」と「針」を連動させて記憶し、次に「指」と聞いて「針」を連想して答える500msほどの間に発生しているMTLのrippleにリンクして同じrippleを発生させる脳領域を探索し、正解を思い出せた時だけ側頭葉がMTLにカプルしてrippleを発生していることを明らかにしている。すなわち、MTLがrippleを発生させ、これに呼応して記憶がしまわれている場所がrippleを発生させることが、記憶の呼び起こしに必須であることを示している。
そして、正解を思い出した時MTLに同期して発生したrippleのパターンが、記憶を成立させるときに側頭葉に発生したrippleのパターンを再現していることを最後に示している。
抽象的な話なのでわかりにくいと思うが、要するに外界の現象を脳の活動の表象として記憶する過程で側頭葉に発生した脳活動は、記憶を呼び起こす時MTLに連動するrippleに再現されていることを示し、まさに側頭葉でのrippleが記憶した対象に対応する表象となっていることを示した点が重要だと思う。
もちろんrippleに乗っている表象をデコードできるわけではない。しかし、表象を情報として取り出せるようになることは脳研究の最も重要な課題で、ここから発展して21世紀、デカルトの2元論が乗り越えられるような予感がするが、これについてはまたの機会に論じてみたい。
2019年3月6日
ゲノム研究が進んでも、膵臓癌は私たちの努力をあざ笑うかのように治療の最も困難なガンとして、医学に立ちはだかっている。実際、膵臓癌のゲノム研究論文を読むと、ドライバーとガン抑制遺伝子が組み合わさって発癌する典型といえるガンで、ほとんどのガンがRasの変異をドライバーとして使っており、p53などのガン抑制遺伝子の機能異常も多くの症例で見られる。また、Ras変異とp53変異を組み合わせることで、マウスでも膵臓癌を発生させることができる。とはいえ、RasやRasの下流のシグナルを抑制してもビクともしないことが多い。これまでの研究で、この原因がRas経路が阻害されると、本庶さんの前にノーベル賞を受賞した大隅さんが発見したオートファジーが活性化され、ガン自身で細胞死を免れるためでなないかと考えられるようになっていた。
今日紹介するユタ大学からの論文はこの可能性を証明し、オートファジーを阻害することで膵臓癌を論理的に治療する可能性を示した論文でNature Medicineにオンライン出版された。タイトルは「Protective
autophagy elicited by RAF→MEK→ERK inhibition suggests a treatment strategy for
RAS-driven cancers(RAF-MEK-ERKシグナル経路阻害により防御的オートファジーが誘導されることからRasをドライバーとしているガンの一つの治療選択を示唆している)」だ。
この研究ではオートファジーが促進しているか低下しているかを、オートファジーが起こって酸性の環境になっても蛍光を発する赤の蛍光とオートファジーが起こると消えるグリーンの蛍光を指標にして、モニターできるようにした細胞株を用いて定量できるようにし、まずRasをドライバーとするガン細胞株のRas経路を抑制すると、オートファジーが促進されることを確認している。そして、このオートファジーの促進が、LKB1-AMPK-ULK1のリン酸化や脱リン酸化を介して起こっていることを示している。
オートファジーを誘導する完全なプロセスが解析されたわけではないが、これらの結果はRas経路を止めて、オートファジーを抑制するとガン細胞を殺せる可能性を強く示唆している。そこで、Ras下流のMEK阻害剤トラメチニブを用いてRas経路を止めた細胞のオートファジーをクロロキンで抑制すると、期待通りがん細胞の増殖をつ色抑えることができることを明らかにした。クロロキンはオートファジー以外の経路も抑制できるので、遺伝的にオートファジー特異的に低下させられる方法を用いて同じ実験を行い、トラメチニブの効果を抑制しているのがオートファジーであることを明らかにしている。
また、マウスに癌を移植する実験系で、トラメチニブとクロロキンの同時投与でがん細胞の増殖を強く抑えることができることを示している。
ここまでだけなら普通の研究で、これまでも指摘されていたことだが、あまりにも効果が明確なので、著者らは実際の患者さんでこの結果を確かめようと、一般的な化学療法に全く反応しなくなった膵臓癌の患者さんを選び、トラメチニブの量は固定して、患者さんのガンマーカーを見ながらクロロキンの量を増やしていく治療を行い、なんとクロロキンの濃度あ1200mgを超えた時、急速にガンマーカーが低下し、CTで転移癌の大きさが減少した後、4ヶ月経過してガンが抑えられたままの患者さん1例を症例として示している。
もちろん正式な治験を経ないとこの治療が有効とは結論できないのはわかるが、万策尽きた患者さんで急速にガンの縮小が見られたこと、4か月再発がないことから、かなり期待できるのではと直感する。また、治療自体が論理的なので、条件さえ合う患者さんなら、かなりの効果が期待できるような気がしている。最近クロロ菌ではなく、より特異的なオートファジー抑制薬剤が開発されてきていることを考えると、こうして症例が示されたことで結構興奮する論文になったと思う。
このように、本庶さんのガンのチェックポイント療法だけでなく、大隅さんのオートファジー研究もガンをはじめ様々な病気の標的として大きく医学に貢献していることがよくわかる。
2019年3月5日
様々な場所に生息する細菌叢に興味が集まってから、当然とはいえ上皮を通して分泌されるIgAの機能を特定しようとする研究が増えてきているように思う。色々読んでみると、IgAのことをあまり知らなかったことに気づく。
今日紹介するハーバード大学からの論文はIgAの一部はT細胞ではなく腸管上皮が小胞体ストレスを受けた時に誘導される分泌性シグナルにより誘導されるという研究で3月1日号のScienceに掲載された。タイトルは「Epithelial endoplasmic reticulum stress orchestrates a protective IgA response(上皮の小胞体のストレスは防御的IgA反応を調整する)だ。
この研究は小胞体ストレスを高めるXBP1遺伝子が欠損したマウスの小腸を調べるとIgAを分泌する形質細胞が上昇し、組織および血中のIgAが上昇することを発見したことに始まる。すなわち、腸管の上皮のERストレスが高まることで、IgA産生細胞が腸管で誘導されることがわかる。
もともと腸管上皮で小胞体ストレスが起こると、腸の炎症が起こることが知られているが、今回見つかったIgA産生細胞の増加は、炎症に対して促進的に働くのか、あるいは抑制的に働くのか、IgA遺伝子の定常部位が欠損したマウスのXBP1遺伝子を欠損させて調べている。IgAが産生できないマウス腸管上皮に小胞体ストレスがかかると、腸管の炎症が誘導されるが、その程度はXBP1ノックアウトだけのマウスと比べるとはるかに重症で、広い範囲に広がっている。また、IgAは発現できても、それを腸管の管腔内に分泌できなくしたマウスで同じストレスをかけると、同じように強い炎症が起こる。このことから、小胞体ストレスで起こる腸炎を、同じ刺激で誘導されるIgAは軽減していることが明らかになった。
このIgA産生細胞がどのように腸管内で用意されるかを様々なノックアウトマウスと掛け合わせて検討している。T細胞受容体が欠損したマウスでもERストレスでIgA産生細胞が誘導されることから、この上昇はT細胞に非依存的な反応であることを明らかにしている。
このようなT細胞非依存的抗体産生細胞は通常B1細胞と呼ばれるB細胞から分化してくるが、確かに小胞体ストレスが腸管上皮に加わると、腹腔内のB1B細胞が増殖する。さらに、片方は腸管で小胞体ストレスが、もう片方ではストレスがかからないマウスの血管をつないで血液だけ両方の個体を循環できるようにすると、ストレスのかかった方のB1B細胞がIgA産生細胞へと分化し、腸管に分布していることを示し、1)腸管上皮小胞体ストレス、2)B1B増殖分化因子の分泌、3)B1B細胞の増殖およびIgA産生細胞への分化、4)B1B細胞の腸管への移動、5)IgAによる腸内細菌叢の活動抑制、6)腸炎の抑制というシナリオが成立していることを示唆している。
最後に、小胞体ストレスで誘導される分化因子を調べる目的で、無菌動物を用いた実験を行い、IgAは細菌の作用を抑えて炎症を抑える作用を持つが、IgA自体の誘導には細菌叢は必要ないことも明らかにしている。
残念ながら、上皮が分泌するIgA産生細胞誘導のメカニズムは明らかになっていないが、抗原とは無関係に誘導されてきたIgAが細菌叢に作用して腸管の炎症を抑えるという現象を見つけたことは、B1B細胞の機能を知る上でも面白い実験だと思う