1月4日 脳は「意味」でまとめられている(2021年11月号 Nature Neuroscience 掲載論文)
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1月4日 脳は「意味」でまとめられている(2021年11月号 Nature Neuroscience 掲載論文)

2022年1月4日
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私たちは瞬間瞬間に膨大な量の情報インプットを感覚から得ているが、言葉があるおかげで、感覚から入ってくる事象をシンボル化して、整理された形で脳の中にしまっておくことが出来る。これは、感覚から直接得られる認識と、シンボル化し意味化した認識が、脳の中で連合できていることを示している。もう少しわかりやすく言うと、目で見たリンゴのイメージと、「リンゴ」という言葉の脳内表象が回路として結合していることを示している。

今日紹介するカリフォルニア大学バークレイ校からの論文は、脳内の視覚イメージと、視覚イメージに対応する言語表象が、脳の近接した領域で連合していることを示した研究で、11月号のNature Neuroscienceに掲載されている。タイトルは「Visual and linguistic semantic representations are aligned at the border of human visual cortex (視覚と言語的意味の表象は人間の視覚野の境界に並んでいる)」だ。

おそらくこれまでの研究で、あるイメージを見たときに興奮する脳内の領域と、それに対応する言語(=意味)により興奮する脳内の領域が近接して存在する可能性が示唆されていたのだと思う。この研究では両者が近接して存在することを明らかにするため、ボランティアにサイレント映画を見せたときに、そこに登場する様々なイメージによって興奮する領域の記録と、同じボランティアが朗読された話のなかに登場する事物を聞いたときに反応する領域の記録を比較し、同じ意味を共有するイメージと言葉に対応して興奮する領域間の関係を調べている。

結果は予想通りで、少なくとも視覚イメージとして提供できるイメージに関して言うと、言葉に反応する意味の領域は、視覚イメージ領域前方に隣接して存在していることを示している。すなわち、イメージとそれに対応する意味は、一定の形式でおそらく神経的結合を形成していることを示している。

もちろん、この局所に形成されたイメージと意味の回路は、脳の他の場所に形成されている記憶の回路とも結合する必要があり、実際には脳の多くの場所とネットワークを形成しているのだが、個々のイメージと、それを言語的にシンボル化した意味の領域が、セットになってすぐに反応し合えるようにまとめられているのには感動する。

おそらく最近、言葉とイメージのリンクがギクシャクしてきた原因は、両者の回路がさび付いてきたからかもしれない。

同じような意味の領域と感覚領域との連合セットは、視覚以外の感覚でも存在するようだが、最初から抽象的な概念には存在しない。今後、そのような場合(例えば表象といった言葉)の言葉がどのように表象され、文明の進歩とともにどう変遷するのかなど、面白い研究へと発展できる可能性がある。

他にも、音楽と意味についても、同じ手法で研究できないだろうか。興味は尽きない。

カテゴリ:論文ウォッチ