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11月4日 新型コロナウイルス感染の血栓症を誘導する連鎖(11月2日 Science Translational Medicine オンライン掲載論文)

2020年11月4日
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新型コロナウイルス(Cov2)に対する抗体反応は、例えばインフルエンザウイルスに対する反応とかなり違っていることは、速い段階から気づかれていた。まず、IgMとIgG抗体がほぼ同時に現れる(https://aasj.jp/news/lifescience-easily/13057)。さらに、抗体のレパートリーを調べると、生まれついて持っているgerm line V遺伝子が中心で、一般的な感染症に見られる様な突然変異蓄積による抗体の成熟が見られない(https://aasj.jp/news/watch/13476)。さらに驚くのは、モノクローナル抗体として分離した抗Cov2抗体はかなりの割合で自己組織反応性を持っている(https://aasj.jp/news/watch/13963)。これらの謎は、Cov2に対する抗体反応では、サイトカインストームなどの影響を受けて免疫記憶が通常のように胚中心で形成されず、濾胞外でB細胞の成熟がおこる、自己免疫型であるという発見で(https://aasj.jp/news/watch/14072)、かなり謎が解けた様な気がする。

今日紹介するミシガン大学からの論文は、この異常な抗体反応が血栓形成に深く関わる可能性を示唆し、Covid-19の病態の一端を説明する面白い論文で11月2日Science Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Prothrombotic autoantibodies in serum from patients hospitalized with COVID-19 (血栓形成を促進する自己抗体がCovid-19で入院した患者さんに見られる)」だ。

濾胞外抗体反応で誘導される自己抗体の中には、様々なphospholipidやそれと結合したタンパク質に対する自己抗体が存在し、これが血栓症の原因となることが知られていた。このグループは、Covid-19で血栓症の頻度が多い原因の一つが、このPhospholipids(PL)に対する自己抗体のせいではないかと疑い、入院した172名の患者さん(そのうち19%が死亡、8%は長期入院を余儀なくされており、重傷者が多い)の血清を調べている。

すると期待通り、約半数の患者さんで様々なPL抗体が検出され、この値は血栓と相関する血小板数やD-dimerとともに、以前紹介した白血球が血管内で死ぬことにより炎症と血栓が進むNetosis(https://aasj.jp/news/watch/12972)の指標と相関していることを明らかにした。

ここまでならなるほどで終わるのかもしれないが、このグループは自己抗体を持つ患者さんのIgGを使って、自己抗体が試験管内で顆粒球の細胞死が誘導され、Netosisが誘導されること、さらに活性酸素を発生させて血栓形成の条件を整えた大静脈で実際の血栓形成を高めることなど、たしかにこの自己抗体がCovid-19の病態を説明できることを示している。

残念ながらPLに対する抗体がCov2結合能を持っているのか、あるいはバイスタンダートして誘導されたのかなど、詰められていないが、多くの現象をうまく説明してくれる論文だと評価する。

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