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3月27日 RhoJ分子は抗ガン剤抵抗性を付与する(3月22日 Nature オンライン掲載論文)

2023年3月27日
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ガンが抗ガン剤に抵抗性を獲得する経路は様々だが、悪性化の一つの代名詞がEMT=上皮間葉転換、すなわちガンの上皮としての接着機構などが失われ、間質細胞の様な形態になることが挙げられている。このEMT自体は、TGFβの刺激などでTwistと呼ばれる間葉系細胞への転換全体をコオーディネートする転写因子で調節されているのだが、EMTが同時に抗ガン剤耐性を誘導するのかはよくわからない。

今日紹介するブリュッセル自由大学からの論文は、EMTにより発現が高まるRhoJが、ガン細胞の複製時のDNAストレスを回避して分裂を続けさせる効果があるため、様々な抗ガン剤に対する耐性が発生することを示した研究で、3月22日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「RHOJ controls EMT-associated resistance to chemotherapy(RHOJはEMTに伴う抗ガン剤に対する抵抗性を調節する)」だ。

RhoJについては、京大時代から教室の血管研究を推し進めてくれた植村さんが、独立してから血管新生でのRhoJの関わりを研究していたので、ある程度馴染みがあったので、タイトルを見て、同じ分子が抗ガン剤耐性にどう関わるのか興味を持った。

この研究では、皮膚ガンをPECAMの発現でPECAM陰性EMT型と陽性の上皮型に分け、EMT型のみ様々な抗ガン剤耐性を持っていることを確認した上で、この差を決める分子をRNA発現、蛋白質の発現の違いを指標に探索、これまでの研究でメラノーマの抗ガン剤耐性に関わることが知られていたRhoJの発現がEMT型のみで発現していることを発見する。

次にRhoJが抗ガン剤耐性を付与するかどうかを調べる目的で、上皮型ガンにRhoJを導入すると、EMTは起こらないが、抗ガン剤耐性が誘導できること、またEMT型ガンからRhoJをノックアウトすると、抗ガン剤耐性が失われることを発見した。

植村さんをはじめとする研究でRhoJは機能的血管新生に必須であることがわかっているので、この論文の結果から、さらにRhoJ阻害によりガンの薬剤抵抗性を抑えることになると、ガン治療の標的としての重要性が高まった様に思う。

この研究では最後にRhoJが抗ガン剤耐性を誘導するメカニズムについても検討し、長い話をまとめると以下の様になる。

RhoJは核のアクチン調節に関わる分子と結合し、アクチンの伸長を助け、この結果メカニズムはわかっていないが、抗ガン剤によって誘導されるDNA複製の中断などで生じる複製時のDNAストレスを和らげるとともに、使われていない複製開始点を活性化することで、DNA複製を止めずに進める作用を有している。これと平行して、DNA修復機構を高めることで、ガンの増殖の維持が可能になる。

おそらく他のガンのEMTが誘導されたときも同じメカニズムが働いているのかを調べることが最も重要だと思うが、ガンでRhoJの発現を調べることの重要性とともに、これを標的にして血管とガンに同時に働く治療薬が開発できることを期待したい。

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