今日Natureにも、Ewen Callaway とDavid Cyranoskiが、中国の新型コロナウイルスの現状についてうまくまとめてくれているので紹介する。この記事でも、科学者たちが大車輪でウイルスの本態を捕まえようと努力しているのが伝わってくる記事だが、5つのquestionに分けて解説している。
- どの様にウイルスは伝染するのか?
すでにヒトからヒトへの感染は確認されている。あとはどの程度流行するかだが、ロンドン王立大学の疫学者Fergusonは、今後の経緯を科学的に分析することが、今後の広がりや流行期間の推定に必要だと述べている。
2、ウイルスの致死性?
最初、高い頻度で肺炎が併発するのを観察して武漢のウイルスが極めて悪性ではないかと心配されたが、この心配は少し和らいだ。500人の患者さんのうち17人が亡くなったが、これはSARSの致死率11%よりは良さそうだ。ただ、結論するのは早計だ。
3、ウイルスの由来
SARSはジャコウネコに由来したと推定されいるが、武漢ウイルスもDNA配列から、動物からではと考えられている (これについては最も最初のオリジンは蛇だとする中国からの論文を紹介した:https://aasj.jp/news/lifescience-easily/12238)。蛇が最初にしても、配列から様々な動物を経て進化してきたのではと推察されている(http://virological.org/t/preliminary-phylogenetic-analysis-of-11-ncov2019-genomes-2020-01-19/329)。ただ蛇も含めてウイルスに感染している動物は特定されていない。
4、ウイルスのDNA配列からわかること
中国とタイの研究者が、19系統の武漢コロナウイルスの配列を決定している。たしかに2週間でここまで進むことは、迅速な体制がアジアでできていることを示している。これまで決定された配列は多様性が少なく、11月に発生してから突然変異はまだ蓄積していないことを示している。今後、ヒトからヒトへと感染したケースを調べることで、人間にとってさらに危険なウイルスへと進化するかわかると期待されており、ウイルスの配列決定をできるだけ多く集めることが重要。
5、抗ウイルス薬は開発できるか?
SARSも武漢の新型コロナウイルスも同じ受容体を使って細胞内に侵入することが突き止められており、うまくいくとこれを抑制する薬剤や抗体の開発が可能かもしれないと、中国国立技術研究センターで開発が試みられている。
以上よくまとまったタイムリーな記事だ。