1月21日 腫瘍内に形成されるリンパ組織様構造がチェックポイント治療への反応性を決める(1月15日 Nature オンライン掲載論文)
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1月21日 腫瘍内に形成されるリンパ組織様構造がチェックポイント治療への反応性を決める(1月15日 Nature オンライン掲載論文)

2020年1月21日
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繰り返すが、オブジーボなどのチェックポイント治療(CPT)が有効性を発揮するにはまずガンに対して免疫が成立している必要がある。ただ動物モデル実験系なら可能でも、実際の臨床例でガンに対する免疫が成立しているかどうかを見極めることは簡単でない。特に、オプジーボは最後の頼みとして使われることが多く、その前の治療により免疫機能は大きく変化させられていることが多い。ところが最近になって、CPTから始め、その後で手術するアジュバント治療や、治験レベルとはいえCPTを最初に用いた治療が始まっている。この様な患者さんでは、他の治療の影響を除外できるので、純粋にガン免疫が成立しているための条件を調べることができる。

今日紹介するテキサスMDアンダーソンがんセンターからの論文はチェックポイント治療を最初に使った後手術を行ったメラノーマの症例を追跡して、効果が見られた群と見られなかった群に分け、それぞれの腫瘍組織の遺伝子発現から、効果が見られた群に特徴的な変化を調べ、CPTが効くガン組織の条件を探った研究で1月15日Natureにオンライン出版された。タイトルは「BCPT cells and tertiary lymphoid structures promote immunotherapy response (B 細胞と3次リンパ組織様構造が免疫療法への反応を促進する)」だ。

この研究ではまず、CPTの効果が高かった患者さんのメラノーマ組織にはB細胞が特に目立つことを発見している。そこで、B 細胞に関わる遺伝子発現が高かった腫瘍組織を組織学的に調べると、B 細胞が腫瘍内をびまん性に浸潤するというのではなく、腫瘍組織内にリンパ節と同じようなT、B、マクロファージなどが集積したリンパ組織を形成していることを発見する。

こうしてできた3次リンパ組織様構造を形成するB 細胞についてsingle cell trascriptome解析を行うと、B細胞数が多いだけでなく、特定の抗原特異的抗体遺伝子クローン増殖をしていることがわかる。残念ながら、この抗体がガン特異的かどうかはわからないが、特定のクローンが増殖していることは、B細胞自身が3次リンパ組織様構造形成に寄与している可能性を示唆している。

最後に主要組織のB細胞と、末梢血中のB細胞の遺伝子発現をCyTOFを用いて調べ、CPTに反応した患者さんの主要組織には記憶型B細胞が存在している一方、末梢血には記憶型B細胞はほとんど存在しないことが明らかになった。また、リンパ節の胚中心に見られる増殖しているB細胞も主要組織に見られることを示している。

以上が結果で、ではB細胞がリンパ様組織形成に関わっているのか、ガンに対する抗体を作っているのか、あるいは抗原非特異的にガン特異的T細胞を誘導しているのかなど、重要な問題は人間の組織解析からだけではわからない。今後モデル動物で検討が必要だろう。

いずれにせよ、もし腫瘍組織内にこの様なリンパ組織様構造が形成されることがガン免疫成立に必要でそれにB細胞が関わっているなら、一種のリンパ組織インデューサー細胞としてB 細胞が働けることを示唆している。実際、リュウマチの関節にも同じような3次リンパ組織様構造が形成される。これらのことを勘案すると、腫瘍組織内に様々な操作を加えて免疫を誘導する免疫方法をもっと積極的に試みてもいい様に思う。

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