6月9日:思い込み(6月4日号Nature掲載論文)
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6月9日:思い込み(6月4日号Nature掲載論文)

2015年6月9日
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二光子レーザー顕微鏡が開発されてから、生きた組織を観察する研究を随分目にするようになってきた。私自身は「ただ見るだけという研究は想像力をなくす」と公言して、研究室の誰かがこの方法を提案すると、常に批判者の立場に立ってはいたが、結局は想像力が間違った思い込みにつながっていることをなんども思い知らされた。今日紹介するエール大学からの論文も毛根組織の再生を生きたまま観察し続けることで、これまで想像力に頼って陥っていた間違った思い込みを訂正した研究で6月4日号Natureに掲載された。タイトルは「Niche-induced cell death and epithelial phagocytosis regulate hair follicle stem cell pool(ニッチにより誘導される細胞死と上皮細胞による貪食が毛根の幹細胞プールを調節している)」だ。このグループは2012年、同じ方法で毛根が活性化される過程を観察しているが、今回は毛が抜けて新たな毛の再生が始まるまでの過程を観察している。毛根の再生は常にバルジと呼ばれる毛根の上部で起こるため、新しい毛根の再生には既存の毛根下部の細胞を除去した上で新しい毛根再生をリスタートさせる必要がある。この時の下部毛根細胞の除去は細胞死により組織が崩壊することで起こると考えられてきた。まずこの論文では下部毛根が確かに退縮はするが大規模な細胞死は観察されないこと、そして一部死んだ細胞は周りの生きている上皮細胞に貪食され、決して周りの組織に分散していくものではないことが示されている。この論文ではあまり強調されていないが、上皮が上皮を貪食するこの退縮方法なら、必要なくなった部分も毛根としてのインテグリティーを保ったまま退縮させられる。極めて合理的な方法だ。次に、この細胞死は毛母のTGFβにより誘導されることを示している。例えばレーザーで毛母を取り去ると細胞死は減り、毛根退縮が起こらない。同じことがTGFβシグナルを止めることで起こるため、もともと毛根の増殖誘導に関わる毛母が、最終局面で細胞死誘導と毛根退縮に関わることが明らかになった。最後に、退縮時に生き残った細胞はもう一度増殖して新しい毛根の発生に関わることが示されている。従来は、新しい毛根はバルジにある幹細胞を再活性化させることで起こると考えられてきた。もちろん、バルジの重要性に変わりはないが、この研究でバルジからの新しい細胞に加えて、古い毛根からの細胞も参加することで、毛根の再生を高めていることがわかった。こうして示されると、この過程だけでも3つの思い込みをしていたことがわかるし、また示されたシナリオの方がずっと合理的に見える。幸い私の研究室にも何人かいたが、ただ見ることのために努力を惜しまない研究者はたしかに貴重な存在だ。
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6月8日:MERSについて(6月3日号The Lancet掲載レビュー)

2015年6月8日
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韓国を不安に陥れているMERSについて、我が国のメディアも連日大きく取り上げている。私自身はこの病気についてほとんど知識がなかったので論文を探していたところ、The Lancetがタイムリーにこの病気について詳しい総説を掲載したので紹介する。英国、香港、米国の大学に在籍する研究者が著者で、タイトルはズバリ「Middle East respiratory syndrome(MERS)」だ。論文に書かれている順序に従って紹介しよう。 1:前書き:MERSは中東で2012年最初に発症が見られたコロナウイルス感染症で、症状やウイルスの性状はsevere acute respiratory syndrome(SARS)に極めて類似している。主に飛沫により感染するが、現在感染しているウイルスでは全世界的爆発的感染は起こらないのではと考えられている。というのも、感染の始まったサウジアラビアには2013−2014年184国から何百万人もの巡礼者を受け入れたが、この巡礼者にMERSの報告はない。 2、患者の認定:中東滞在歴(現在では韓国、中国も含む)のある人が、咳、熱など呼吸器症状を訴える場合は、PCR,血清検査を行い確定診断する。 3、感染状況:第一例は2012年6月サウジアラビア・ジェッダで発見(ただ、9月まで報告なし)。ここから遡って調べられた結果、おそらく2012年4月、13人が感染したのが最初と考えられる。その後10人台の患者数で推移してきたが、2014年4−6月に数百人規模の患者が確認された。今年はこれまで50人程度の患者。 4、ウイルス:コロナウイルスで28-32Kbの大きさのRNAウイルス。ホスト細胞のディペプチジルペプチターゼ4を受容体としてホスト細胞に侵入(これはSARSも同じ)。転写、複製は全て小胞体膜状で行われ、作られたウィルスは小胞体輸送系を用いて細胞外へ運ばれる。ウイルス機能に直接関わらない補助タンパク質はSARSと大きく違っているが、他の点では極めてよく似ている。補助タンパク質の差がインターフェロンの感受性の差と関係していると考えられている(MERSの方が感受性が高い)。もともと変異や組み替えが高い頻度で起こり、この性質のためSARSではコウモリから始まり、様々な種をホストとして広がった。従って、現在爆発的広がりがないと言っても安心はできない。MERSもコウモリ由来と考えられているが、実際にコウモリから分離されたことはない。一方名前の示す通り中東ではラクダに広く感染しており、オマーンでは100%のヒトコブラクダに感染している。ヒトでは2012年に検出されたのが最初で、それ以前分離された血清にも存在しないが、サウジアラビアのラクダの血清には1992年から検出できる。現在のところ、動物からのMERS感染ルートはこれが全てと考えていい。 感染と症状:韓国の例にもあるように、ヒトからヒトへの感染は濃厚な飛沫感染によるもので、病院で感染することが最も多い。これは潜伏期に感染する率が低いためと考えられる。家族内感染率について調べた論文では4%の家族に患者から感染していることが示されている。一方、例えばサウジアラビアの透析施設で23人が感染し、60%が死亡している。透析もそうだが、糖尿病など基礎疾患のある場合、感染率が高く、症状が重く、死亡率が高い。実際75%の感染者は基礎疾患を持っているという統計がある。従って、基礎疾患を持つ人や高齢者は最初から自分はかかりやすいと思っておいたほうがいい。最初は風邪と同じ症状で始まり、1週間で肺炎に至り、呼吸不全で死亡する。腎臓にもウイルス受容体が発現しており、症例によっては一次的、二次的腎不全も併発する。また下痢などの症状のある場合もある。一般検査はウィルス性肺炎と同じで、リンパ球減少がみられ、典型的肺X線像を示す。LDHやクレアチニン上昇など肝臓や腎臓の検査所見も伴うことが多い。ウイルスは血中や尿中にも認められることはあるが、圧倒的に気管分泌物に多い。重要なのは気管からのウイルス分泌は発症後1ヶ月にもわたる点で、予防にとって重要。確定診断は、PCRと血清検査で行える。PCR検査について言えば、各医療機関は様々な部位からサンプルを採取してウイルスを検出することで、病気の進展を推し量れる可能性がある。 治療:MERS特異的治療はない。サルの感染実験で、インターフェロンαとリバビリンの組み合わせがウイルス量を減少させることが知られているが、他の方法も含めて実験段階。中でも期待できるのは、ヒト型モノクローナル抗体。 予防:外科用マスク着用が一番効果がある。また、防御メガネも有効。あと中東などで行われている、ラクダ繁殖時の予防措置の徹底などは我が国には参考にならないだろう。 今後の問題:現在のところMERSはウイルスが完全に人に適応していない。ただ、ウイルスの性格からこの可能性は残っているので、ウイルスの変化を注意深く調べることが重要。その間に、抗体など治療法の準備を行うことが大事だろう。 私の感想:2012年に初めて報告されたとはいえ、研究はかなり進んでいる。感染率はまだ低く、十分予防も可能なうちに、政策的に押さえ込むことが重要だろう。むやみに恐れることはないが、相手をよく知って用心を怠るなという段階ではないだろうか。
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6月7日:考えるほどブチ切れる(6月18日号Cell掲載論文)

2015年6月7日
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今日紹介するマサチューセッツ工科大学Picower学習・記憶研究所が6月18日号のCellに発表した論文も「え!本当!」と思わず叫びたくなる常識を覆す研究だ。現在神経が興奮したかどうかを調べるために、興奮によって誘導される分子の発現を見ることが行われている。普通の細胞を研究している人間から見ると、少し違和感がある方法だ。というのも、転写が神経興奮のような短い時間単位のイベントを反映できるとは少し考え辛い。このマーカーとしてよく使われるのがFosと呼ばれる蛋白だが、分単位で転写が誘導される。この早さは、転写に必要な複合体がFosプロモーターやエンハンサー上にあらかじめ集まっていることによることがわかっていた。しかし、この複合体のスウィッチを入れる機構についてはわかっていなかった。この「Activity-induced DNA breaks govern the expression of neuronal early-response genes (神経活動によって誘導されるDNA切断が初期遺伝子の発現をコントロールしている)」とタイトルのついた論文は、このスウィッチがDNAが神経興奮の結果切断されることによって入れられることを示す驚きの論文だ。幸い、このグループも最初からこれほど大胆な仮説を持っていた訳ではなさそうだ。この着想は、DNA切断を誘導する薬剤の神経細胞への影響を調べる地道な研究から生まれている。すなわち神経細胞をエポトシドと呼ばれるトポイソメラーゼの正常作用を阻害してDNA切断を誘導する抗がん剤と培養し、その影響を見ていた時、いわゆる初期誘導遺伝子の発現が急速に上昇することに気がついたところから始まっている。この結果からひょっとしたら神経興奮で同じことが起こるのではと着想し、培養した神経細胞をNMDAで刺激しDNA切断箇所に濃縮されるγH2AXの結合場所を調べると、驚くなかれFosなどの初期発現遺伝子の転写調節領域に濃縮しているのがわかった。次にトポイソメラーゼがこの切断部位と相関しているか調べるためクロマチン沈降法でトポイソメラーゼの結合部位を調べると、γH2AXの濃縮部位に接するFosなどの初期発現遺伝子プロモーター部位に濃縮され、確かにそこでDNAが切断されていることを突き止めた。次の疑問は、ではどうしてトポイソメラーゼが結合してDNAが切断と転写が始まるかだが、このグループはトポイソメラーゼの結合部位とCTCF分子の結合部位が一致していることに注目した。6月3日ゲノムが構造化され転写が調節されていることを紹介したが(http://aasj.jp/news/watch/3533)、このドメインの境でエンハンサーの影響を食い止める役割をしているのがCTCFだ。この結果から、神経細胞では初期発現遺伝子の発現調節複合体は前もって集められて刺激を待っているが、CTCFによりエンハンサーの影響がブロックされていることで、転写が止まっている。そこに刺激が入るとトポイソメラーゼがリクルートされ、CTCF結合部位にカットを入れるため、抑制が取れて転写がすぐに始まるというシナリオだ。さらに、トポイソメラーゼの機能がなくとも、例えばクリスパーCAS9系を使ってFosプロモーターに切れ目を入れると転写が始まることも示している。こんな話を聞くと、考えれば考えるほでDNAが切れてしまうと心配するが、実際には転写後すぐに極めて正確な修復酵素が働いて治るようだ。このような転写システムが進化のどの辺りで開発されたのか興味が湧くが、脳がなぜかDNA修復異常に弱い組織であることもうまく説明できる面白い研究だと思った。また、CTCFはTAD境界にとどまらずTAD内にも存在するが、この機能の一端も理解できた気がする。驚きの仕事だった。
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6月6日:フッ素18ラベル抗体を使った生体イメージング(ACS Central Scienceオンライン版掲載論文)

2015年6月6日
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昨年10月18に紹介したThe New England Journal of Medicineに掲載された、ガン特異的に発現する表面分子を狙った遺伝子導入自己T細胞移植治療についての論文は、ガンの根治を可能にする免疫治療の幕開けだったと言える (http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/2309)。この治験はリンパ性白血病という、キラーリンパ球が届きやすい腫瘍を狙ったものだったが、当然の事ながら現在は膵臓癌などの固形ガンをこの方法で治療できないか試みが始まっている。ただこの治療で一番問題になるのが、ガン特異的表面抗原を探す事だ。前に紹介したリンパ性白血病の治療では、CD19と呼ばれるガンだけでなくB細胞にも発現している抗原を使っていたため、ガンはいうに及ばす、B細胞まで消失しまっていた。それだけキラー活性が強いという言い方ができるが、もし抗原が命に関わる細胞に発現していると大変だ。従って今後の研究方向は、できるだけガン特異的抗原を探す事、そしてヒトの体の中でこの抗体がガンにしか発現していない事を確認する必要がある。この目的には抗体をアイソトープでラベルして、PETでガンをイメージングする方法の開発が必要だが、どうしても半減期の長いアイソトープしかタンパクのラベルには用いられなかった。現在PETに最もよく使われているのはフッ素18で、これはエネルギーが強く半減期が2時間と短い。ただ様々な分子をフッ素18で安定にラベルする方法の開発にはどうしても時間がかかっていた。今日紹介するホワイトヘッド研究所からの論文はフッ素18を抗体のラベルに使う方法の技術開発でASC Central Scienceオンライン版に掲載された。タイトルは「Use of 18F-2-fluorodeoxyglucose to label antibody fragments for immuneo-positoron emission tomography of pancreastic cancer (18F-2-fluorodeoxyglucoseを抗体フラグメントラベルに用いて膵臓癌に対する反応をPETで検出する)」だ。この論文では技術の有効性を示すため膵臓癌へのリンパ球浸潤モデルを使っているが、もともとこのグループはこの技術をリンパ臓器のイメージングに使おうとしていたようで、同じ技術について5月12日号のアメリカアカデミー紀要に掲載している(PNAS 112, 6146,2015)。いずれにせよこの2報の論文の最大のハイライトは、ガンのPETイメージングに最も使われているフッ素18FDGをバクテリアの持つソルターゼという酵素を使って抗体のC末端についているソーティングシグナルペプチドに結合させる方法を開発したことだ。こうしてラベルした抗体を使って、免疫反応を生体内でイメージングできることを、膵臓癌の周辺に起こるリンパ球浸潤モデルで示している。話はこれだけだが、将来性は大きい。何よりも放射線薬として調達が最も容易なフッ素18ラベルしたFDGを原料として使える点、CARTに必要なガンの表面抗原探索だけでなく、ガンに対する免疫反応もモニターできる点が極めて重要だ。例えば今はやりのPD1やPDL1のモニターも可能だろう。抗体をラベルしたいとは誰でも考えているはずだ。他にもいろんなラベルの可能性があるだろうが、抗体の細胞内でのソーティングに注目したのはなかなかやるなと思って著者を見ると、なんと私がケルン留学時代に同じ研究所にいたHidde Ploeghではないか。一貫して抗体やMHCの細胞内移送を研究していた成果がここに現れたように思う。Hiddeはイケメンでうちのカミさんの憧れの君だった。以前会った時はこのイケメンの面影は消えてカミさんもがっかりしていたが、スマートさは変わらなかった。この技術が他の技術より優れていたらおそらく楽隠居は間違いないだろうと思う。Congratulation.
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6月5日:消化管幹細胞の新しい培養法(Natureオンライン版掲載論文)

2015年6月5日
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ES細胞やiPS細胞は、原理的には自己由来の全ての分化細胞を作成できるという点で画期的だが、逆に樹立と分化誘導にかかる時間とコストが問題だ。一方すでに分化した組織幹細胞の自己再生を試験管内で維持する事ができれば、分化細胞を得るための時間とコストは大幅に減少する。この事から、今も組織幹細胞の新しい培養法の開発が続いている。組織幹細胞の中でも、皮膚や消化管幹細胞の培養は伝統があり、中でも現慶応大学消化器内科の佐藤さんが確立した消化管幹細胞のオルガノイド培養法のこの分野への貢献は計り知れない。ただ、このオルガノイド培養にも問題がある。すなわち、幹細胞と分化した細胞が助け合って組織を形成するため、例えば幹細胞だけを対象にした遺伝子解析などが難しい。今日紹介するジャクソン研究所とシンガポール大学からの論文はヒト胎児(20−24週)消化管のどの部分からも幹細胞だけを取り出し、未分化なまま培養できる方法の開発研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Cloning and variation of ground state intestinal stem cells(腸管幹細胞クローン培養法により明らかになった多様性)」だ。この培養法では皮膚上皮培養で成功したフィーダー細胞が、様々な増殖因子と組み合わせて使われている。驚くのは、こうして開発された単一の培養法が、腸管のあらゆる部分から採取した幹細胞増殖に有効で何ヶ月も安定に幹細胞だけを培養できる点だ。更に、発生の起源が同じ気管上皮の幹細胞も培養することができる。そしてWnt増殖因子を除いて(除く必要もないようだが)、培養液に浮かべたフィルター上で細胞を培養することで、それぞれの幹細胞に応じた分化組織を簡単に得ることができている。すなわち、幹細胞時期には同じように見えても、分化の方向性が記憶されているということだ。このことを反映して、同じに見える幹細胞が発現している遺伝子を調べて比べると、気管、小腸、大腸各部の幹細胞はそれぞれ異なっていることが明らかになった。発生学から見ると、ヒトでこの差を遺伝子レベルで定義できるとは本当に興奮する。この研究の価値は臨床応用といったレベルの話では全くない。おそらく、組織幹細胞とは何かについてこの方法を用いた多くの研究が行われるだろう。楽しみだ。もちろん臨床にも役にたつ。ここでは腸内の厄介者クロストリジウムの毒素の作用メカニズムがこの方法で研究できることを示している。しかしこれはポテンシャルをチラッと覗かせる愛嬌で、直腸がん発生初期に問題になるミスマッチ修復酵素のエピジェネティックな変化の誘導についての研究など、多くの分野の臨床研究者の頭の中ではいろんな可能性が渦巻いているはずだ。大きなポテンシャルを持つ培養方法だ。本当に素晴らしい技術の価値は、基礎臨床といった狭い了見で想像できるものではない。この技術は基礎・臨床を問わず消化管を研究する全ての分野の研究者のスタンダードになるだろう。この様な研究を見ていると、幹細胞研究がiPSに集中せず多様性を維持できるよう、山中さんを始め日本の幹細胞研究指導者達が気を配る余裕を示す時期が来たのではないかと思う。
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6月4日:脳にもリンパ管(Natureオンライン版掲載論文)

2015年6月4日
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常識は不思議だ。誰も疑わないから常識なのだが、なぜ疑わないのかよくわからないことが多い。とはいえ、覆って見るとその影響の大きさに驚くことも多い。このため、常識を考える時一番面白いのは、なぜそれが疑われるようになったかだ。例えばインプリンティングやX染色体不活性化のある哺乳動物で体細胞クローンはできないという常識は、常識を最初から気にしないウィルムートさんや、若山さんが覆した。今日紹介するバージニア大学からの論文も、もし正しければ常識が覆った例として長く語り継がれるだろう。タイトルは「Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels (中枢神経系に存在するリンパ管の構造的機能的特徴)」だ。タイトルにある中枢神経系に存在するリンパ管だが、少なくとも私が卒業した時から存在しないと考えられてきた。脳脊髄液の循環経路が最終的にリンパ管とつながっているのではないかと考えられてはいたが、わざわざ脳内にリンパ管が別に必要だとは誰も思わなかった。ただ昨年10月19日このホームページで紹介したように(http://aasj.jp/news/watch/608)、グリア細胞がglymphatic systemを作って、眠っている時に脳に溜まった老廃物を除去しているという論文がサイエンスに出て、脳にある新しい循環系に注目が集まった。ただそれでもリンパ管があるとは誰も考えなかったようだ。このグループは、T細胞が中枢神経内を循環する経路を探索しているうちに硬膜静脈洞に接して、さらに濃縮して循環している脈管系の存在があることに気がついた。リンパ球が濃縮していることから、ひょっとしたらリンパ管ではないかと思いつき、細胞マーカー、電顕、機能的循環アッセイなど様々な方法を駆使して、この管が血管やglymphaticsとは異なるシステムで、あらゆる面でリンパ管と言っていいことを確認した。残念ながらこの研究でも、このリンパ管へT細胞が入ってくる入り口はよくわからない。ただ、脳内の反応が深部の頸部リンパ節とつながっていることは明確に示している。いずれにせよ、多発性硬化症など脳内での免疫反応をこの構造の存在を前提とする新しい目で見ることが必要になるだろう。しかし、リンパ管研究のあらゆるマーカーが揃っていても全く疑われず現在に至るとは、本当に常識は恐ろしい。一方、水生動物のリンパ管は静脈と多くの吻合を示すし、両生類の研究者はリンパ液を循環させる心臓があることを知っている。要するに融通無碍の脈管系だ。そう考えると、これを知りながら常識にとらわれていた自分が一番常識的な人間だと反省する。
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6月3日:構造化という情報(5月21日号Cell掲載論文)

2015年6月3日
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TAD

今日は一般の方には理解が難しい話題を取り上げるが、私の誕生日ということで許していただく。発生やガンを考えるためには大事な話題だが、限られた字数で説明しきれるとは思えない。情報としてのゲノムを考えるためには重要な問題なので、JT生命誌研究館ホームページに連載している「進化研究を覗く」というサイトにもう少し詳しく書こうと思っている。

 さてゲノム情報というとA,T,C,Gの4塩基の配列でコードされる情報と考えがちだが、これ以外にもゲノムが構造化されることで、配列とは違う情報が発生していることについて今日は考えてみたい。論文紹介に進む前に、まずtopology associating domain (TAD)について普通は使わない図を使って紹介しておこう。私たちのゲノムは図に示すTADと呼ばれる構造化された区域が約2000集まってできている。図1に示すようにTADとTADの間には特殊な境界領域が存在し(赤の線で示している)、隣接するゲノム領域が影響し合わないよう3次元的に隔離していると考えられている。一つのTADの中には1〜複数の遺伝子とともに、その遺伝子発現を調節するエンハンサーが存在している。特殊な境界と構造化のおかげで原則として一つのTAD内エンハンサーは隣接するTADに影響できないように隔離されており、このおかげで重要な遺伝子が間違った時期や場所で発現できないようになっていると考えられている。といってもこの概念はゲノム各領域のトポロジカルな関係を調べるchromosome conformation capture法と呼ばれる方法から得られる結果から想定されている可能性に過ぎない。またTAD区域は固定的でなく、発生とともに変化するし、またTADを超える相互作用も存在することから、TAD構造とその境界領域が具体的に働いていることを機能的に示す研究が待たれていた。今日紹介するベルリン・マックスプランク分子遺伝学研究所からの論文はTAD間の境界が変異により壊れると隣接するTADに存在するエンハンサーの影響が及んできて発生異常が起こることを示した力作で5月21日号のCellに掲載された。タイトルは「Disruptions of topological chromatin domains cause pathogenic rewiring of gene-enhancer interactions (クロマチンのトポロジーが壊れると遺伝子とエンハンサーの相互作用が異常に再構成される)」だ。この研究ではまず、複雑な手指の発生異常(多指、融合指、短指など)を起こすゲノム変異が集中するEPH4遺伝子が存在する領域に焦点を絞り、遺伝子変異の性質とそれに起因する手指奇形の種類を相関させるところから始めている。(余談になるが、多指症は18世紀ベルリン科学アカデミーの会長になったMaupertuisが最も興味を持って研究した家族性発生異常で、何か因縁めいたものを感じる。) EPH4遺伝子の存在するTAD(TAD2とする)は3Mbの大きな領域で、Wnt6,Ihh両遺伝子を含む1MbほどのTAD(TAD1)とPax3遺伝子を含む0.5Mb程度のTAD(TAD3)に挟まれている。ヒトの異常を調べると短指症はTAD2,TAD3境界の欠失、指の融合はTAD1,TAD2境界での逆位、多指症がTAD1,TAD2境界の欠失で起こるという法則性を突き止めた。次に同じ欠失を遺伝子操作でマウスに再現するとヒトの異常とほぼ同じ奇形が発生しメカニズムを追求するためのモデルとして使えることが分かった(このモデル動物を作るだけでも大変だ)。このモデルを使って、手指発生時の遺伝子発現や、各領域内のトポロジカルな関係や相互作用を調べると、予想どおり境界が破壊されるとTAD2に存在するエンハンサーの影響が隣接するTAD内の遺伝子発現に影響する結果、普通は手指発生では発現の見られないWnt6, Ihh,Pax6が異所的に発現することを突き止めた。そして、Wnt6の異所的発現では指の融合、Ihhの異所的発現では多指が、そしてPax6が発現すると短指が発生することを見事に明らかにした。さらに研究では、TAD2内のどのエンハンサーがそれぞれの遺伝子発現に影響するか、それぞれ違う変異でどのようにTADが再構成されるかなど詳しく示されているが、詳しく説明する必要はないだろう。この研究で示された全ての結果は、TADが3次元的に複雑に絡み合ったゲノム内で、エンハンサーの働く区域を限定し、遺伝子発現の安定性を確保するための必須の構造であることを明確に示した。ゲノムは構造化され、構造自体が重要な塩基配列とは別の情報として発生や進化に関わっていることがはっきり理解できるエキサイティングな結果で、これまでのもやもやが吹っ飛んで、頭がすっきり整理できた気になる。正直言ってこのような理解の仕方ができるようになってきたのはほんの数年前からだ。TADを単位として考える重要性を本当に認識したのは、2013年に引退後、同時に同じ細胞で進む前腕及び手指を形成するための2種類のプログラムに、なぜ同じHoxDクラスターが使えるのかを示したスイスのDubouleたちの見事な研究に驚いた時で、たかだか2年前だ。ゲノム解析が進み、ゲノムワイドな手法が開発されることで、急速にこの分野の理解が進んでいることを実感している。構造も塩基配列と同じようにゲノムが表現する情報の一つなら、発生学は言うに及ばず、iPSやその応用でさえこのレベルの理解なしに可能なはずはない。このホームページは多くの若手の学徒にも読んでもらっているようだが、もしTADなど考えたことがないという人たちがいるなら、今からでも遅くない。是非ゲノムが構造化されていることを頭に入れて、発生や進化を考えていって欲しいと思う。

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6月2日:新しいプロビオティックス:バクテリアを食べてガンを見つける(5月28日号Science Translational Medicine掲載論文)

2015年6月2日
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プロビオティックスというと、私たちの体を助けてくれる微生物のことだが、一般的には発酵食品やヨーグルトなどに含まれる微生物を思い浮かべる。例えば「プロビオで腸内細菌のバランスを整え健康な生活を送ろう」といった具合だ。事実トクホや機能性食品の認可のハードルを低くして健康産業を育てるのがアベノミクスの一つの柱のようだ。税金が必要な健康保険や介護保険の費用を、健康寿命を伸ばして減らすというアイデアは当然だが、今の政府のやり方を見ていると、トクホや機能性食品が乱立し、健康食品の売り上げだけが伸びただけで、肝心の健康寿命が全く伸びないという事態になる心配がある。トクホや機能性食品が本当に健康寿命を伸ばし、医療費削減につながるのか検証することが先決だと思う。ぼやきはこのぐらいにして、プロビオティックスに戻ると、世の中にはずっと先を考えて微生物を使おうとしている人たちがいる。今日紹介するマサチューセッツ工科大学からの論文はなんと微生物をガン転移の早期発見に使う研究で5月28日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Programmable probiotics for detection of cancer in urine (ガン患者さんの尿でガンの早期発見のためのプログラムを組み込んだプロビオティックス)」だ。普通体内の臓器は無菌的だと思っているが、様々なルートで細菌は各臓器に広がる力を持っている。この研究は経口投与後肝臓に侵入する細菌を用いて、肝臓内に存在するガン細胞を検出するのが目的だ。まず経口摂取して肝臓に広がっても無毒な細菌を確立し、それが確かに肝臓に到達し増殖することを確認している。次に、この細菌にガンが分泌する器質を切断する酵素を組み込む。この酵素により、ガンが分泌する特定の分子を切断し、その断片の中で尿中に出てきた成分を標識としてガンの存在を検出するというアイデアだ。この酵素を一定量発現したときだけ生きるように細工を加えた細菌を作成し、これを肝臓にガン転移が起こったマウスに摂取させ、まず組織学的に調べている。詳しいメカニズムはまだわからないと思うが、この細菌の増殖は転移巣でより亢進しており、うってつけの運び屋になっている。そして最後に、基質を発現するガン転移を起こしたマウスと、正常マウスの尿に分泌される標識分子を調べ、期待通り転移巣がある場合にのみ尿に特定のマーカーが検出されることを示している。もちろんこの論文はまだ微生物を転移ガンの早期発見に使えるというアイデアが実現可能であることを示したモデル実験でしかない。また、早期発見だけで言えば他の方法が結局優れているという結果に終わることは十分あり得る。しかし、健康診断の2−3日前にこの微生物の入ったヨーグルトを食べておいて、検診の時に尿だけでガンが診断できるなら、十分他の方法と競合できるだろう。何よりもこの先に、転移巣選択的な治療につながる可能性もある。このようにプロビオティックスが本当に健康な人を増やすことを示すためには、優れたアイデアと、長期的視野、そして科学的検証が必要だ。繰り返すが、我が国がトクホが栄えて、病気の高齢者も増える国になることだけは避けなければならない。
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6月1日:なぜ卵巣癌治療が難しいのか?(Natureオンライン版掲載論文)

2015年6月1日
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研修医の頃、胸水で見つかった進行性の卵巣癌の患者さんを受け持ったことがある。心嚢炎まで併発して、次々と起こる症状への対応に精一杯で何もできないうちに亡くなった。もちろん当時はガン発生のプロセスも、遺伝子のことも何もわからなかった時代だ。このガンに対しては早期発見と外科手術以外に医学はなすすべもなかった。しかし今日紹介するオーストラリア・クイーンズランド大学を中心にしたコンソーシアムからの論文は、あれから40年たってガンのことが理解できても、進行性の卵巣癌の治療が簡単ではないことを示す研究で、Natureオンライン版に紹介された。タイトルは「Whole-genome characterization of chemoresistant ovarian cancer(化学療法抵抗性の卵巣癌の全ゲノム解析)」だ。この研究の対象は卵巣癌のうち悪性漿液性癌と呼ばれるタイプの癌で、化学療法に抵抗性を示した癌114サンプルの全ゲノムを解析し、正常組織と比べた研究だ。これまで、翻訳される部分を調べたエクソームに関する研究は論文があるが、全ゲノムを徹底的に解析したのはこの論文が最初のようだ。いつものことだがゲノム研究の論文のデータは膨大で、詳細を紹介するのは難しい。従って幾つかの点について要約する。まず、他の癌と比べた時、この癌では細胞の増殖を促進する遺伝子を特定しにくいことが知られていたが、全ゲノムレベルの解析をしてもこの状況はからわらず、ほとんどのサンプルで検出可能なのはp53の変異だけと言える。ただ、全ゲノムを調べることで遺伝子発現調節領域の異常が特定できるおかげで、NF1やRB1といった癌抑制遺伝子の発現異常は2割ぐらいの患者さんに見られ、この癌では様々な癌抑制機構が無力化されていることもわかる。重要なことは、他の癌と比べると遺伝子変異の量は圧倒的に多く、この変異の種類を調べると、BRCAを中心にした相同組み替えに関わる遺伝子異常が原因で起こってくるタイプの変異であることがわかる。すなわち、BRCAをはじめ様々な相同組み替え分子異常が最初に起こり、その結果多くの変異が癌でランダムに起こっていくことが発がんの最初の引き金になっている可能性が高い。実際、ほとんどの癌ではp53と共に、BRCA遺伝子か他の相同組み替え機構に関わる遺伝子に変異が認められる。次に、ゲノム解析結果から癌の予後をどの程度予測できるか調べ、サイクリンE遺伝子が増幅しているケースでは化学療法がほとんど効かないこと、逆にBRCA変異がある場合は化学療法への反応性が高いことがわかる。ゲノムの不安定性を増して発がんの原因になるBRCA遺伝子の変異が、予後にとっては良いサインであることは重要だ。修復機構は癌の生存にも必要なため、化学療法の効果が大きいのだろう。一般抗がん剤だけでなく、最近BRCA変異があるとPARPと呼ばれるDNA修復酵素依存性が高く、この分子を阻害剤する薬剤が使われるようになった。このように、BRCAは発がんの誘引だが、癌の弱点として治療選択肢を増やしてくれることがこの研究でも確認された。ただ転移したガンを調べると、BRCA変異が元に戻って、薬剤に反応しなくなる細胞が発生する。他にも薬剤を細胞外へ汲み出す分子の発現亢進など、がん細胞が生きるための様々な機構を短い期間に獲得する、融通無碍の癌がこのタイプの癌であることがよくわかった。まとめると、相同性組み替えを使う修復機構の異常から始まり、ゲノム全体で変異を急速に積み重ねることがこの癌の特徴で、最初から極めて多様で、ガンとしての共通の特徴が見つけにくい。この結果、適合する標的薬を見つけることは現在のところ難しい。ただ救いもある。変異が多いということは、ガン特異的抗原を発見するチャンスが多いということだ。また、BRCA変異を持つガンでは、腫瘍部位へのリンパ球浸潤が見られる。このガンの最初の引き金がゲノム修復異常なら、免疫療法は効くチャンスが高い。実際、このタイプのガンに抗PD1抗体が著効を示したケースも報告されている。ガンのエクソームとチェックポイント阻害を組み合わせた治療法をぜひ開発して欲しいと願う。
カテゴリ:論文ウォッチ

5月31日:選ぶべき経路を思い描く脳回路(Natureオンライン版掲載論文)

2015年5月31日
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過去の経験に固執せず様々な分野の研究論文を読もうと心がけているが、自然と苦手分野が出来てくる。その中の一つが、連続的な神経活動記録と行動の相関を調べる研究だ。もともと現役の頃ほとんど読むことがなかったのと、多くの神経細胞を同時に記録してその活動を行動に投影するという膨大な処理がされており、示された実際のデータも理解しずらい図が多いため、どうしても想像を交えながらメッセージを切り取るしかない。今日紹介するのはこの典型で、昨年ノーベル賞を受賞したモザー夫妻の研究室からだが、間違った理解をしているかもしれないと最初から断ったほうがよさそうだ。筆頭著者はItoさんとあるので日系の人だろう。どうでもいいことだが、つい目がいく。タイトルは「A prefrontal-thalamo-hippocampal circuit for goal-directed spatial navigation (ゴールをめざす移動をナビゲートするための前頭前部—視床—海馬回路)」で、Natureオンライン版に掲載されている。年をとると、何か行動を起こした後、何のために起こしたのか忘れてしまって途方にくれることがある(私だけかもしれないが)。逆に言うと、行動とは何か目的や意図があるのが普通で、意図と現在の行動の相関が外れるとどうしても不安にかられる。言うまでもなくモザー夫妻は脳の中の位置や経路をマップする神経回路を研究してノーベル賞に輝いた。この研究では、迷路を走るラットが分かれ道で右か左か決める時、これから選ぶ経路が脳内にどのように表現されているのかを調べている。前向きにしか進めない経路の途中に分かれ道があり、例えば右に行けば褒美が得られ、その後またスタートラインに戻るような設計の迷路を作り繰り返させる。次の選択の経路が脳内に前もって表現されているなら、分かれ道に差し掛かる前から、次に選ぶ経路を想像して活性化する脳神経が存在するはずで、それを調べている。実際には、記憶を始め様々な情報が統合される海馬のここの神経細胞を50−100個同時、連続的に記録し、次の経路を反映する神経が海馬のCA1と呼ばれる場所にあることを突き止める。面白いのは、これらの神経が最も興奮するのは、どちらに行くかを決めなければならない分かれ道のすぐ手前だ。次にCA1に結合している視床の結合核細胞を同じように記録すると、やはり選んだ経路と反応が相関する細胞を記録できる。この時の興奮は割と早めから始まり、経路を選んだ後褒美をもらうところまで続く。視床は前頭前部と神経結合があるので、今度は300以上の神経細胞を同時記録すると、期待通り選んだ経路に相関する神経細胞が記録できる。この神経細胞は視床と同じで分かれ道のかなり手前から興奮し始め、選んだ後も興奮が続く。回路の支配関係を調べるため、視床結合核を取り除いたり、興奮を抑えると分かれ道手前で起こる海馬の興奮は抑えられ、海馬がCA1の反応を変化させていることがわかる。この実験では繰り返し同じ経路をグルグル回ることになるので、前のトライアルの記憶をこれらの神経が表現している可能性がある。これを否定するため、次のトライアルに入る前にスタートラインに戻ってきたところで時間をおいてすぐ前の記憶を消すと、それぞれの経路表象に関わる神経は分かれ道に近づくにつれ興奮が上昇することを確認し、この可能性を否定している。結論的には、前頭前部、視床、海馬と行くべき経路の予想図が受け渡され、海馬で他の地図情報と統合されるというシナリオのようだ。多くの神経の同時連続記録、光遺伝学による神経興奮操作などを駆使した研究が動物行動学を変化させていることを実感する研究だ。まだまだ理解しずらいところも多いが、生命とは何か、生命の情報とは何かを考えるためには脳研究から目が離せないことを実感している。今後も苦手を厭わず手にとって読む、これが重要だろう。
カテゴリ:論文ウォッチ
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