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11月18日:リソゾームの細胞生物学(11月10日号Science掲載論文)

2017年11月18日
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細胞内にはミトコンドリアを始め、様々な小器官が存在するが、それぞれの機能を調べるには、目的の小器官を細胞内からできるだけ正常な形で取り出してくる必要がある。この精製方法の開発には、プロの知識とヒラメキが必要で、例えば京大時代に仲の良かった、亡くなった月田さんから細胞接着領域を精製する話を聞かされるたびに、構造にこだわってこそが細胞学であることを思い知らされた。

今日紹介するMITからの論文は細胞内分子を分解し再利用するときの中心器官リソゾームの精製の話で11月10日号のScienceに掲載された。タイトルは「Lysosomal metabolomics reveals V-ATPase and mTOR-dependent regulation of amino acid efflux from lysosomes(リソゾームの代謝産物の包括的解析によりV-ATPaseとmTOR依存性のリソゾームからのアミノ酸輸出の調節が明らかになった)」だ。

タイトルを見て今頃リソゾームかと思ったが、リソゾーム内では様々な分子の分解が進んでいるため、これまでの方法で精製しても時すでに遅しで、細胞内の現場で何が起こっているのか知ることが難しかったようだ。この研究のハイライトは、リソゾーム表面に発現している分子を標識にリソゾームを抗体で精製する方法の開発に尽きる。これにより細胞内での状態を反映したリソゾームが得られるようになっている。

こうして精製したリソゾーム内の57種類の代謝産物を調べると、これまでリソゾームに濃縮されていることが知られていたシステイン、グルクロン酸、核酸に加えて、幾つかのアミノ酸では細胞質での濃度と大きな差を示すリソゾームに特徴的なパターンが明らかになり、リソゾームがタンパク質を壊して再利用のために輸出するプロセスの中心にいることが確認できる。

そこでこの輸出に絞って、まずリソゾーム内を酸性に維持して輸送に関わるATPaseの機能を阻害すると、リソゾーム特異的にシステインの流入低下と、必須アミノ酸の輸出が低下することが明らかになった。さらに、アミノ酸飢餓条件で培養する実験から、細胞質で合成できない必須アミノ酸が低下すると、リソゾームからの輸出が止まることを明らかにしている。そして、このアミノ酸飢餓によるリソゾームの変化が、アミノ酸代謝調節経路の主役mTORを介していることを明らかにし、mTORが直接リソゾームからの必須アミノ酸の輸出を調節して、細胞質のアミノ酸量をバランスさせていることを明らかにしている。

話はここまでで、今後mTORがリソゾームのアミノ酸輸送を調節しているメカニズムの詳細など明らかにする必要があるが、いずれにせよフレッシュなリソゾームが得られることが重要で、その意味でこの研究はリソゾーム研究を大きく前進させるように思う。構造を精製することが細胞生物学の入り口であることを教えてくれる論文がまた一つ付け加わった。
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