1月24日 マグネシウムと免疫(1月19日  Cell オンライン掲載論文)
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1月24日 マグネシウムと免疫(1月19日  Cell オンライン掲載論文)

2022年1月24日
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カルシウムイオンは別にして、他の金属イオンが細胞外でタンパク質と相互作用して、生理学的機能を調節している可能性はあまり考えたことは無かった。しかし、今日紹介するバーゼル大学からの論文は、LFA-1と呼ばれる免疫に関わるインテグリンとしては最も有名な分子の構造変化がMgイオン依存性で、Mgイオンが無いと、キラーメモリー活性が低下し、様々な免疫治療が台無しになりかねない可能性を示唆する、臨床的に重要な研究で1月19日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「Magnesium sensing via LFA-1 regulates CD8 + T cell effector function(LAF-1を介するマグネシウム感受性がCD8T細胞のキラー活性を調節する)」だ。

LFA-1はインテグリンとして細胞遊走にも関わるが、ICAM-1を認識して細胞内のシグナルを活性化し、キラーT細胞活性を誘導することも知られている。構造的にはCD11aとCD18の2種類の分子から構成されており、抗原刺激による細胞内シグナルにより活性化され(inside outと呼んでいる)、extension form(EF)およびhead-open form(HF)へと変化し、HFを摂ると高い親和性でICAMと結合して、T細胞を活性化する(outside inと呼ぶ)極めて複雑な分子であることが分かっている。実際1990年ぐらいから詳細な研究が進んだ分子の一つだ。

この研究は、まず細胞外液のMgイオンが、CD8T細胞のキラー活性に大きく影響するという発見から始まっている。すなわち、細胞外の分子がMgイオンにより機能調節されていることになる。そこで、キラー細胞上の分子を様々な条件でフィルターをかけ、ついにLFA1がMgイオンにより調節される分子であること、およびMgイオンがinside-outで活性化されたLFA-1のextensionとhead-openに関わることを発見する(LFA-1の構造変化は様々なモノクローナル抗体でモニターできる)。

あとは、MgイオンによるLAF-1変化が、ICAMトの結合や、T細胞内のシグナルや活性にも関わることを多くの実験で示し、CD8T細胞のキラー活性がMgイオンにより調節を受けるメカニズムを明らかにしている。ただ、詳細は割愛する。

この研究の面白さは、メカニズム研究の上に、臨床にトランスレーションするための様々な実験を行っていることだ。それをまとめておく。

  1. マウスにMg欠乏食を与えると、リンパ節や筋肉のマグネシウム量が選択的に低下し、体内での抗原刺激に対するT細胞の活性化が低下する。また、同じマウスをガン抗原で免役しても、キラー活性が低下している。
  2. Mg欠乏食で腫瘍免疫が低下しても、腫瘍局所にMgを注射すると、ガンの増殖を抑えられる。
  3. CAR-T治療や、ガン抗原とCD3T細胞をブリッジするBilnatumomab治療は、Mg濃度に強く影響される。
  4. チェックポイント治療のコホート研究では、血中Mg濃度が高いグループははっきりと予後が良い。

以上が結果で、キラーを高める免疫治療を行う場合、まずMg欠乏でないかどうか調べることの重要性を示唆しており、すぐにトランスレーションする必要があると思う。それ以外にも、ガンの局所療法やCAR-Tの改変など、様々なヒントが得られる面白い研究だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ