1月20日 火星の生命の可能性(1月18日 米国アカデミー紀要 オンライン掲載論文)
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1月20日 火星の生命の可能性(1月18日 米国アカデミー紀要 オンライン掲載論文)

2022年1月20日
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昨日、火星から一度飛び散った破片が宇宙を旅して、約1万年前に南極に飛来したアランヒルズ隕石に、水の作用によるserpentinizationの結果合成された有機物が残っていることを示した研究を紹介した。これは、アランヒルズが火星を離れた1300万年前には、火星には水が存在し、生物はいないにしても、有機物を合成できる環境にあったことを示唆している。

なんと、これを書いた同じ日、ペンシルバニア州立大学を中心とする火星の生物の可能性を検証した論文が米国アカデミー紀要に発表されているのを見つけたので、ちょうど良い機会と、専門外の鉱物学とはいえ簡単に紹介することにした。タイトルは「Depleted carbon isotope compositions observed at Gale crater, Mars(火星のゲールクレーターで発見された炭素同位元素の欠如)」だ。

有機物が見つかっても生物の存在を示す証拠でないとすると、では生物の存在可能性をどう調べたらいいのか?

少なくとも地球上では、この目的に13Cと12Cの比率が使われる。生物は、様々な酵素反応を起こしやすい12Cを好む性質があり、その結果生物が合成した有機物の炭素は12Cが増加する。これを用いて、生物による有機物と、それ以外の有機物を区別することが行われる。

この研究は、有名な火星に送られた探査ロボット、キュリオシティー(https://mars.nasa.gov/msl/home/) 2012年8月から2021年7月にかけて、ゲールクレーターを動き回り(といっても計画に沿ってと思うが)、30カ所で岩石の掘削を行い、その岩石を、evolved gas analysisと呼ばれる熱をかけて発生するガスをレーザー分光光度計で分析している。結果だが少なくとも4カ所から採取したサンプルで、重い炭素同位元素13が除去されており、同時に34S低下していた。

以上が結果で、後はこれが本当に生物が存在した痕跡かどうかを詳しく考察している。というのも、例えば地球の熱水噴出口のメタンが、生物由来かどうかを調べるのとは異なり、長い年月の最終結果を見ていることから、この結果をそのまま生命の痕跡と大騒ぎは出来ない。

しかし、発見された場所が全て水の作用を受けた場所であったり、硫黄同位元素の結果と一致していることから、他にも炭酸ガスの紫外線による還元、さらには宇宙塵の蓄積など、地球とは異なる環境による生命の関与しない反応の可能性も考慮した上で、生命の可能性を排除するまでには至らないと結論している。

極めて控えめな結論だが、火星に生物がいたより明確な痕跡を見つけるために、キュリオシティーにはまだまだ頑張ってもらう必要がある。しかし、この火星探査の用意周到さに本当に驚く。

カテゴリ:論文ウォッチ