11月19日 頭の骨では歳をとっても若々しさを保ちうる(11月13日 Nature オンライン掲載論文)
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11月19日 頭の骨では歳をとっても若々しさを保ちうる(11月13日 Nature オンライン掲載論文)

2024年11月19日
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我々の骨髄は歳とともに脂肪で置き換わり、骨髄造血のキャパシティーは低下する。また、自然炎症が誘導され、この結果クローン性造血が起こることも知られている。ただ、これらは全て軟骨内骨化と呼ばれる方法で形成される腸管骨での話で、膜内骨化と呼ばれる方法で形成される頭蓋骨での造血についてはほとんど調べられていない。

今日紹介するドイツ・ミュンスターのマックスプランク分子生物医学研究所からの論文は、軟骨内骨化で形成される腸管骨と、膜内骨化で作られる頭蓋骨の造血は全くことなり、特に高齢者でも頭蓋骨の造血能は若々しいことを示した驚くべき研究で、11月13日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Adult skull bone marrow is an expanding and resilient haematopoietic reservoir(成人の頭蓋骨骨髄は年齢とともに拡大し回復力の高い造血細胞の供給源だ)」。責任著者の Ralf Adams は血管生物学を通して交流があったが、この仕事は彼のセンスの良さを物語る。

研究ではまず頭蓋での血管の発生をつぶさに観察し、腸管骨の逆で、生まれたばかりではほとんど血管が発達していないのに歳とともに発達し、老化マウスでもしっかりと血管毛が構築され散ること、そして骨髄の特徴である静脈叢が形成されていることを明らかにする。しかも、老化後の頭蓋骨髄静脈叢はマウスでもヒトでも見られ、女性の方が発達している。

この理由の一端は妊娠期に急速に頭蓋骨髄静脈叢が発達するためかもしれない。実際、頭蓋の静脈叢の形成は、脳卒中など様々な刺激状態で誘導され、副甲状腺からでるパラトルモンの刺激でも誘導されるように、かなり機動的にできている。

この頭蓋骨骨髄では完全な造血が起こるのだが、面白いことに血管の発達は頭蓋由来の造血幹細胞を移植したときに最も強く誘導され、おそらく造血幹細胞が発現している血管増殖因子 VEGFA の作用によると考えられる。実際、腸管骨では年齢とともに VEGFA の量は低下するが、頭蓋骨では逆に上昇する。

また、老化マウスでは頭蓋骨で若々しいバランスのとれた造血が行われるため、血液細胞の供給源としては優れていることも示している。すなわち、頭蓋あるいは腸管骨の骨髄をシールドして放射線照射すると、頭蓋をシールドした方が造血回復力が高く、照射後のマウスの生存率を上昇させられる。また、頭蓋由来の造血細胞と腸管骨由来の造血細胞を追跡すると、頭蓋由来造血細胞の数が他の造血細胞を凌駕することがわかる。

しかも、頭蓋では炎症性のサイトカインの発現が低く、老化に伴う骨髄球への造血バランスの変化も見られない。

以上が結果で、これまでこの事実が全く知られなかったことが驚きで、様々な現象を観察して気づく力の重要性がよくわかる論文だと思う。また、我々高齢者にとっても、若さを維持している臓器があることはうれしい結果だ。

カテゴリ:論文ウォッチ
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