9月27日 APOE4がアルツハイマー病進行を促進するメカニズム(9月24日 Cell オンライン掲載論文)
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9月27日 APOE4がアルツハイマー病進行を促進するメカニズム(9月24日 Cell オンライン掲載論文)

2026年9月27日
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APOE遺伝子には大きく3種類の対立遺伝子が存在し、APOE4を持つほどアルツハイマー病 (AD) リスクが高まることが知られている。そのメカニズムについては脳血管関門が破れるなど様々な説が示唆されているが、なるほどと納得できるシナリオはないように思う。

これに対し今日紹介する Ichan School of Medicine at Mount Sinai からの論文は、APOE4がTGFβを介して血管周囲細胞を線維化型細胞へと変化させ、細胞外マトリックス、特にファイブロネクチンの蓄積を高めることで、血管周囲でのアミロイドの蓄積を高めることを示した力作で、9月24日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「A pericyte-to-myofibroblast transition links APOE4 to cerebrovascular degeneration(ペリサイトから myofibroblast への転換がAPOE4と脳血管変性をつないでいる)」だ。

この研究ではまずADから切り離して、APOE4キャリアーの脳の single cell レベルのRNA発現データを様々なデータベースから集めて統一的に解析し、最終的にAPOE4キャリアーでは血管周囲細胞が減少して、線維化に関わる myofibroblast が増えていることを発見する。この結果をベースに組織学的に調べると、小血管の周りの周囲細胞が脱落して回りに myofibroblast が増えていることも確認している。さらに、ヒトのAPOE4やAPOE3を発現させたマウスの脳でも、加齢に伴って同じことが起こることも確認している。

あとはこの変化がAPOE4による周囲細胞自体の変化であることを、ヒトiPS細胞由来の周囲細胞と脳オルガノイド培養を組み合わせた創意に満ちた培養系で証明している。即ち、オルガノイドが正常由来でもAPOE4周囲細胞を供給すると、myofibroblast へ変化し血管から離脱する。

以上の結果から、周囲細胞の分化自体がAPOE4により変化して myofibroblastへ の転換が起こったと考え、single cell レベルの解析を分化の視点から見直すと、APOE4存在下で周囲細胞が中間段階の細胞を経て myofibroblast へと分化していることを明らかにしている。また、ヒトiPS細胞由来脳オルガノイドや、ヒトAPOEを発現させたマウスモデルを用いてこの結果を確認している。

このようにADとは関係なく、APOE4キャリアーでは血管周囲細胞がmyofbroblastへと転換することを確認した後、ADとの関係を探っている。そして、myofibroblastへの転換の結果起こる線維化、特にファイブロネクチンの合成上昇が、アミロイドβの蓄積を促進することを、マウス実験系やオルガノイドで確認している。そして、ファイブロネクチン合成を抑えることで、アミロイド直積を抑えられる事も示している。

周囲細胞からmyofibroblastへの転換にはTGFβが関わることが知られており、APOE4で見られる転換もTGFβが関わるのか、TGFβの発現を調べると、TGFβ1はmyofibroblastで最も発現が強いが、TGFβ2はアストロサイトで強く発現している。APOE4キャリアーでは確かにTGFβ1の発現が上昇し、またオルガノイド培養にTGFβ阻害剤を加えることでmyobibroblastへの転換が抑えられる事、さらにマウスモデルに同じ阻害剤を投与することでAPOE4によるmyofibroblastへの転換を抑えられる事を確認している。

以上の結果から、APOE4ではメカニズムははっきりしないが血管周囲細胞でのTGFβ産生が上昇しmyofibroblastへの転換が起こりやすくなり、血管周囲の線維化が促進される結果、蓄積したアミロイドの除去が抑えられ、結果的にADの進行を促進するというシナリオになる。ヒトのデータベース再検討から始まり、マウスやオルガノイドなど創意に満ちた実験を重ねて、APOE4についての新しい統一的シナリオまで至ったのは素晴らしい。また新しい治療標的としての開発も始まる気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ
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