11月18日 農家での成長を町内細菌叢から定義する(11月2日 Nature Medicine オンライン掲載論文)
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11月18日 農家での成長を町内細菌叢から定義する(11月2日 Nature Medicine オンライン掲載論文)

2020年11月18日
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新型コロナ対策のおかげで、我が国の清潔度は急速に高まっている様に思う。もちろん優先順位はCovid-19感染防御なので、清潔になることの副作用などを心配し始めると、不謹慎と咎められると思うが、子供の成長に興味を持って論文を読んでいると、やはり気になる。一つは、両親以外マスクをした人間の顔しか見ないで育つことの精神的影響で、もう一つは腸内細菌叢の成長が清潔な環境で遅れることだ。

今日紹介するドイツミュンヘン大学からの論文は乳児期の腸内細菌叢の成長に関する指標を工夫し、腸内細菌叢の成長度が喘息予防に重要な要因になることを示すとともに、農家での成長が細菌叢の成長を高めることを示した研究で11月2日、Nature Medicineにオンライン掲載された。タイトルは「Maturation of the gut microbiome during the first year of life contributes to the protective farm effect on childhood asthma(腸内細菌叢の生後一年での成長は農家で育つことが喘息を予防する効果に貢献している)」だ。

帝王切開で生まれた子供は腸内細菌叢の成長が遅く、その結果様々な炎症性疾患にかかるリスクが高まるが、これを母親の便移植で改善することができる(https://aasj.jp/news/watch/14064)。この結果は、乳児期の腸内細菌叢の成長の重要性を見事に示すが、同じことが農家で育つと喘息になるリスクが低下するという観察からも示唆され、農家での成長により変化する腸内細菌を特定する研究が進められている。

この研究ではオーストリア、スイス、ドイツ、フィンランドの子供(半分は農家で生まれ育った)930人の腸内細菌叢を生後2ヶ月と、12ヶ月で調べ、喘息の発症率との相関を調べている。すなわち、喘息と農家で育つこととの相関とともに、それに寄与する腸内細菌叢の変化を特定しようとするコホート研究だ。

最初は、特定の細菌が喘息リスクや農家育ちと関わるか調べたと思うが、強い相関を示す細菌は特定できなかった。代わりに、生後2ヶ月、12ヶ月での細菌叢の構成から5種類のクラスターを同定し、2ヶ月齢では1−3のクラスターに分けられ、12ヶ月になると3−5のクラスターへと変化することを示している。すなわち、クラスター(C)1、2は未熟クラスター、C3が中間、そしてC3.5が成熟型と分類している。

このことから、細菌叢は未熟型から成熟型へ成長することがわかるが、C3の中間型で止まるグループも出てくる。この中間型と喘息を調べると、2ヶ月でも12ヶ月でも喘息リスクが高まることから、2ヶ月で早く中間型になることも喘息リスクを高めるし、12ヶ月経って中間型で止まっていることも喘息リスクを高めることがわかった。すなわち、2ヶ月から12ヶ月までの成長速度が重要と思われ、モデリングから成長度EMAという指標を算出している。

あとは、最終的にどのクラスターへと変化したかという結果より、EMAが様々な喘息指標と逆相関していること、そして農家で育つということがEMAと正の相関を持つことを示している。農家の生活条件のいくつかと、EMAとの相関を調べると、家畜に晒されること、農家自家製の卵を食べることなどが強く相関すること、逆に12ヶ月になっても母親のミルクを飲んでいる子供は腸内細菌叢の成長が遅いことを示している。

あとはこのEMAの元となる主成分となる細菌種間のネットワークや、これら細菌が生産する単鎖脂肪酸の種類の分析などが行われているが、割愛する。要するに、乳児期に腸内細菌叢成長を高めることがアレルギー疾患の予防になるという話で、この成長とは何かという点について、わかりやすいイメージを与えてくれる論文だと思う。

農家が不潔とは言わないが、清潔を実現するため環境の多様性が失われてしまうと、とんでもないしっぺ返しを食う様な予感がする。

カテゴリ:論文ウォッチ