7月18日 分泌型細胞レポーターシステムの開発(7月11日 Cell オンライン掲載論文)
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7月18日 分泌型細胞レポーターシステムの開発(7月11日 Cell オンライン掲載論文)

2023年7月18日
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細胞標識は発生や幹細胞生物学には必須で、遺伝的マーカーから始めて、ウイルスベクターの利用や、バーコードとの組み合わせへと発展し、技術革新は常に重要な発見につながってきた。

今日紹介するカリフォルニア工科大学からの論文は、これまでの標識とちょっと違って、標識された細胞に決まったRNAを分泌させることで、その細胞の状態を、分泌されたRNAから推察するという方法の開発で、7月11日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Engineering RNA export for measurement and manipulation of living cells(RNAの分泌を操作して生きた細胞の検出と操作に使う)」だ。

この研究のアイデアは、ウイルス排出する細胞の存在は、ウイルスの量をたとえばPCRで測ることで検出できることにヒントを得ている。ただ臨床検査ならともかく、ウイルスは細胞障害性で、しかも自然免疫を誘導するために細胞標識に使うのは難しい。

この研究ではまずウイルスRNAを選択的に取り込んで、粒子として排出する最も単純なシステムの構築から始め、まずHIVウイルスのGagタンパク質とファージの特異的RNA認識分子MCPを組み合わせたシステムを構築し、MCPが認識するRNAを取り込んだ粒子を排出する細胞を作成できることを示す。

次に、ウイルスGagの代わりに、もっと操作のしやすい人工分子が使えないか模索し、既に開発していた一種のナノケージタンパク質EPNをRNA認識MCP分子と合体させた粒子をデザインし、これを細胞で発現することで、同時に導入したレポーターRNAを排出するか調べ、Gagを持ちるより高い効率で、レポーターRNAのみ特異的に粒子に取り込まれ、細胞外へ排出されること、また排出されたRNAをPCRで定量できること、さらに分泌されたRNAはナノケージに守られて分解されにくいことを確認する。

あとは、この分泌型レポーターシステムとバーコードを組み合わせることで、試験管内での細胞間の増殖率の違いや、相互の競争を、細胞を採取することなく、上清を集めるだけでモニター可能であることを示している。

最後に、このレポーターシステムにVSVウイルスの細胞融合分子を組み合わせることで、排出したRNAを他の細胞へ移行させ、一種の遺伝子治療が可能であることも示している。

結果は以上で、細胞にウイルスに似た粒子を排出させることで、細胞を回収せずに動態を追跡する目的には高いポテンシャルをもつ系ができたのではと思う。今後、正常の細胞で同じレポーターが、細胞の生理を犯すことなく使えるとすると、生体内での細胞動態の解析のみならず、遺伝子を移行させる効率を変えることで、その細胞が移動した場所を特定する方法の開発など、いろんなアイデアが浮かぶ面白い系へと発展するように感じる。

カテゴリ:論文ウォッチ