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11月15日  LDL受容体分解に関わるPCSK9はチェックポイント治療を高める(11月11日 Nature オンライン掲載論文)

2020年11月15日

コレステロールが高いと発癌のリスクが高くなることは多くのガンで知られている。確かに臨床的にも、コレステロール代謝を正常化することで、ガン自体や周りの環境を変化させることで、ガンの増殖を制御することができることは報告されているが、実際のメカニズムについてはほとんど理解が進んでいない。

今日紹介するデューク大学からの論文はコレステロール代謝と思って行った介入が実際には組織適合性抗原の発現に関わっていたため、ガン免疫を高めることができたというわかりやすい話で11月11日Natureに掲載された。タイトルは「Inhibition of PCSK9 potentiates immune checkpoint therapy for cancer (PCSK9阻害はガンの免疫チェックポイント治療効果を高める)」だ。

おそらくこの研究は、コレステロール代謝とガンの関係を解明する目的で始められたと思う。タイトルにあるPCSK9はLDL受容体に結合してエンドゾームで分解することで、受容体のリサイクルを止める働きがある。したがって、細胞表面場のLDL受容体が低下してコレステロールが高まる。最近になって、PCSK9に対するモノクローナル抗体を用いて、LDLの分解を防ぎリサイクル率を高めるコレステロール血症の治療が始まった。もしPCSK9機能阻害でガンの増殖を抑制できれば、既にFDAに認可された治療法を組み合わせることができるというわけだ。

まず様々ながん細胞株からPCSK9遺伝子を欠損させて、マウスに移植すると、ガンの増殖が抑えられる。これはホスト側のコレステロール代謝とは無関係で、LDL受容体を欠損させたマウスでも同じ効果が見られる。一方、免疫システムが欠損しているマウスに移植した場合は、抑制効果が全く見られないことから、ガン免疫を介して増殖抑制が起こっていることが明らかになった。

次に、本来の目的であるPCSK1阻害と、チェックポイント阻害を組み合わせることで、ガンを抑制できるかを調べ、ヒトの高脂血症に用いられるevolocumabとPD-1抗体を組み合わせることで、ガンの増殖を抑えられることを示している。

最後はこのガン免疫が高まるメカニズムだが、LDL受容体の再利用との関わりを調べる実験は全て否定的結果で終わり、結局ガン抗原を提示するときに使われるクラス1MHCの発現をPCSK9阻害が直接高めるという結論に落ち着いている。事実、PCSK9はClassIMHCに直接結合し、またPCSK9阻害の効果は、MHC遺伝子を過剰発現させることでキャンセルされる。

以上の結果から、最初コレステロール代謝と癌との関わりで始められた研究が、PCSK9によるMHCの代謝変化によるガン免疫の活性化という結論で終わっている。面白いことに、チェックポイント治療に抵抗性を獲得した癌細胞でも、PCSK9抗体処理により再度免疫の標的になることも示されており、evolocumabやalirocumabなどをPD-1組み合わせる治療は期待できる様に思う。

結果よければ全てよし。

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