胆石はビリルビンとコレステロールが混ざり合って胆嚢のなかで結晶化することで起こる。胆嚢内に存在するだけでは問題ないのだが、胆汁の流れを止めると炎症を起こして痛みの発作をおこす。脂肪の摂取が増えて、コレステロールが析出しやすくなったために、引き金が引かれるのだろうと漠然と考えていたが、厳密にいうと、何が胆石の核になって結晶化の引き金を引くのかはよくわかっていなかった様だ。
今日紹介するドイツ のフリードリッヒ アレキサンダー大学からの論文は、胆石の結晶化の引き金になるのが白血球のDNAであることを示した研究でImmunityのオンライン版に掲載された。タイトルは「Neutrophil Extracellular Traps Initiate Gallstone Formation(好中球の細胞外分泌物が胆石形成を開始させる)」だ。
このグループは胆石形成の核になる物質を探す目的で、胆汁の中の小さな沈殿物を調べ、その中にDNAと好中球のエラスターゼが存在することを発見、また好中球の存在下に胆石を加えるとエラスターゼが吸着すること、そして好中球のDNAトラップがコレステロールとカルシウムの凝集を促進することを調べ、胆石形成の最初の過程に好中球が関わると結論した。
この発見がまさにこの研究のハイライトで、あとは好中球がどの様にコレステロールなどの胆石の成分を集めて胆石を形成するのかを順を追って調べている。詳細を省いて結論をまとめると次の様になる。
コレステロールが析出してできた結晶と好中球とが触れると、マクロピノサイトーシスと呼ばれる過程が誘導され、結晶が細胞内に取り込まれ、これにより活性酸素が誘導され、またリソゾームからカテプシンなどの酵素が細胞質に漏れて、クロマチンを破壊、粘着性のDNAが組織に発生し、これがコレステロールとカルシウムの凝集を誘導して胆石が形成されることを示している。そして、それぞれの過程を遺伝的、あるいは薬剤で阻害すると、この発生を抑制して、胆石を抑えることができる。
話はこれだけだが、マウスモデルでこの過程に関わるaruginin deaminaseを抑制すると、胆石形成を抑制できることも示しており、さらにすでにできている胆石の成長を遅らせることができることも示している。その意味で単純だが、根本治療が開発されることも期待できる面白い仕事だと思った。ただ、どうしてImmunityに掲載されるのか、それは謎だ。