1月18日 黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性は、病院では無く、野生のハリネズミの中で発生した(1月5日 Nature オンライン掲載論文)
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1月18日 黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性は、病院では無く、野生のハリネズミの中で発生した(1月5日 Nature オンライン掲載論文)

2022年1月18日
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は常在菌だが、免疫が低下した方に感染してしまうと、抗生物質が効かないため治療が難しい感染症を引き起こす。抗生物質耐性であることから、抗生物質を投与された家畜で発生した例外的なケースを除いては、病院内で抗生物質が使われることで発生すると考えられていた。もちろん私もそう考えていた。

ところが、今日紹介するデンマーク国立血清研究所を中心とする多施設共同論文は、ハリネズミと人間のMRSAを比較することで、MRSAは抗生物質が誕生するずっと前からおそらくハリネズミの中で発生していたことを示した、まさに「(科学的)事実は小説より奇なり」を地で行く研究で、1月5日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Emergence of methicillin resistance predates the clinical use of antibiotics(メチシリン耐性は抗生物質が臨床で使用されるより前に誕生していた)」だ。

ヨーロッパのハリネズミは200年ほど前にニュージーランドから持ち込まれた外来種で、おそらく定期的な調査対象になっていたのだろう。デンマークとスウェーデンで行われたハリネズム調査は、MRSAが北欧のハリネズミに広く分布しているとする驚きの結果を示した。

MRSAを病院感染由来と思うと、この結果は人間から持ち込まれたMRSAがハリネズムに拡がったと言うことになるが、そこに逆転の発想が持ち込まれ、ひょっとしたらMRSAの発生はハリネズミが先ではないかと考えたのが今回の研究だ。

英国、デンマークを中心に、ヨーロッパの広い地域でハリネズミに耐性遺伝子の一つmecCが存在しているかを調べた結果、様々な国に広く分布しており、英国では7割、デンマークやチェコでは5割近くのハリネズミが耐性遺伝子を保持していることを発見する。

当然次の課題は、これら耐性遺伝子の進化経路をゲノムからたどって、この遺伝子が人間から来たのか、あるいはハリネズミ由来かを調べることになる。詳細を省いてまとめてしまうと、ハリネズミmecCは独立に進化した3種類の系統に分けられ、このうちCC1943系統の3ラインはなんと1800年代に発生していることが分かった。

CC130は最も広く分布しており、多くのラインへと分かれているが、この発生も元をたどると、20世紀初めで、ほとんどのラインは人類が抗生物質を手にする前に発生していることが分かった。また、それぞれの系統で、進化のほとんどはそれぞれの地域で、ハリネズミの内部で起こっていることが示されている。従って、英国と大陸間については、人間や家畜による持ち込み、あるいは鳥を媒介とした感染などが重なる必要はあるが、進化自体は地域のハリネズミ内で進んだことが確認される。

ではなぜハリネズミ内で薬剤耐性遺伝子が発生するのか?これについては、ハリネズミに広く見られる皮膚糸状菌にペニシリン、すなわちβラクタムを合成する能力があり、糸状菌培養上清がブドウ球菌の殺菌効果を有することを示し、ハリネズミ内で、抗生物質合成糸状菌がMRSAを発生させたことを示唆している。

結果は以上で、ウイルスだけでなく多くの感染症が人間と動物の関係に深く根ざしていることを示しており、繰り返すが「科学的事実は小説より奇なり」としか言い様がない。15日から、多発性硬化症の原因としてのEBウイルス、嗅覚受容体発現マクロファージと動脈硬化、甘みを感じる十二指腸のneuropod細胞、そして今日のハリネズミ内でのMRSA発生と、面白い研究を続けて紹介したが、今年も何が出てくるかわくわくする。

カテゴリ:論文ウォッチ