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7月22日 R2トランスポゾンを用いる安全で高効率の遺伝子導入法(7月8日 Cell オンライン掲載論文)

2024年7月22日
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細胞のゲノムに効率よく遺伝子を導入する方法としては、これまでレトロウイルスを用いる方法、あるいはピギーバックなどのトランスポゾンを用いる方法が使われてきた。ただ問題は、これらの方法ではランダムに遺伝子が挿入されるため、導入場所によっては様々な問題が起こると考えられ、この問題を解決するためにはゲノム配列を調べて、挿入場所が問題ないことを示すしかない。それでも最近の CAR-T でキメラ抗原受容体を導入する目的にレトロウイルスに代わる方法はない。

今日紹介する北京にある中国科学アカデミー研究所からの論文は、28RNA をコードするゲノムサイトに選択的に挿入される R2トランスポゾンシステムをベースにした遺伝子導入法の開発で、7月8日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「All-RNA-mediated targeted gene integration in mammalian cells with rationally engineered R2 retrotransposons(遺伝子操作した R2トランスポゾンの RNA だけで行える挿入場所が決まった遺伝子挿入法の開発)」だ。

この研究では R2トランスポゾンが 5‘端と 3’端にある UTR を用いて R2 が 28rRNAコーディング領域に挿入される特徴を生かすことで、どこに遺伝子が挿入されるかわからないという問題を解決できると考えた。

そこでまず様々な R2トランスポゾンを、5‘、3’端、コードしている遺伝子、そして挿入数などを調べ、最終的に 28rRNA遺伝子部位に挿入されるトランスポゾンを選んで、このシステムを用いて蛍光遺伝子GFP を挿入するベクターを開発する。

一つは R2 のトランスポジションに使われるタンパク質が核内に移行できるようにした遺伝子をコードする遺伝子で、もう一つが R2 の 5‘、3’端の UTR を持つ GFP配列を組み込んだベクターで、両方が細胞内で発現すると、GFPが 28rRNA遺伝子部位に挿入され、そのときだけ GFPタンパク質が合成されるようにデザインしている。

この結果、培養細胞に2%ぐらいの効率で GFP が発現すること、挿入部位が決まっていることを確認する。

このようにシステムが利用可能であることが確認されたので、次に挿入したい遺伝子に付加する5‘、3’ UTR シグナル配列の至適化、さらにトランスポジションに関わる酵素の至適化を行っている。

この詳細は全て割愛するが、最終的に挿入したい遺伝子をコードするベクター、及びトランスポジションに必要な酵素を至適化したベクターを完成させ、なんと20%に達する効率の遺伝子導入法を完成させている。このベクターシステムでは2.5Kbの遺伝子を導入することができるので、多くの目的に利用可能で、標的部位以外に導入される確率は0.6%と低く、さらに導入時の逆転写によって欠失挿入が起こる確率も低い。

さらにこのシステムは、RNAワクチンのように全て RNA に転写させて、それを導入することでも挿入することができる。すなわち、DNAを導入してランダムに挿入が起こる確率をさらに低下させることができる。

以上が結果で、印象的にはまだ始まったばかりで、今後異なる標的部位に導入することも可能になるのではないだろうか。地味な仕事だが、皆が待ち望む遺伝子導入システムになる可能性がある。

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