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7月14日 リンパ球が組織再生を助けるメカニズム(7月8日号 Science 掲載論文)

2022年7月14日
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組織再生をリンパ球が助ける可能性はこれまでも指摘されてきた。かなり古くは、γδ細胞が欠損すると、腸の絨毛の長さが短くなることが報告されていたし、今では腸管や皮膚の修復に機能しているということは、広く認められている。

今日紹介するニューヨーク大学からの論文は、皮膚の損傷修復時の γδT細胞が分泌する IL-17 が、皮膚上皮の低酸素応答システムの発現を維持することに働いているという重要な発見で、7月8日号 Science に掲載された。タイトルは「Interleukin-17 governs hypoxic adaptation of injured epithelium(インターロイキン17が傷害された上皮の低酸素適応を調節する)」だ。

まず損傷治癒の初期過程で傷口に浸潤するT細胞を調べ、傷口には様々なT細胞が浸潤していることを確認した上で、中でも IL-17 産生細胞の発生に必須の RORγ遺伝子を発現した γδT細胞が急速に上昇することを発見する。

そこで RORγ遺伝子を蛍光マーカーで置き換えたマウスを用いて修復過程を調べると、治りが50%遅くなること、すなわち修復に RORγ陽性細胞が必須であることを明らかにする。

これがわかると、後は順々にその機能を追求していけば良い。RORγが調節する IL-17 が修復促進に関わることを、ノックアウトマウスで確認した後、上皮細胞での IL-17シグナル伝達経路を追跡している。

まず、上皮の修復に必須の低酸素応答システムHIF1の発現維持に、IL17が必須であることを明らかにしている。すなわち、急性の低酸素で HIF1 は誘導されるが、それが長期間維持されるためには IL-17 が必須で、これが修復に際しての RORγ陽性γδT細胞の主要な役割になる。

そして、主に阻害剤を用いたシグナル研究で、IL-17が ERK 及び AKT のリン酸化を介して mTOR を活性化するという、まさに代謝の核となるシグナル経路を介して HIF1 の転写及び翻訳を維持し続けていることを明らかにしている。

詳しいことはほとんど省略したが、この結果は重要で、大きな皮膚損傷での修復を、IL-17が促進できることを意味している。このサイトカイン自体は炎症誘導など様々な問題を引き起こす可能性はあるが、培養に使うことも含めて、様々な可能性が生まれたと思う。

また、これまで HIF1 が誘導されると、低酸素による反応として片付けていた過程も、総合的に見ることの重要性を示している。特に低酸素環境に対する、急性の反応と、慢性の反応は区別してかかることの重要性もよくわかった。

IL17 というと悪いイメージしかないが、新たな組織形成は全て炎症を元にプランされていると思うと、納得する。

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