1月25日 細胞表面の糖修飾RNAは接着因子として働く(1月22日 Cell オンライン掲載論文)
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1月25日 細胞表面の糖修飾RNAは接着因子として働く(1月22日 Cell オンライン掲載論文)

2024年1月25日
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細胞膜上で機能している蛋白質や脂質、さらに糖鎖修飾を受けた様々な分子の機能を学ぶことは、医学や生物学を学ぶ学生の必須科目といえるが、さすがにRNAのような核酸が細胞膜分子の一つとして働いているとは考えたこともなかった。しかし、表面上の糖鎖を精製すると、その中にRNAと結合している糖鎖が存在すること、また実際糖鎖修飾を受けたRNAが細胞膜上に発現していることを示す論文が2-3年前から報告されるようになった。

今日紹介するイェール大学からの論文は、ほぼ確実となった細胞表面上の糖鎖修飾RNAの機能とその形成過程を調べた研究で、1月22日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Cell surface RNAs control neutrophil recruitment(細胞膜上のRNAは白血球の遊走をコントロールする)」だ。

既に報告があるとは言え、この研究では細胞膜上のRNAを検出する独自の方法を開発し、生きた細胞上でその存在を確かめている。その結果、細胞膜上でも、蛋白質に守られて簡単にRNA分解酵素の作用を受けずに膜上に存在し続けられることを明らかにしている。

次にその機能の探索に移るが、糖鎖修飾を受けていることから白血球では細胞の遊走に関わるのではと仮説を立て、新たに開発した細胞膜上のRNAを分解する方法を用いてRNA分子を除去した細胞をマウスに注射、炎症部位への浸潤を調べている。結果は期待通りで、炎症部位への白血球遊走が強く抑えられる。しかし、骨髄や脾臓への移動は傷害されない。

炎症部位への白血球の遊走は血管内皮との相互作用で決まる。そこで、血管内皮を培養した膜上の白血球が内皮のアピカル側からべーサル側への移動を見る実験系を用いて調べると、RNA分解酵素処理により移動が抑えられること、そしてこの移動は血管内皮のP-selectin分子との接着作用を介していることを明らかにしている。

元々P-selectin分子は糖修飾を受けた脂質や蛋白質と結合することが知られていたが、白血球では膜RNA上の糖鎖が重要な働きをしていることが明らかになった。

このような機能的糖鎖修飾RNAの存在は確認されたが、次にRNAが細胞表面上に発現するメカニズムを検討し、細胞内のRNA輸送分子SDITが欠損した細胞では細胞膜へのRNAの発現がなくなることを示し、膜発現のための明確な機構が存在することを示している。

最後に、膜発現しているRNAを調べ、遺伝子をコードしていないノンコーディングRNAが糖修飾を受けて細胞表面に発現することを明らかにしている。

以上が結果で、面白いことがあるという以上に、元々様々な修飾を受けるRNAの機能多様性を思い知らされる論文だった。特に、特定の配列のRNAではなく、一定の条件を持つRNAであれば使い回せるという事実は、生命誕生前にRNAワールドがあったことを実感させてくれる。

カテゴリ:論文ウォッチ