最近の天文学の発展により私たちの住む銀河だけでも1兆個を超す惑星が存在することがわかってきた。最近では、地球に似た環境を持つ惑星の存在まで確認されている。とすると、我々が生命と呼べる存在はどこかにいるはずで、どんな形をしているのか、知性はあるのかなど考えてみることは面白い。もちろん、ウェルズの宇宙戦争から、スピルスバーグの未知との遭遇まで、エイリアンの姿を想像するのは自由だ。しかし、その姿に現実味があるのかは判断が難しい。地球上の生物でも、人間の想像力を超える姿が多く存在する。
今日紹介するオックスフォード大学動物学教室からの論文は、未知の生物を科学的に想像することが可能か議論した一種の意見論文で11月2日号International Journal of Astrobiologyに掲載された。タイトルは「Darwin’s ailien(ダーウィンのエイリアン)」だ。
科学的に演繹するとどんなエイリアンの姿になるのかと期待される方のために種を明かしてしまうと、結局ダーウィンの進化論以外にこの問題に答える考え方はなく、現存の生物を自然選択による複雑化という観点から見たとき、これに必要な最も重要な選択要因を満たした生物ならどんな姿もありうるという結論になっている。
論文では、地球上の生物は、1)遺伝、2)形質レベルの多様性の獲得、3)多様性の中からの成功者の選択可能性、を満たすことで多様性と複雑性を獲得したと定義した上で、エイリアンも複雑化するためには必ずこの条件を満たすべきと断じている。例えば、多様性が起こらない正確な複製機構が存在してしまえば、同じ生物が延々作られるだけで複雑化は起こらないというわけだ。
ではどうして進化は複雑化を伴うのか?これに対して、著者らは独立に異なる機能を進化させた部分を統合させてしまうような変革(例えば2種類の単細胞生物が一緒になってミトコンドリアや葉緑体が生まれたり、異なる細胞が集まる多細胞動物の誕生など)が生殖優位性をもたらす結果、複雑化するとしている。要するに、機能を多様化させることで、環境とのギャップを埋めることができるが、これを実現するためにはそれぞれの必要性を調整する大きなジャンプが必要だと結論している。
とすると、複雑化したエイリアンは必ず、1)部分が統合され協力し合う構造を持ち、2)異なる機能を調整する統合が行われており、3)これを可能にしているボトルネックと言えるポイントがある存在だろうと結論している。要するに、どんな姿を描いてもいいが、その姿を進化論に基づく複雑化の原理で説明する必要があるというのが結論だ。
結局エイリアンをネタにして、著者らの進化についての考えを述べた論文で、特に部分が機能を多様化させることによる衝突を調整することが複雑化の基礎にあることを強調している。ただ、この点については地球上の生物でも説明しきれていないため、説得力には欠ける気がする。しかし、エリアンの姿を想像してみるということを進化学の問いにすることで、新しい想像(創造)が生まれるかもしれないという期待はある。
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