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8月18日 p53を標的にした急性骨髄性白血病治療(8月12日 Science Translational Medicine 掲載論文)

2026年8月18日
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科学技術の大躍進以前に中国医学で最も印象に残る研究が、上海医科大学によって発表された、急性前骨髄性白血病を All-trans Retinoic acid によって分化させて完全寛解可能であるという発見で、現在も治療の第一選択として使われる輝かしい業績だ。

今日紹介する上海交通医科大学からの論文は、中国伝統の医薬 亜ヒ酸 (ATO) を用いて p53 の特定の変異を持つ急性骨髄性白血病患者さんを治療できることを示した研究で、8月12日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Mutant p53 reactivation and DNA demethylation in the treatment of AML/MDS(変異 p53 を再活性化させ DNA脱メチル化 治療と併用することで AML/MDS を治療できる)」だ。

変異 p53 の機能を回復させる化合物の開発が行われていることについてはずいぶん前に紹介したことがあるが(https://aasj.jp/news/watch/7549)、 中国伝統の亜ヒ酸も一部の変異 p53 の DNA結合能 を回復させられることが明らかになっていたようだ。この研究の目的は ATO をもちいて p53変異 がある悪性度の高い急性骨髄性白血病 (AML) を治療することだが、これまでの研究経緯や AML について知らないと戸惑う構成になっている、即ち最初から ATO を AML の治療に用いられる脱DNA脱メチル化作用を持つデシタビンと組み合わせて効果を調べており、しかも、AML治療としても注目されているインターフェロンの誘導活性から研究が始まっている。

デシタビンは DNA脱メチル化 を通して DNA損傷や内在ウイルスを活性化させてインターフェロンを誘導することが知られているが、R282W変異p53 が存在する AML にデシタビンとともに ATO を加えると、インターフェロン反応性遺伝子のうち IRF7 が強く活性化され、白血病細胞の増殖も抑えられることを示している。これも最初から IRF7 に誘導されてしまう感じだが、いずれにせよ、IRF7 の転写に絞ってデシタビンと ATO の効果のメカニズムを調べている。

結果は、ATO で機能回復した p53 は直接 IRF7 の調節領域に結合して転写を高める。次に、ATO により活性化された p53 がデシタビン処理によりリン酸化を受けることを発見する。もちろんデシタビンの直接作用ではないが、他の DNA 損傷を誘導する薬剤でも同じリン酸化が見られるので、修復に関わるメカニズムによりリン酸化が起こる。この結果、p53 とそれを抑制する MDM2 分子との結合が阻害され、機能を回復した p53 による IRF7 の転写活性が増強され、AML の増殖が抑制されることになる。

メカニズムについてはここまでで、後はマウスに変異 p53 を持つ AML を移植する系でデシタビンと ATO の併用が高い治療効果を示すことを示している。そして、この論文のハイライトになる、実際の AML 患者さんの治療に進んでいる。ATO が効果を示すとわかっている5種類の p53 変異を持つ患者さんに週5日、一ヶ月デシタビン+ATO治療を行っている。結果はめざましいもので、1例は最初増殖が抑えられたが3週後からコントロールできなくなっているが、4例でほぼ完全寛解が得られている。重要なのは、正常の血液細胞の増殖が治療中から再開することで、骨髄を完全に抑制する抗ガン剤治療とは全く異なることがわかる。高齢者の AML には大きな朗報になる。さらに、他の治療と比べると副作用が大幅に低下しており、これも素晴らしい。最後に、ATO の効果が得られる p53変異 について、しらみつぶしに調べており、程度の差こそあれ多くの変異で ATO の効果が見られる可能性を示している。

以上の結果、p53変異 を持つ AML は、まず p53 変異を配列レベルで調べ、ATO が効きそうなケースではデシタビンとの併用治療を強く勧めている。今後各国で検証が進むと思うが、中国の伝統医学を起点とした重要な治療になる気がする。この研究を発表した上海交通大学は、論文を読んでいると結構伝統医学を重視した研究が多いような気がする。

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