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1月16日 介在神経前駆細胞移植によるてんかん治療の可能性(1月9日 Neuron オンライン掲載論文)

2023年1月16日
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興奮神経細胞が何らかの理由で過興奮するのがてんかんで、様々な治療法が開発され、薬剤治療も広く行われているが、今の医学では全く対応できない多くのてんかん患者さんが存在する。これは、結局多くの場合で私たちが興奮と抑制のバランスが壊れる原因を理解できていないためだが、このバランス異常を元に戻す一つの方法が、抑制性介在神経の数を細胞移植により増やす方法だ。事実、動物モデルでGABA作動性介在神経細胞を移植する実験が行われ、一定の効果があることが報告され始めている。

今日紹介するニューヨーク医科大学からの論文は、ヒトES細胞から介在神経細胞を誘導し、これを側頭葉転換モデルマウスに移植すると、ほとんど副作用なしに、しかも介在神経そのものの機能を介しててんかん発作を抑えてくれることを示した、これまでの研究の総まとめのような研究で、1月9日 Neuron にオンライン掲載された。タイトルは「Human cortical interneurons optimized for grafting specifically integrate, abort seizures, and display prolonged efficacy without over-inhibition(移植に最適化したヒト皮質介在神経は、発作を抑え、過剰抑制なしに長期効果を発揮する)」だ。

このグループはこれまで、ヒトES細胞やiPS細胞を、様々な化合物を用いて介在神経ぜんく細胞を高率にに誘導する方法を開発していた。この細胞を、最後にCDK4/6阻害剤で処理することで、増殖を止め、ピロカルピン注射による側頭葉てんかんモデル(pTLE)あるいは海馬にカイニン酸を投与するてんかんモデル(kTLE)に対する長期効果、さらには効果のメカニズムを探っている。

ヒトの介在神経を免疫不全マウスに移植して、9ヶ月間様子を見ているが、異常増殖は全く見られないということで、これは他の多能性幹細胞由来神経細胞移植の結果と同じだ。一方、ヒトとマウスの差があるにも関わらず、海馬に移植した介在神経は移植部位から海馬、さらには皮質にまで移動し、2種類のGABA作動性神経へと分化することを示している。

組織学的な結果を先にまとめておくと、移植された細胞は少なくとも9か月マウス脳内で、興奮神経とシナプス結合を形成する。てんかんモデルマウスの海馬では、抑制性シナプス形成の密度が低下するが、細胞移植により密度は高められる。すなわち、移植した介在神経は完全にホストの脳ネットワークに組み込まれている。

この組織学的変化に呼応して、介在神経前駆細胞を移植したマウスでは、9か月にわたって発作の発生を1/4以下に抑えることに成功している。この実験では、介在神経前駆細胞を移植しただけの結果で、特に移植細胞の活性を操作しているわけではない。それでも、発作を大きく抑えることが出来るのは、介在神経がホストの神経ネットワークに組み込まれ、自発的に神経興奮を抑制していることを示唆している。事実、半数の移植介在神経が自発的興奮を示し、全体の興奮性を抑えていることがわかる。

さらに、移植介在神経に、あらかじめ光に反応して興奮したり、逆に興奮が抑えられる分子を組み込んでおいて、介在神経興奮をさらに人為的に誘導すると、介在神経興奮誘導で発作を完全に抑制でき、反対に興奮が抑制されると発作回数が上昇することを明らかにしている。この結果も、てんかん発作の抑制が、神経回路を介して行われていることを示し、将来遺伝子操作した介在神経移植までてんかん治療の視野に入る可能性を示している。

さらに重要なのは、てんかん発作だけでなく、不安神経症や、認知障害も正常化することで、てんかんと同時に様々な行動異常を伴う様々な神経疾患を考えると、この点は重要だ。そして何より、一般的てんかん治療薬に見られる強い鎮静作用などの、副作用が見られないことが重要だと思う。

結果は以上で、まだコントロールできていないてんかんが数多く存在することを考えると、介在神経移植は魅力的だ。

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