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10月24日:全エクソーム配列検査の実力(10月18日アメリカ医師会雑誌掲載論文)

2014年10月24日
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昨年12月13日、このホームページで、診断のつかない小児患者さんの全エクソーム解析(ゲノムの内、タンパク質に翻訳される全部分のDNA配列を決めること、全ゲノムの1.5%だけなので全ゲノム解析と比べてコストは安く済む)が診断確定にどの程度役立つかを調べたテキサス・ベーラー大学からの論文を紹介した。実際には普通の検査で診断がつかなかった患者さんのうち、実に25%について診断を確定する事が出来ると言う結果だった。今日紹介する論文はこの仕事の続きで、同じテキサス・ベーラー大学から10月18日号のアメリカ医師会雑誌に掲載された。タイトルは「Molecular findings among patients referred for clinical whole-exome sequencing(全エクソーム配列決定の依頼があった患者さんで見つかった分子異常)」だ。以前紹介した論文では、約200例の患者さんについての、いわばパイロット研究だった。それから約1年後に発表された今回の論文は規模をアメリカ全土に拡大し、通常の検査では診断がつかなかった患者さんが2012年6月から、2014年8月までの2年間にわたって集められ、なんと2000人の全エクソーム検査が行なわれている。当然とは言え、結果はパイロット研究と同じで、25%の患者さんの診断を確定できる事が確認された。こうして診断のついた504人の患者さんのうち450人は神経症状を示す患者さんで、小児の神経疾患の診断が特に難しい事が良くわかる。これだけ数が集まると、病気の原因となる遺伝子異常の特徴について詳しく検討する事が出来る。例えばダイソミーと呼ばれる、片方の親からだけ2本の染色体を受け継いでいる異常が5例も見つかる。最も驚いたのは、診断のついた遺伝子異常の30%は、2011年以降に報告された異常だった点だ。即ち、次世代シークエンサーのおかげで、これまで診断がつかなかった異常がかってなかったスピードで明らかにされている事を示している。おそらく、今は25%の診断率も、急速に上昇すると期待される。ただ残念ながらこうして診断できても、多くは現在の医学では治療が難しい。しかし診断がつかずにそのまま放置されるよりはおそらく気持ちの整理がつく意味で、診断する意味はあるのではないだろうか。他にも、主治医が診断に困っている症状以外にもエクソーム検査からわかる事は多い。例えば最近話題になった乳ガン遺伝子BRCA1の突然変異が14例に見つかっている。診断に結びつかなくとも役に立つ情報が2000人のうち95人で得られている。小児で遺伝病が疑われる場合のエクソーム検査の実力を実感した。驚くのは、2年間に2000人の患者さんについて、全エクソーム配列を決め、大量の情報処理を行ない、診断をつけている点だ。論文を読むと、おそらくベーラー大学だけで検査が行なわれているようだ。同じ事をもし我が国でもやろうとなったとき、対応できる施設や組織はあるのだろうか。何度も繰り返すが、ゲノムを日常診断に利用する取り組みでは、我が国は大きく遅れをとっている。今回2000人もの患者さんで、小児のエクソーム検査の有効性は示された。将来を担う小児だけでも、無料でエクソーム検査が出来る日が早く来る事を願っている。

カテゴリ:論文ウォッチ
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